使用率の男女差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:31 UTC 版)
「自動体外式除細動器」の記事における「使用率の男女差」の解説
倒れた人が女性の場合、男性よりAEDが使われにくい、という調査結果を2019年に京都大学などの研究グループが発表した。この調査は、2008年から2015年において全国の学校の構内で心停止となった子ども232人について、救急隊が到着する前にAEDのパッドが装着されたかどうかを調べたものである。それによると、小学生と中学生では男女に有意な差はなかったが、高校生になると大きな男女差が出ていたという。高校生・高専生の場合、AEDのパッドが貼られた割合が男子生徒83.2%、女子生徒55.6%と30ポイント近い差があった。研究グループは、女子高校生の場合、近くにいた人たちが素肌を出すことに一定の抵抗があったのではないかと分析している。 同様の調査はフランスでも行われており、2011年から2014年にパリ周辺で心停止となったおよそ11,000人のうち、女性でAEDの使用や心臓マッサージといった救命措置がとられたのは60%で、男性より10ポイント低い結果であった。 背景の1つとして訴訟を恐れる心理が指摘されることがあるが、弁護士の小林義和は、救命の流れから逸脱しない限りは、費用や時間、勝訴見込みの観点から、訴訟が発生するケースは考えにくいと述べている。また、弁護士の天辰悠は、「着衣を脱がす行為は強制猥褻罪に、衣類をハサミで切断することは器物損壊罪にあたるが、除細動の迅速な実施のためにやむをえず行った行為は、該当者の死を避けるための緊急避難行為として処罰の対象とはならない」、「性的意図がなければ罪には問われない」という趣旨の主張をしている。なお、2019年5月時点でAEDの使用に伴う痴漢やセクハラの類に関する訴訟は存在しない。 なお、フィリップスのつなぐヘルスケア編集部がフェリップスメールマガジン読者を対象に行ったアンケートによると、医療従事者以外の一般の人が救助にあたる場合、「AEDを使うために異性に衣服を脱がされること」について、女性の合計86%が不快感、もしくは抵抗感を感じるという回答結果が得られた。またプライバシー配慮については「周りの人から見えないようにしてほしい」という要望も寄せられている。そのため、フィリップス・ジャパンの成川憲司は救護者で人垣を作るのがベストだと述べている。実際に一部の自治体や施設には、プライバシーに配慮するため衝立が用意されていることがある。 実際、スポーツ大会で女性が倒れた際、「倒れていたのが女性で、駆けつけたのが男性だった」ためにAEDが使われなかった事例が存在する。結果として女性には重い意識障害が残り、寝たきりの生活が続いているという。
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