反応の量的ネットワーク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 03:26 UTC 版)
「反応速度式」の記事における「反応の量的ネットワーク」の解説
化学反応ネットワーク理論(英語版)の最も一般的な考え方は、 R {\displaystyle R} 個の反応に関わる異なる化学種の数 N {\displaystyle N} を考えることである。一般に、 j {\displaystyle j} 番目の反応について次のように記述できる。 s 1 j X 1 + s 2 j X 2 … + s N j X N → k j r 1 j X 1 + r 2 j X 2 + … + r N j X N , {\displaystyle s_{1j}{\ce {X}}_{1}+s_{2j}{\ce {X}}_{2}\ldots +s_{Nj}{\ce {X}}_{N}{\ce {->[k_{j}]}}\ r_{1j}{\ce {X}}_{1}+\ r_{2j}{\ce {X}}_{2}+\ldots +r_{Nj}{\ce {X}}_{N},} これは、上式と同値な下式で表されることも多い。 ∑ i = 1 N s i j X i → k j ∑ i = 1 N r i j X i . {\displaystyle \sum _{i=1}^{N}s_{ij}{\ce {X}}_{i}{\ce {->[k_{j}]}}\sum _{i=1}^{N}\ r_{ij}{\ce {X}}_{i}.} ここで j {\displaystyle j} は1から R {\displaystyle R} までの反応の番号。 X i {\displaystyle {\ce {X}}_{i}} は i {\displaystyle i} 番目の化学種。 k j {\displaystyle k_{j}} は j {\displaystyle j} 番目の反応の速度定数 s i j {\displaystyle s_{ij}} と r i j {\displaystyle r_{ij}} は反応式における反応物および生成物の係数 この反応の反応速度は化学平衡の法則(英語版)から推測される。 f j ( [ X → ] ) = k j ∏ z = 1 N [ X z ] s z j {\displaystyle f_{j}([{\vec {\ce {X}}}])=k_{j}\prod _{z=1}^{N}[{\ce {X}}_{z}]^{s_{zj}}} これは単位時間・単位体積あたりの物質の変化量で表される。ここで、 [ X → ] = ( [ X 1 ] , [ X 2 ] , ⋅ ⋅ ⋅ , [ X N ] ) {\displaystyle {\ce {[{\vec {X}}]=([X1],[X2],...,[X_{\mathit {N}}])}}} は濃度のベクトル[要曖昧さ回避]である。ここで、この式が定義される反応は素反応である事に注意する。 零次反応 s z j = 0 {\displaystyle s_{zj}=0} が全ての z {\displaystyle z} について成り立つ。 一次反応 s z j = 1 {\displaystyle s_{zj}=1} がある1つの z {\displaystyle z} について成り立つ。 二次反応 2分子の反応では2つの z {\displaystyle z} について s z j = 1 {\displaystyle s_{zj}=1} が成り立つ。また二量化では s z j = 2 {\displaystyle s_{zj}=2} がある1つの z {\displaystyle z} について成り立つ。 それぞれについて次のように議論される。この時、それぞれの反応について反応の量的関係についての行列(stoichiometric matrix)を定義することができる。 S i j = r i j − s i j , {\displaystyle S_{ij}=r_{ij}-s_{ij},} これは j {\displaystyle j} 番目の反応について存在する正味の i {\displaystyle i} の物質量を表す。この時、反応速度式は以下のようなより一般的な形に書き直すことができる。 d [ X i ] d t = ∑ j = 1 R S i j f j ( [ X → ] ) . {\displaystyle {\frac {d[{\ce {X}}_{i}]}{dt}}=\sum _{j=1}^{R}S_{ij}f_{j}([{\vec {\ce {X}}}]).} ここで、これは反応の量的関係を表す行列と反応速度の関数の積である事に注意する。 系内で起こっている反応が可逆反応のみであり、反応が平衡状態にある場合、この方程式には簡単な解が存在する。( d [ X i ] d t = 0 {\displaystyle {\frac {d[{\ce {X}}_{i}]}{dt}}=0} )この場合性反応と逆反応の反応速度は等しいので、詳細釣り合いが成り立っている。ただし、詳細釣り合いは反応の量的行列 S i j {\displaystyle S_{ij}} のみについて成り立つ性質であり、反応速度関数 f j {\displaystyle f_{j}} には依存しない。詳細釣り合いが成り立たない場合については、代謝経路を理解するために開発された流速均衡解析(英語版)によって研究されている。
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