プティパの功績
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 03:53 UTC 版)
「マリウス・プティパ」の記事における「プティパの功績」の解説
ロシアで振付家として活躍するようになったプティパは、ロマンティック・バレエの異国情緒や幻想性を引き継ぎつつも、より様式美・形式美を重んじた作品を創作した。プティパが確立したバレエは、その形式主義的性格から「クラシック(古典主義)・バレエ」と呼ばれる。具体的には、以下のような構成上の特徴が見られる。 第一に、コール・ド・バレエの装飾的な使用である。プティパ作品では、女性ダンサーによる群舞の場面が盛り込まれており、『眠れる森の美女』や『ドン・キホーテ』、『ラ・バヤデール』などがよく知られている。これらの場面では、ダンサーたちが、抽象化された森林、あるいは単なる装飾模様などに擬せられ、複雑なフォーメーションの群舞を披露する。 第二に、グラン・パ・ド・ドゥ形式の確立である。プティパ作品のクライマックスには、グラン・パ・ド・ドゥと呼ばれる主役の男女二人の踊りが挿入される。グラン・パ・ド・ドゥは三部構成となっており、①男女が緩やかな音楽で踊るアダージョ、②男性・女性それぞれのヴァリアシオン、③男女が共に跳躍や回転などの華やかな技を披露するコーダ、という形式が定められている。 第三に、ディヴェルティスマンの効果的な配置である。ディヴェルティスマンとは、物語の展開とは直接関係しない、挿入的な舞踊シーンを指す。数人で踊られるものから大規模な群舞まで、その形式は様々である。ディヴェルティスマンが果たす機能も多様で、例えば、グラン・パ・ド・ドゥの前に置かれて観客の期待を高めつつ場面を盛り上げたり、民族舞踊のテクニックを取り入れたダンスで観客を楽しませたり、といった役割がある。著名な例として、『白鳥の湖』の民族舞踊や、『眠れる森の美女』における童話の登場人物たちの踊り、『くるみ割り人形』のお菓子の国の踊りなどが挙げられる。 @media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .mod-gallery{width:100%!important}}.mw-parser-output .mod-gallery{display:table}.mw-parser-output .mod-gallery-default{background:transparent;margin-top:.3em}.mw-parser-output .mod-gallery-center{margin-left:auto;margin-right:auto}.mw-parser-output .mod-gallery-left{float:left;margin-right:1em}.mw-parser-output .mod-gallery-right{float:right}.mw-parser-output .mod-gallery-none{float:none}.mw-parser-output .mod-gallery-collapsible{width:100%}.mw-parser-output .mod-gallery .title,.mw-parser-output .mod-gallery .main,.mw-parser-output .mod-gallery .footer{display:table-row}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div{display:table-cell;text-align:center;font-weight:bold}.mw-parser-output .mod-gallery .main>div{display:table-cell}.mw-parser-output .mod-gallery .gallery{line-height:1.35em}.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div{display:table-cell;text-align:right;font-size:80%;line-height:1em}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div *,.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div *{overflow:visible}.mw-parser-output .mod-gallery .gallerybox img{background:none!important}.mw-parser-output .mod-gallery .bordered-images .thumb img{outline:solid #eaecf0 1px;border:none}.mw-parser-output .mod-gallery .whitebg .thumb{background:#fff!important} 女性ダンサーによるコール・ド・バレエ(『ラ・バヤデール』より) グラン・パ・ド・ドゥ(『眠れる森の美女』より) 様々な踊りを披露するディヴェルティスマン(『くるみ割り人形』より) このような形式を備えたプティパ作品においては、高度な舞踊技術を披露する場面と、マイム(身振り)で物語を進行させる場面とが分離され、前者に重点が置かれるようになった。これは、前時代のロマンティック・バレエが、舞踊と物語を一体化させ、マイムを舞踊的に表現することを目指していたのと対照的である。 また、プティパのもう一つの功績として、ロマンティック・バレエの改訂上演を行い、後世へと伝えたことが挙げられる。『ジゼル』や『コッペリア』などのロマンティック・バレエは、フランスで初演された後、西ヨーロッパでは徐々に上演されなくなっていったが、プティパはこれらの作品を改訂して帝室劇場のレパートリーに加えた。今日これらの作品が上演されているのは、プティパが帝室劇場に残した作品が、20世紀に世界中へ広まったためである。 舞踊評論家の守山実花は、プティパの功績を「フランスで19世紀前半から中期に開花したロマンティック・バレエの精神世界を引き継ぎながら、世紀後半のロシアで、それを表現するための絶対的な様式美に支えられた堅固なシステムを完成させた」ことだと総括している。
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