詳細釣り合い
詳細釣り合い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/06 14:11 UTC 版)
「アインシュタイン係数」の記事における「詳細釣り合い」の解説
アインシュタイン係数は各原子と関連する時間あたりの決まった確率であり、原子の含まれる気体の状態にはよらない。したがって例えば熱力学的平衡における係数の間で導出することのできる関係は全て普遍的に有効である。 熱力学的平衡では、全ての過程による損失と利得により釣り合いがとられ、励起された原子数の正味の変化がゼロになる単純なバランスがとられる。束縛間遷移に関しては、詳細釣り合いも起こる。これは、遷移の確率が他の励起原子の有無により影響を受けないためである。詳細釣り合い(平衡状態でのみ有効)には、上記の3つの過程による準位1の原子数の時間変化が0であることが必要である。 0 = A 21 n 2 + B 21 n 2 ρ ( ν ) − B 12 n 1 ρ ( ν ) . {\displaystyle 0=A_{21}n_{2}+B_{21}n_{2}\rho (\nu )-B_{12}n_{1}\rho (\nu ).} 詳細釣り合いに加え、温度Tにおいて、マクスウェル=ボルツマン分布でいわれる原子の平衡エネルギー分布と、プランクの黒体放射の法則でいわれる光子の平衡分布の知識を用いて、アインシュタイン係数間の普遍的な関係を導出することができる。 ボルツマン分布より、励起された原子種の数iが得られる。 n i n = g i e − E i / k T Z , {\displaystyle {\frac {n_{i}}{n}}={\frac {g_{i}e^{-E_{i}/kT}}{Z}},} ここでnは励起・非励起の原子種の総数密度、kはボルツマン定数、Tは温度、 g i {\displaystyle g_{i}} は状態iの縮退(多重度とも)、Zは分配関数である。温度Tにおける黒体放射のプランクの法則より、周波数νのスペクトルエネルギー密度について ρ ν ( ν , T ) = F ( ν ) 1 e h ν / k T − 1 , {\displaystyle \rho _{\nu }(\nu ,T)=F(\nu ){\frac {1}{e^{h\nu /kT}-1}},} ここで F ( ν ) = 8 h π ν 3 c 3 , {\displaystyle F(\nu )={\frac {8h\pi \nu ^{3}}{c^{3}}},} ここで c {\displaystyle c} は光速、 h {\displaystyle h} はプランク定数 これらの式を詳細釣り合いの方程式に代入し、E2 − E1 = hνであることを思い出すと、 A 21 g 2 e − h ν / k T + B 21 g 2 e − h ν / k T F ( ν ) e h ν / k T − 1 = B 12 g 1 F ( ν ) e h ν / k T − 1 , {\displaystyle A_{21}g_{2}e^{-h\nu /kT}+B_{21}g_{2}e^{-h\nu /kT}{\frac {F(\nu )}{e^{h\nu /kT}-1}}=B_{12}g_{1}{\frac {F(\nu )}{e^{h\nu /kT}-1}},} 整理すると A 21 g 2 ( e h ν / k T − 1 ) + B 21 g 2 F ( ν ) = B 12 g 1 e h ν / k T F ( ν ) . {\displaystyle A_{21}g_{2}(e^{h\nu /kT}-1)+B_{21}g_{2}F(\nu )=B_{12}g_{1}e^{h\nu /kT}F(\nu ).} 上式は任意の温度で成立する必要がある。よって B 21 g 2 = B 12 g 1 , {\displaystyle B_{21}g_{2}=B_{12}g_{1},} かつ − A 21 g 2 + B 21 g 2 F ( ν ) = 0. {\displaystyle -A_{21}g_{2}+B_{21}g_{2}F(\nu )=0.} したがって、3つのアインシュタイン係数は次のように相互関連する。 A 21 B 21 = F ( ν ) {\displaystyle {\frac {A_{21}}{B_{21}}}=F(\nu )} かつ B 21 B 12 = g 1 g 2 . {\displaystyle {\frac {B_{21}}{B_{12}}}={\frac {g_{1}}{g_{2}}}.} この関係式を元の方程式に代入すると、プランクの法則に関係する A 21 {\displaystyle A_{21}} と B 12 {\displaystyle B_{12}} の関係を導くこともできる。
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