原因が化学物質の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 23:58 UTC 版)
大気汚染や、表流水の水質汚濁と異なる地下水汚染独自の特徴がある。地盤中の汚染問題であることから、土壌汚染と重複する点が多い。 公害を体感しにくいこと地下水汚染は、体感しにくい公害である。有害物質であるにもかかわらず、それが地下に浸透することにより、目視・においを体感しにくくなり、有害性を感じにくくなってしまう。有害物質を地下に浸透させるという行為は、体感できないがゆえ、公害を発生させているという認識が甘くなり、結果として公害の防止対策として低く扱われてしまう。各種法令等の公害防止施策が制定される以前は、屋外ヤードに野積みによる漏出や、行政指導による工場敷地内への廃水の地下浸透など、地盤に有害物質が染みこみやすい状況にあった。 長期にわたり滞留・蓄積する(拡散が非常に遅い)こと地下水に浸透した有害物質は、帯水層の地層・土壌への吸着などの現象により、また地下水自体の流速が極端に遅いことにより、滞留・蓄積性の高い汚染現象といわれる。 地盤の環境機能は公共財的性格が強いが、土地は所有者の私的財産であること地盤の持っている環境機能は、大気や陸水と同様、ほぼ公共財として機能している。ところが地盤そのものは土地として私有財産となっており、この環境機能も土地の構成要素として含まれている。地下水汚染の対策では、この憲法で保障された私有財産に様々な制限を加えることが考えられる。この点については、地盤沈下(私有財産としての地下水の無制限な過剰揚水が原因)公害の対策を発端として、昭和40年頃から「地下水の私水論'/公水論」が議論されている。しかし現在まで定まった考え方がなく、棚上げになっている。 汚染原因者負担の法則(汚染者負担原則)の厳格な適用が困難であること地盤中の汚染は蓄積性の高い汚染である(地下水の移動速度は非常に遅い)ため汚染発生時期を捉えにくいこと、物質の有害性の認識が後になって変わること、の2点により、汚染の発生時期や汚染原因者を厳密に特定することが困難である。 地下水汚染の発生は、その時代の社会的状況に強く依存する。まず第一に物質の化学的知見の不足から来る影響評価が未熟なこと、次に公害としての社会的認識不足、以上の2点である。 物質の化学的知見の不足取り扱っている物質が、後の化学的知見の発展により、有害ではない物質から、有害である物質と判明することがある。例えば、現在有害と考えられているテトラクロロエチレン(略称にPCEと表示されることが多い)はドライクリーニングの洗浄剤として広く使われていた。当時、洗浄力の高さ・非引火性などの特徴から「夢の溶剤」として、使用が奨励されていた。また有害ではないと考えられていたため、その廃液を地下浸透や大気拡散させていた。このような物質は、他にも「クロム鉱さい」があり、これは地盤強化剤として江東区(東京都)などの沖積低地の地域(軟弱地盤)に埋め立てられ、現在まで続く広域の六価クロム汚染を発生させている。 汚染を体感しにくいがゆえの公害としての社会的認識不足有害物質の使用者にとって、地盤への地下浸透は目の前から無くなってしまうため、公害としての認識が低くなってしまう。なお日本における水質汚濁防止法では無過失責任主義が規定されており、地下浸透した場合、故意・過失に関係なく、法的な責任を有する。 使用地域周辺においても、異常性を認識しにくいため、ごく近傍に有害物質があったとしても、公害としての認識が低くなってしまう。 体感しにくい対象を未然に防止するためには、認識を高めることが最も重要である。このためには基礎教育が重要であるにもかかわらず、理科教育の中で扱われることは少なく、また理科離れの社会的現象も、問題を顕在化させにくくしている。
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原因が化学物質の場合
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国土交通省の「今後の地下水利用のあり方に関する懇談会(佐藤邦明座長)」報告書には今後の地下水利用のあり方に関する提言として地下水資源マネジメントの推進が挙げられている。この中で、地下水汚染等の現状を把握し適切な管理を行うことが社会的問題の解決に繋がるとの指摘がある。
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