公明選挙区とは? わかりやすく解説

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公明選挙区

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/21 23:43 UTC 版)

公明選挙区(こうめいせんきょく)とは公明党の候補者が立候補する選挙区のこと。

概要

主に当選者が1人である小選挙区制[注 1]における衆議院議員総選挙で公明党候補が立候補する選挙区のことを指す。

1999年から自公連携という形で自公連立政権が誕生し、2000年以降の衆議院議員総選挙では289から300までの小選挙区のうち公明党の地盤が強い一部の選挙区で公明党が候補者を擁立する一方で自由民主党(自民党)が候補者を擁立せずに自民党支持層が公明候補を応援するという構図が一部の地域で発生するようになった。

1996年衆院選では公明党は候補者を擁立しなかったが[注 2]2000年衆院選では公明党候補は7人が比例ブロックと重複立候補した。基本的には公明党が候補者を擁立した選挙区で自民党が候補者を擁立しなかった一方で、一部の選挙区(千葉県第2区[1]東京都第17区[2]高知県第1区[3])では公明候補が立候補している選挙区で自民候補も立候補して競合することとなった[注 3]

2003年衆院選以降は公明党候補は重複立候補制度を利用せずに小選挙区のみの立候補となっている。またこの衆院選から公明候補が立候補している選挙区で自民候補が立候補して競合することはなくなり、公明選挙区は自民選挙区とで完全に棲み分けが行われるようになった[注 4]

2005年衆院選では、郵政国会で自民党衆議院議員ながら党議拘束に反して郵政民営化法案に反対した反郵政民営化自民系候補に、自民党執行部が郵政民営化賛成派候補(いわゆる「刺客」)を擁立する小泉劇場となったが、東京都第12区では自民党と公明党でコスタリカ方式が取られ、2003年衆院選には公明党の太田昭宏が選挙区候補となり自民党の八代英太が比例単独で上位に回り、次回衆院選では太田が比例上位に回って八代が選挙区に回る予定だった。しかし、八代が郵政法案に造反したことで自民党の公認候補となれなかったことで離党して無所属として選挙区での立候補を表明したことで、太田は選挙区で立候補することとなり、東京都第12区は自民系郵政造反組が立候補する選挙区の中で唯一公明選挙区となった[注 5][4]

2009年衆院選では、8つの小選挙区で公明候補が擁立されたが、政権交代への期待から民主旋風が起こったことで、小選挙区で立候補していた公明党候補は8人全員が落選する事態となった。

2012年衆院選では新たに北海道第10区[5]を加えた9つの小選挙区で公明候補が擁立されたが、公明党は自民党だけでなく、橋下徹大阪市長が創設者である大阪維新の会を母体とする日本維新の会が、小選挙区で立候補した公明候補を推薦するという形で競合を避けたことで、公明選挙区の公明候補は自民候補や維新候補と競合することなく選挙戦を戦うことができた。

2014年衆院選では大阪維新の会を母体とする維新の党が、大阪の地方政治における課題である大阪都構想の進め方に関して公明党と齟齬が生まれたことで、当初は公明選挙区での維新候補の擁立も辞さない構えを見せていたが、最終的に2012年衆院選と異なって推薦はしないものの維新候補は公明選挙区で擁立しないこととなり、公明候補は自民候補や維新候補と競合することなく選挙戦を戦うことができた。

大阪維新の会を母体とする日本維新の会が、2017年衆院選では神奈川県第6区[6]2021年衆院選では東京都第12区[7]と、維新候補を公明選挙区で擁立したことにより一部の選挙区で公明候補と維新候補が競合し、双方とも維新候補が比例復活当選を果たす。一方、維新発祥地で強い地盤を持つ大阪府や維新勢力が浸透している兵庫県では公明選挙区で維新候補を擁立しなかったことで、大阪府や兵庫県の公明選挙区では公明候補は自民候補や維新候補と競合することなく選挙戦を戦うことができた。更に2017年衆院選では、神奈川県第6区で立憲民主党の前職に惜敗し、これ以降神奈川県の小選挙区から撤退し[8][9]、2021年衆院選では新たに広島県第3区[10]を加えた9つの小選挙区で公明候補が擁立された。

