受験料返還義務等
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「2018年における医学部不正入試問題」の記事における「受験料返還義務等」の解説
2018年12月、特定適格消費者団体の認定NPO法人消費者機構日本は、消費者裁判手続特例法に基づき、東京地裁に東京医科大学に対する受験料返還義務確認訴訟を提起することになった(消費者団体訴訟)。2018年12月17日、消費者機構日本は受験料などの返還義務の確認を求めて東京地裁に提訴した。被害者に代わって被害回復を求めることができる消費者裁判手続き特例法に基づく訴訟で、2016年10月の施行後初めて提訴となった。 2020年3月6日、東京地裁は「ひそかに得点調整をしていたことは違法との評価を免れない」、「得点調整が告知されていれば出願しなかったと推認できる」とし、受験料の返還義務を認める判決を下した。受験にかかった旅費、宿泊費の返還請求は「個別の事情に立ち入った審理が必要になる」として却下した。訴訟では、入試不正が特例法の適用要件を満たしているかや、大学側が得点調整することを事前に受験生側に説明する義務があったかなどが主な争点であった。判決では、「受験生には共通性があり、対象者も相当数いるなどとして、特例法の適用要件を満たしている」と判断。「受験生は性別などで不利益に扱われることはないという期待を持っており、大学側は入試で性別などの属性を考慮することを告知する義務を負う」とし、東京医科大学が説明義務に違反したと指摘した。また、東京医科大学の得点調整が、平等原則を定めた憲法や公正な入試を定めた大学設置基準の「趣旨に反する」と非難した。 2020年3月23日、東京医科大学は「東京地裁判決を受け入れ、控訴しない」と発表し、判決が確定した。東京医科大学の当時の理事長は「判決を真摯に受け止める。再発防止を徹底し、適切な入試の実施に取り組む」とのコメントを発表した。 2020年7月10日、東京医科大学の受験料返還に対して手続き開始決定が下り、消費者機構日本は、二段階目の手続きに移行し、参加者募集を開始した。 2020年9月9日、消費者機構日本は参加者募集期間を9月20日から10月10日に延長すると発表した。対象となる元受験生は5000人以上いるが、大学から提出された受験生名簿のうち、住所が記録されていたのは二次試験に進んだ受験生約400人分のみで、一次試験で不合格だった受験生については氏名の記載はあったものの、個人情報保護の観点から住所データが破棄されていたために4600人と連絡が取れず周知ができないことが延長の理由となった。 2021年7月27日、東京医科大学と消費者機構日本は大学が機構に対し6800万円(元受験者559人分の計4750万円、機構の報酬約780万円等)を支払うとする内容で東京地裁で和解が成立した。2016年10月施行の消費者裁判手続特例法に基づく裁判で、手続きが終結した初めてのケースとなった。和解後の記者会見で、機構側の担当弁護士は、手続きの参加者が当初想定していた「約5200人」を大きく下回ったことに触れ、「いかに被害者を掘り起こしていくかが同種裁判の今後の課題だ」と話した。東京医科大学は「再発防止を徹底し、適切な入試に取り組む」とする理事長のコメントを発表した。 2021年9月17日、順天堂大学に対し消費者機構日本が、消費者裁判手続き特例法に基づき、受験料などの返還義務があることの確認を求めた訴訟に対して、東京地裁で判決があり、2017年、2018年に受験した女性や浪人生に不利な合否判定をしたことについて「差別的な取り扱いで公正な選抜とは認められない」とし、返還義務を認める判決を下した。
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