一高時代の苦悩とは? わかりやすく解説

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一高時代の苦悩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 06:50 UTC 版)

草の花」の記事における「一高時代の苦悩」の解説

草の花』は福永旧制第一高等学校在学時の体験元にしており、唯一の私小説的な作品であるとされる研究史上では、福永のこの体験は「『草の花体験」と呼ばれている。福永自身ものちに「私は今では事実想像とを区別することが出来ない」「「僕」にしても藤木にしても藤木千枝子にしても、また登場する傍系人物にしても、そこに原型があることを否むわけにはいかない」と述べており、個々場面多く虚構としつつも、自身の作品としては例外的にモデル呼べ人物実在することを認めている。 一高で、福永1学年下として身近にいた矢内原伊作も、福永のこの解説事実認めており、「その原型の人たちがあまりにもよく描かれているために、そして僕自身その人ちのあまりにも近くにいたために、僕はこの小説客観的に読むことができない」と述べている。 福永1934年昭和9年4月一高文科丙類に入学し弓術部に入部一高では寮の部屋部活動ごとに割り振っていたため、弓術部があてがわれていた本郷向ヶ丘向陵中寮五番入室した。作中藤木忍のモデルとなった来嶋 就信(きじま なりのぶ)が、矢内原伊作森田宗一と共にこの中五番入ってきたのは、翌1935年昭和10年4月のことだった。 矢内によれば来嶋は、作中通りの「小柄おとなしい、どこか淋しげなところのある、秀才であることを外には少しもあらわさない秀才少年であったという。福永一つ下の後輩である来嶋と生活を共にする中で、次第に彼への愛を育んでいった。矢内原は「マント姿の二人つれだって本郷通り仲良く歩いている」姿を時折見かけてもいる。寮生の間でも、福永が来嶋を愛していることは、広く知れ渡る事実となっていた。 そんな福永と来嶋の間に「悲劇」が起こったのは、来嶋や矢内原が1年の秋を迎えた頃のことで、「福永一方的な愛は作品汐見それよりもいっそう激情的で、したがってその愛が拒まれ苦悩はいっそう深く、またその一方的愛の受容要求され藤木困惑苦悩作品描かれているよりもはるかに深かった」という。おとなしく無口な来嶋にとって、福永ひたむきな愛は恐怖であり、日記に「私には何物にも勝つて自分自身が分らない。唯幾分でも知れてゐるのは、それがくだらない価値のないものであることだ。(中略)私には人を愛す資格はない。人に愛される資格もない。」と書き残していた。こうして福永も来嶋も、共に苦しみ抜くこととなり、矢内原をはじめとする弓術部の部員たちは、はらはらして成り行き見守るほかになかった。 1936年昭和11年3月末に、弓術部は例年合宿で、静岡県田方郡戸田村にある一高合宿所滞在。ここで福永は来嶋とじっくり話したが、高尚な福永言い分通じず、合宿が終わると親しく口を利く機会訪れなかった。 1938年昭和13年1月8日に、来嶋は勉強のため滞在していた埼玉県南埼玉郡清久村伯父の家で、扁桃腺炎から敗血症併発し急死深夜矢内原から訃報受けた福永は、9日汽車清久村へと駆けつけ、来嶋の葬儀出席している。 また、来嶋の死後福永大森駅近くアパート移り住んだ来嶋の母と妹の家をよく訪ねるようになった川西政明はこの記録矢内原の「藤木忍にもその妹千枝子にも原型がある」という文言から、来嶋の妹である来嶋 静子(きじま しずこ)を、千枝子モデルであると推察している。また、福永の妻の貞子も、福永死後の座談会で「あの『草の花』の中に出てくるモデルの女性は友人の妹さんでした」と述べている。

※この「一高時代の苦悩」の解説は、「草の花」の解説の一部です。
「一高時代の苦悩」を含む「草の花」の記事については、「草の花」の概要を参照ください。

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