しかし、2024年衆院選では日本維新の会は方針を転換して大阪府と兵庫県の公明選挙区でも候補を擁立して公明候補と維新候補が競合する選挙戦となった。兵庫県(第2区第8区[11]は全勝したが大阪府(第3区第5区第6区第16区[12]では全敗した。大阪府の小選挙区で全敗するのは2009年衆院選以来だった。また、公明党はいわゆる一票の格差是正を目的とした小選挙区の10増10減が行われ増設された都や県の小選挙区に新たに候補者を擁立する方針で、区割り変更により新設された東京都第29区に公明党の前職が国替えした[13]ため、元の区割りの一部である東京都第12区には2000年衆院選以来となる自民党候補が選任されることになった[14]。なお、同じく区割りが変更された埼玉県第14区から出馬し小選挙区では初挑戦だった党代表の石井啓一は同年9月に、15年間務めた山口那津男から代わったばかりだったが、国民民主党の前職に敗れ2009年衆院選の太田以来現職の党代表の落選となった[15]ほか新設の愛知県第16区でも国民民主党の新人に惜敗し愛知県初の小選挙区選出とはならなかった[16]。このほか、東京都第28区でも候補者擁立を目指していたが自民党の反対で断念し、都内の小選挙区での自民党の候補者への推薦も一時は見送る一幕があった[17][18][19][20][21]2023年5月25日、公明党の幹事長だった石井は自公両党の幹事長・選挙対策委員長の会談、通称「2幹2選」終了後、記者団に当時の自民党幹事長茂木敏充に「東京での信頼は地に落ちた」と面と向かって放ったことを明らかにした[22]。同年8月31日、当時の首相岸田文雄と当時の公明党代表山口との会談で東京で解消されていた選挙協力が復活した。日本維新の会への警戒感から関係改善に歩み寄った[23]。更に、2012年衆院選以来、守り続けた北海道第10区でも立憲民主党の前職に惜敗し議席を失った[24]

公明選挙区における公明党の勝敗

2000年以降の衆院選における
公明選挙区について
立候補 当選 落選 出典
42 2000年 18 7 11 [要出典]
43 2003年 10 9 1
44 2005年 9 8 1
45 2009年 8 0 8
46 2012年 9 0 [25]
47 2014年 [26]
48 2017年 9 8 1 [27]
49 2021年 9 0 [28]
50 2024年 11 4 7 [29]

脚注

注釈

  1. ^ 正確には小選挙区比例代表並立制。日本の衆議院では1994年に導入され、1996年から実施されている。
  2. ^ 1994年に公明党は1998年改選の参議院議員が残留する形で改選の近い衆議院議員と1995年改選の参議院議員が先行して非自民第一党である新進党に合流し、1996年衆院選では公明党の支持母体である創価学会は新進党候補を支援した。
  3. ^ 3選挙区とも公明候補が落選している。
  4. ^ ただし、公明選挙区において地方議員や国会議員の経験がある自民系無所属候補が立候補した例はある。
  5. ^ 結果は太田が当選し、八代は落選した。

