ブラックホールエントロピー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 09:32 UTC 版)
「ホログラフィック原理」の記事における「ブラックホールエントロピー」の解説
詳細は「ブラックホールの熱力学」を参照 熱い気体のように比較的高いエントロピーを持つ物体は、微視的にはランダムな振る舞いをする。古典場の既知の配置エントロピーはゼロである:電場および磁場、または重力波についてランダムさはない。ブラックホールはアインシュタイン方程式の厳密解であるので、いかなるエントロピーも持たないと考えられていた。 しかしヤコブ・ベッケンシュタインは、この考えは熱力学第二法則の破れを導くことを指摘した。もし熱い気体をブラックホールに投げ入れたら、事象の地平面を通過した時点で気体のエントロピーは消失してしまうのか。ブラックホールが気体を吸収して定常状態に落ち着いたら、その気体のランダムな性質はもう見られなくなってしまうのか。第二法則を回復できる一つの可能性は、ブラックホールが実際にはランダムな物体であり、そのエントロピーが吸収された気体の持っていたエントロピー以上に増加する場合だ。 ベッケンシュタインは、ブラックホールは最大エントロピー物体であり同じ体積のどんな物体よりも大きなエントロピーを持つと論ずる。半径Rの球内において、相対論的気体のエントロピーはエネルギーの増加とともに増加する。その唯一の限界は重力的である。つまり、エネルギーが過剰にある場合はその気体はブラックホールへと崩壊する。ベッケンシュタインはこれを用いて空間のある領域におけるエントロピーの上限を定めた。この上限値はその領域の面積に比例する。彼はブラックホールのエントロピーは事象の地平面の面積に直接比例すると結論付けた。 それより早くにスティーヴン・ホーキングはブラックホールの集団の事象の地平面の総計は常に時間とともに増加することを示した。その地平面は光的な測地線によって定義される境界である。すなわち、それはちょうどぎりぎり脱出することのできないこれらの光線である。もし周辺の測地線がそれぞれに向かって動き始めるとそれらは最終的には衝突する。その衝突地点ではそれらの延長はブラックホールの内部となる。そのため測地線は常にお互い離れるように動いており、その境界、つまりその地平面の面積を生成する測地線の数は常に増加する。ホーキングの結果は熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)とのアナロジーでブラックホール熱力学の第二法則と呼ばれる。しかし当初は彼はこのアナロジーをあまり真面目にはとらえていなかった。 ホーキングはもし地平面の面積が実際のエントロピーであるならブラックホールは放射しなければならないことを知っていた。ある熱系に熱が加わったとき、そのエントロピーの変化は質量=エネルギーを温度で割った値の増加分である: d S = d M T . {\displaystyle {\rm {d}}S={\frac {{\rm {d}}M}{T}}.} もしブラックホールのエントロピーが有限なら、それらの温度もまた有限のはずである。特に、それらは光子の熱的気体と平衡状態に達するはずである。これはブラックホールは光子を吸収するであろうだけでなく、それらはまた詳細釣り合いを保つために光子を適当な量だけ放射するであろう。 場の方程式の時間依存解は放射を行わない。なぜなら時間独立背景はエネルギーを保存するためである。この原理に基づいて、ホーキングはブラックホールは放射しないことを示すことに着手した。しかし意外なことに、慎重な解析によって有限の温度である気体と平衡状態に達するちょうど適切な方法でブラックホールは放射することを示す結果が得られた。ホーキングの計算では比例定数は1/4に固定されていた。すなわち、ブラックホールのエントロピーはプランク単位でその地平面の面積の四分の一である。 そのエントロピーは巨視的な記述を変えないままある系の微視的な配置を調整することで微視的状態(英語版)の数の対数に比例する。ブラックホールのエントロピーは深遠な謎である — それはブラックホールの状態の数の対数はその内部の体積ではなくその地平の面積に比例することを言う。 後に、ラファエル・ブーソ(英語版)はヌル・シート (null sheet) に基づいてその境界の共変バージョン(英語版)を提案した。
※この「ブラックホールエントロピー」の解説は、「ホログラフィック原理」の解説の一部です。
「ブラックホールエントロピー」を含む「ホログラフィック原理」の記事については、「ホログラフィック原理」の概要を参照ください。
- ブラックホールエントロピーのページへのリンク