ブラックホールの表面重力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:15 UTC 版)
「表面重力」の記事における「ブラックホールの表面重力」の解説
一般相対性理論の領域では、ニュートン力学の範囲で考えられていたような加速度の概念は成り立たない。ブラックホールは一般相対論の枠組みで取り扱わなければならない天体であり、ニュートン力学での取り扱いのように、天体表面近傍でテスト粒子が感じる加速度としては表面重力を定義することができない。この理由は、ブラックホールの事象の地平面においてテスト粒子に加わる加速度が、相対論では無限大となるからである。このため、裸の加速度ではなくくりこまれた値が用いられる。この方法で定められた加速度は、その非相対論的極限においてニュートン的な加速度に対応する。一般には表面重力として、局所固有加速度(事象の地平面で発散する)に重力赤方偏移因子(事象の地平面で 0 となる)をかけたものが用いられる。天体の周りの重力場がシュヴァルツシルト解で表されるような場合には、この定義はすべての 0 でない座標の動径成分 r と天体の質量 M に対して数学的によい振る舞いをする。 ブラックホールの表面重力を説明する際に、ニュートン的な表面重力と似た振る舞いをする概念を定義することができるが、しかしそれらは同じものではない。事実、一般のブラックホールに対して振る舞いのよい表面重力の定義はない。しかしながら、事象の地平面がキリング地平面(英語版) (Killing horizon) であるようなブラックホールに対しては、表面重力を定義することができる。 静的なキリング地平面の表面重力 κ は無限遠点における加速度であり、この表面重力には物体をキリング地平面に留める働きがある。ka を適当に正規化されたキリングベクトルとすると、表面重力は以下のキリング地平面における方程式により定義される。 k a ∇ a k b = κ k b . {\displaystyle k^{a}\nabla _{a}k^{b}=\kappa k^{b}.} 静的で漸近平坦な時空について、r → ∞ で kaka → −1 となり、また κ ≥ 0 となるようにキリングベクトルの正規化を行わなければならない。シュヴァルツシルト解については、表面重力は、ka を時間推進キリングベクトル k a ∂ a = ∂ ∂ t {\displaystyle k^{a}\partial _{a}={\frac {\partial }{\partial t}}} にとればよく、より一般的なカー・ニューマン解については、時間推進キリングベクトルと軸対称キリングベクトルの、キリング地平面でヌルとなる線形結合 k a ∂ a = ∂ ∂ t + Ω ∂ ∂ ϕ {\displaystyle k^{a}\partial _{a}={\frac {\partial }{\partial t}}+\Omega {\frac {\partial }{\partial \phi }}} を選ぶ。ここで Ω は角速度である。
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