出典

  1. ^ 千葉2区 - 第42回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2000年06月25日投票”. 選挙ドットコム. イチニ株式会社. 2024年10月30日閲覧。
  2. ^ 東京17区 - 第42回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2000年06月25日投票”. 選挙ドットコム. イチニ株式会社. 2024年10月30日閲覧。
  3. ^ 高知1区 - 第42回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2000年06月25日投票”. 選挙ドットコム. イチニ株式会社. 2024年10月30日閲覧。
  4. ^ 東京12区 - 第44回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2005年09月11日投票”. 選挙ドットコム. イチニ株式会社. 2024年10月30日閲覧。
  5. ^ 北海道10区 - 第46回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2012年12月16日投票”. 選挙ドットコム. イチニ株式会社. 2024年10月30日閲覧。
  6. ^ 神奈川6区 - 第48回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2017年10月22日投票”. 選挙ドットコム. イチニ株式会社. 2024年10月30日閲覧。
  7. ^ 東京12区 - 第49回衆議院議員選挙(衆議院議員総選挙)2021年10月31日投票”. 選挙ドットコム. イチニ株式会社. 2024年10月30日閲覧。
  8. ^ 武井宏之; 岩本修弥; 松沢奈々子; 林瞬; 末崎毅; 田井中雅人 (2021年2月2日). “公明、神奈川6区の擁立見送りへ 遠山氏が辞職し空白に”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). https://www.asahi.com/articles/ASP217J0JP21ULOB01P.html 2025年1月22日閲覧。 
  9. ^ 広池慶一 (2021年4月18日). “【闘う】衆院神奈川6区 25年ぶりに自民が候補擁立 首相に近い横浜市議 立民はカジノ批判”. 産経新聞 (産経新聞社). https://www.sankei.com/article/20210418-XDNKGVLDRVJAZPZCDRFX2SXRRY/ 2025年1月22日閲覧。 
  10. ^ 衆議院選挙2021 広島(呉・竹原など)開票速報・選挙結果 小選挙区”. NHK. 2024年11月1日閲覧。
  11. ^ 衆議院選挙2024 兵庫(神戸・姫路など)開票速報・選挙結果”. NHK. 2024年10月30日閲覧。
  12. ^ 衆議院選挙2024 大阪(堺・岸和田など)開票速報・選挙結果”. NHK. 2024年10月30日閲覧。
  13. ^ 後藤謙次 (2023年2月3日). "岸田首相が解散に触れ続ける裏で、波乱呼ぶ「新区割り」の候補者調整". ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社. 2025年1月22日閲覧
  14. ^ 小選挙区支部長に選任されました!”. 高木けい 公式サイト (2023年7月19日). 2025年1月22日閲覧。
  15. ^ 衆議院選挙2024 埼玉(川越・越谷など)開票速報・選挙結果”. NHK. 2024年10月30日閲覧。
  16. ^ 衆議院選挙2024 愛知(名古屋・豊橋など)開票速報・選挙結果”. NHK. 2024年10月30日閲覧。
  17. ^ 市川千晴; 曽田晋太郎 (2023年5月24日). “自民が公明に「衆院東京28区での候補擁立認めない」 公明は「受け入れ困難」と強気 その理由は”. 東京新聞 (中日新聞東京本社). https://www.tokyo-np.co.jp/article/251960 2024年10月30日閲覧。 
  18. ^ 藤原慎一; 野平悠一 (2023年5月23日). “自民、東京28区問題で公明に代替案「12区か15区」 候補者調整”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). https://www.asahi.com/articles/ASR5R6S7XR5RUTFK00R.html 2024年10月30日閲覧。 
  19. ^ 東京での選挙協力解消”. 公明党. ニュース (2023年5月28日). 2024年10月30日閲覧。
  20. ^ 野平悠一 (2023年5月25日). “公明「衆院28区擁立断念、東京の自民推薦せず」決定 自民に伝達へ”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). https://www.asahi.com/articles/ASR5T3TY7R5TUTFK002.html 2024年10月30日閲覧。 
  21. ^ 市川千晴; 佐藤裕介 (2023年6月28日). “自民と公明の亀裂は埋まったのか…その内実は 次期衆院選協力で「東京」は玉虫色の決着”. 東京新聞 (中日新聞東京本社). https://www.tokyo-np.co.jp/article/259283 2024年10月30日閲覧。 
  22. ^ 佐久間慶介; 佐々木森里; 山本雄太郎 (2023年5月30日). “「東京での信頼関係は地に落ちた」自民 公明 深まる相互不信”. NHK政治マガジン (NHK). https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/99595.html 2024年10月30日閲覧。 
  23. ^ “自民・公明、東京の選挙協力を再開 維新警戒で歩み寄り 次期衆院選”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2023年8月31日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA314DX0R30C23A8000000/ 2024年10月30日閲覧。 
  24. ^ 衆議院選挙2024 北海道(札幌・函館など)開票速報・選挙結果”. NHK. 2024年10月30日閲覧。
  25. ^ “公明31議席の大勝利”. 公明新聞 (公明党). (2012年12月18日). https://www.komei.or.jp/news/detail/20121218_9865 2025年1月1日閲覧。 
  26. ^ “公明35議席の大勝利”. 公明新聞 (公明党). (2014年12月16日). https://www.komei.or.jp/news/detail/20141216_15774 2025年1月1日閲覧。 
  27. ^ “公明29議席 政権に信任”. 公明新聞 (公明党). (2017年10月24日). https://www.komei.or.jp/news/detail/20171024_26093 2025年1月1日閲覧。 
  28. ^ “第49回衆院選 結果分析”. 公明党. (2021年11月3日). https://www.komei.or.jp/komeinews/p198699/ 2025年1月1日閲覧。 
  29. ^ “第50回衆院選 結果分析”. 公明党. (2024年10月30日). https://www.komei.or.jp/komeinews/p376796/ 2025年1月1日閲覧。 

参考文献




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