代謝特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/27 07:48 UTC 版)
「シュードモナス・プチダ」の記事における「代謝特性」の解説
P. putidaは、環境中の基質の分解に関与する酸化還元酵素遺伝子を少なくとも80個有している。また、遺伝子の大部分は環境中の化学的状態を検出することに役立ち、このため毒素にすぐに応答することができる。また、TOLやOCTプラスミドなどの、汚染物質の分解能力を与える多くのプラスミドを有している。一方で、例えばプラスミドR68-45などは有益な機能を与えず、むしろ増殖率を減少させる。 P. putidaは、タンパク質に関する様々な調節機構(タンパク質やペプチドの分泌及び輸送、タンパク質の修飾、修復、折りたたみ、安定化、タンパク質やペプチドや糖タンパク質の分解など)により環境ストレスに対する耐性を有している。P. putidaが有するシグナル伝達の調節タンパク質は、シグナルの受信のみに依存せずにその経路の特異的なプロモーターやレギュレイターもコントロールし、非常に複雑な代謝経路を構築している。また、シグナルを受信すると、酸素や栄養素の利用可能性の情報を細胞に伝達する。他の重要な調節タンパク質として、Crcタンパク質は炭素代謝を調節するシグナル伝達経路に関わり、バイオフィルムの形成にも関与する。 P. putidaは他のシュードモナス属と同様に、環境中から鉄を獲得する鉄キレート剤のシデロホアを有している。また、シデロホアに鉄錯体が輸送されることを助ける外膜受容体タンパク質も有している。獲得された鉄は、酸素が電子受容体である代謝過程で利用される。酸素は電子受容体として優れているが、このときに過酸化物や活性酸素種などの細菌に対して有毒な副産物も生成される。これに応答して、P. putidaは副産物から細胞を保護するためにカタラーゼを産生している。 P. putidaは、脂肪酸の飽和度、シクロプロパン脂肪酸の合成量、及びこれらのシス-トランス異性化の程度を、環境に適応するように変更することができる。対数増殖期から定常期への移行の際に、基質の摂取を効率的にするために脂肪酸の飽和度と膜流動性が高くなる。P. putidaのこれらの特徴は、致死的な毒に対して生存できるようにし、毒で汚染された土壌で生育することを可能にする。また、P. putidaは、生物に対して有害な有機溶媒を無害な物質に変換する能力も持ち、バイオレメディエーションに利用することができる。 P. putidaはエネルギーを獲得する手段としてエントナー-ドウドロフ経路を利用している。エントナー-ドウドロフ経路では、グルコースやグルコン酸などのヘキソースを分解し、グルコース1分子につきATPを正味1分子獲得する(解糖系では、グルコース分子1分子につきATPを2分子獲得する)。P. putidaはエネルギー獲得のための多数の代替経路を利用することができるが、それらを主要に利用せず、エントナー-ドウドロフ経路に依存している。
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