トンネリング時間と致命的スローダウン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/14 07:38 UTC 版)
「マルチカノニカル法」の記事における「トンネリング時間と致命的スローダウン」の解説
どんなモンテカルロ法もそうであるように、 P ( r ) {\displaystyle P({\boldsymbol {r}})} に従ってサンプリングされるサンプルには相関がある。相関の尺度として「トンネル時間」がよく使われる。トンネリング時間は、シミュレーションが F のスペクトルの極小値と極大値の間を往復するまでにかかるマルコフ連鎖のステップ数と定義される。トンネリング時間を用いる動機の一つは、スペクトルを横断するならば状態密度の極大領域を通過するため、プロセスが脱相関されることである。また、往復させることでシミュレーションがスペクトルの全域を通過することを保証している。 F に対するヒストグラムは平坦であるため、マルチカノニカル法は F の値という一次元の線上における拡散過程(つまりランダムウォーク)とみることができる。このようなプロセスにおいて、詳細釣り合い条件はプロセスにドリフト(英語版)がないことを保証する。このことから、局所的なダイナミクスにおいてはトンネリング時間は拡散プロセスと同じようにスケールすることになり、したがってトンネリング時間はスペクトルのサイズ N の二乗に比例してスケールする。 τ t t ∝ N 2 {\displaystyle \tau _{tt}\propto N^{2}} しかし、イジングモデルを初めとするいくつかの系では、スケーリングが致命的にスローダウンし、 N 2 + z {\displaystyle N^{2+z}} (ここで z > 0 {\displaystyle z>0} は系に依存する数)に比例してスケールするようになる。 スケーリングを改善し、致命的スローダウンを克服するため、非局所的ダイナミクスが開発されている(ウォルフのアルゴリズムを参照)。しかし、イジングモデルのようなスピン系において致命的スローダウンに陥いらないような局所的ダイナミクスが存在するのかどうかという疑問はいまだに答えの出ない問題である。
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