分解者の働き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 18:28 UTC 版)
陸上生態系においては、消費者群集に消費される生産者の生物量は少なく、ほとんどの光合成産物は土壌腐植連鎖系へと流れる。例えば、森林生態系における消費者の植物消費量は1割にも満たない。残りの9割を利用し、固定した有機物を無機化し、再び植物が再利用できる二酸化炭素と無機養分に変換するのが分解者の役割である。即ち、陸上生態系における物質の流れは、生産者による有機物生産と分解者による無機化のサイクルが卓越しているのが特徴である。このことは、陸上生物の世界では、我々の目に見えやすい生食連鎖における食う食われるの栄養段階の関係が、全体の流れの中ではさほど一般的ではないことをしめしているのかもしれない。 生態系における物質循環は、主として上記のような微生物による有機物の無機化が極めて重要である。土壌の呼吸、即ち有機物の無機化のうち、9割程度が微生物によってなされている。陸上生態系の炭素循環では、生食連鎖においても腐植連鎖においても動物の消費量は小さい。 分解者としての動物は、植物遺体をかみ砕いたり、糞として土壌の団粒構造を作るなど、物理的に土壌構造を改変したり、微生物を摂食することで微生物群集の種間関係に作用することで、微生物が行う植物遺体の分解活動に影響を与える。また、植物遺体の摂食による団粒構造の形成は、適度な孔隙を土壌に与え、生産者である植物の根の呼吸阻害、成長阻害を緩和したり、水分の透水性、保水性を維持する上で極めて重要である。 老廃物や遺体には、動物には分解困難な成分が多く含まれているため、その過程は複雑である。たとえば、ササラダニは落ち葉を齧り取って食べ、糞をする。しかし、彼らはセルロース分解能を持っていない。彼らの腸内では、落ち葉の中に生息する細菌や菌類の菌糸や胞子が消化されているらしい。あるいは、微生物を摂取することで、菌類の持つ酵素を利用しているのだとの説もある。いずれにせよ、セルロースなどの消化そのものは菌類に依存していると見られる。また、植物遺体は多糖類を多く含むため、エネルギー量はあるが、食物としては、窒素やリンなどの成分が足りない。この点で、菌類や細菌が侵入し、周囲からそれらの成分を吸収して自らの体を作ることで、小動物にとって、よりバランスの取れた食物となる。 小型動物は一方的に微生物に依存しているわけではない。菌類の側から見れば、ササラダニが葉を噛み壊し、細片にすることで菌糸の進入が容易になるという利点もある。また、ある程度消化され、粒状になった糞に菌が進入してこれを消化する。この様に、微生物と小型動物の共同作業で、植物遺体は分解されて行くわけである。その意味で、それらをまとめて分解者と見なすことができる。 植物遺体などは、このような働きがあることによって、あらためてその養分物質が生産者に利用されるようになる。
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