モノクロサスペンション
1.後輪のホイールトラベルの増大 ショックアブゾーバーを燃料タンクの下に設置したため、それまで120mmだった後輪のホイールトラベルが160mmに増大した。その後も1年毎に20mm増加し、最終的には300mmになった。最大340mm位までテストされた。ホイールトラベルが増大したので、懸架ばねの自由度が増加し、初期荷重が大きく、ばね常数の低い設定が可能になった。 2.ダンピング特性選択の自由度の増加 従来のオイルダンパーに加えて高圧窒素ガスを封入したアキュムレーターを設置したため、減衰特性選定の範囲が拡大し、結果的に柔らかいソフトなダンピング特性にすることができた。 3.フレームとスイングアームの剛性の増大 後輪を支持するスイングアームが、従来の平面的な形状から三角形を主体にした立体的な構造に変更されて、その剛性が格段に増大した。ショックアブゾーバーの前端が、フレームで最も剛性の高いヘッドパイプ部に固定され、後輪の上下ストロークの荷重を受ける構造になり、車体全体の走行中の剛性が非常に高いものになった。この剛性アップは悪路走行を目的とするモトクロッサーでは特に有効だったが、その後ロードレーサーにも採用されて走行特性の改善に効果があった。 4.ショックアブソーバー1本化による横ブレの防止 従来の左右2本のショックアブソーバーの場合、傾斜地走行やコーナリングのように左右のユニットに作用する荷重が異なる場合には、横ブレが起きる事があるが、モノクロスでは荷重が1本のショックアブソーバーに合成されるので横ブレが発生しなかった。 |
保管場所 | : | ヤマハ発動機株式会社コミュニケーションプラザ(〒438-8501静岡県磐田市新貝2500) |
製作(製造)年 | : | 1974 |
製作者(社) | : | ヤマハ発動機株式会社 |
資料の種類 | : | 量産品 |
現状 | : | 公開 |
型式 |
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型式 / 重量 |
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構造・方式・手段・方法 | : | ・従来のオートバイのリヤサスペンションはタイヤの両側に各1本、計2本のショックアブゾーバーが取り付けられていたものを、車体の中心のタンク下に1本を設置するという全く異質の構造とした。 ・ショックアブゾーバーは懸架ばね、オイルダンパー、アキュムレーターの3部分で構成されている。 ・アキュムレーターの中はゴム膜によりダンパーオイル室とガス室に分離し、ガス室には不活性ガスとして高圧(20気圧)の窒素ガスを封入。 |
機能・作用 | : | ・ダンパーオイルによる粘性緩衝と、エアクッション効果を併用。 ・リヤスイングアームは捩り剛性の高い三角形の立体構造として後車軸の上下運動を前後の変位に変換し、スイングアーム軸からのレバー比を従来型よりかなり大きくして、後輪のホイールトラベルを増大させた。 |
技術要旨 | : | ・車体全体の走行中の剛性が格段に上がり、かつ後輪のホイールトラベルの増加によりオフロード走破性が飛躍的に向上した。 ・高性能ストリート車にも採用されコーナリング及び高速直進性が大幅に向上した。 |
エピソード・話題性 | : | 1973年全日本モトクロス開幕戦に初めてモノクロサスペンションを搭載した工場レーサーが出場し、125cc、250cc両クラス共に1,2、3位の圧勝であった。特にモトクロスレースの見せ場"ジャンピングスポット”では、その飛距離があまりにも大きいため、空飛ぶサスペンションとも言われた |
モノクロサスペンションと同じ種類の言葉
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