ホイッタカーの説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 20:46 UTC 版)
ホイッタカーは、1969年の論文で、新しい枠組みについて提唱した。 ホイッタカーは上記のような流れを概括し、界の分類が混乱し、見直しが必要な状況であることを認めた。その上で、彼は栄養摂取の方法が生物の進化の方向を把握する上で重要であると述べた。栄養摂取は生物の生存にとって最も基本的な特徴であり、それ以外の形質はそれに合わせて変化するであろうからである。 ホイッタカーによると、動物と植物の特徴は、前者が摂食消化、後者が光合成による栄養摂取を行う。ホイタッカーは、この二つに加えて、菌類に見られる表面での吸収を第三の方向であると認めた。それらの進化は以下のような方向性を持つ。 光合成を行う植物は運動性を持たず、光合成を行う組織とそれを支え、水などを供給する組織の分化を促す。 摂食消化を行う動物は、移動して餌を探す生活を行い、それに伴って運動器官、感覚器官が発達する。 表面での栄養吸収を行う菌類は、餌となる基質の表面で固着してその表面に広がり、体表面を最大限にするため、細長い菌糸を発達させる。 この三つは生物進化における重要な方向であり、それぞれが、生産者、消費者、分解者と呼ばれる。これが植物界、動物界、それに菌界である。 また、ホイッタカーはコープランドの体系にも触れ、そこで菌類の方向性が無視されていることなどを批判した。その上で、彼自身の五界説を示している。おおよそは以下のようなものである。 モネラ界 Kingdom Monera 原核生物の細菌類及び藍藻類(当時はまだ古細菌は出ていない) 原生生物界 Kingdom Protista 真核の単細胞生物、あるいは単細胞の集団と見なせるような多細胞生物も含む。ミドリムシ・黄金色藻類、サカゲカビ・ネコブカビ類、胞子虫、動物性鞭毛虫、根足虫、繊毛虫など。 植物界 Kingdom Plantae 真核の多細胞生物で、細胞壁があり、光合成をする。組織は分化する。生活環は往々にして単相と複相が交代する世代交代がある。紅藻類、褐藻類、緑色植物。 菌界 Kingdom Fungi 真核の多細胞生物で、細胞壁はあって動かないが光合成は行わない。表面で吸収する形で栄養摂取する。菌体は下等な群では単相、高等なものでは二核相が主である。粘菌類、鞭毛菌、接合菌、子嚢菌、担子菌。 動物界 Kingdom Animalia 真核の多細胞生物で、細胞壁、光合成機能を欠く。栄養摂取は体内の空間での消化吸収による。組織の分化の程度は他の界よりはるかに高度で、感覚、運動、伝達の構造が発達する。単相の状態は生殖細胞以外ではほとんど見られない。中生動物、海綿動物、後生動物。
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