フィッツジェラルド_(ミサイル駆逐艦)とは? わかりやすく解説

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フィッツジェラルド (ミサイル駆逐艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/02 07:23 UTC 版)

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艦歴
発注 1990年2月22日
起工 1993年2月9日
進水 1994年1月29日
就役 1995年10月14日
退役
その後 就役中
要目
排水量 満載: 8,362 トン
全長 153.9 m (505 ft)
全幅 20.1 m (66 ft)
吃水 9.4 m (31 ft)
機関 COGAG方式
LM 2500-30ガスタービンエンジン (27,000shp) ×4基
可変ピッチプロペラ(5翅)×2軸
最大速 31ノット
航続距離 4,400 海里(20ノット時)
乗員 士官、兵員 337名
兵装 Mk.45 mod.2 5インチ単装砲 ×1基
Mk.38 25mm単装機関砲 ×2基
Mk.15 20mmCIWS×2基
M2 12.7mm機銃 ×4挺
Mk.41 mod.2 VLS ×90セル
* スタンダードSM-2 SAM
* スタンダードSM-3 ABM
* ESSM 短SAM
* VLA SUM
* トマホークSLCM
などを発射可能
ハープーンSSM 4連装発射筒×2基
Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
艦載機 ヘリコプター甲板のみ, 格納庫なし
C4ISTAR NTDS mod.5 (リンク 11/16)
AWS B/L 5 (Mk.99 GMFCS×3基)
AN/SQQ-89
センサ AN/SPY-1D 多機能レーダー×4面
AN/SPS-67 対水上レーダー×1基
AN/SQS-53C艦首装備ソナー
AN/SQR-19 曳航ソナー
電子戦 AN/SLQ-32(V)2 ESM装置
Mk.36 mod.12 デコイ発射装置
モットー Protect your People

フィッツジェラルド (英語: USS Fitzgerald, DDG-62) は、アメリカ海軍ミサイル駆逐艦アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の12番艦。艦名はウィリアム・チャールズ・フィッツジェラルド海軍中尉(William Charles Fitzgerald、1938- 1967)に因む。スタンダードミサイルSM-3を搭載するミサイル防衛対応艦船である。

艦歴

フィッツジェラルドはメイン州バスバス鉄工所で1993年2月9日に起工、1994年1月29日に進水し、1995年10月14日にロードアイランド州ニューポートで就役、カリフォルニア州サンディエゴのサンディエゴ海軍基地が母港となった。

2004年4月初め、フィッツジェラルドは弾道ミサイル迎撃システムの一部として世界的に展開する3隻のミサイル巡洋艦及び15隻のミサイル駆逐艦の一隻であることが発表された。フィッツジェラルドは2004年9月30日に横須賀に到着、第7艦隊に加わり、「Super Swap」として知られる人員交換を行った。駆逐艦「オブライエン」(USS O'Brien, DD-975)の乗員140名がフィッツジェラルドに乗り込み、フィッツジェラルドを操艦してきた95名が退役するオブライエンに乗り込み本国へ帰還した。

2011年3月の東日本大震災発生に際して被災地を救援するトモダチ作戦に参加。行方不明者の捜索と物資の輸送に携わった。

2012年12月、北朝鮮は「人工衛星光明星3号の打ち上げ」と称する弾道ミサイルの発射を予告する。これに対し米国海軍は黄海に艦艇を展開させ不測の事態に備える。「フィッツジェラルド」は「DDG-65 ベンフォード」と共に12月9日までに当該海域に配備される。他にイージス艦2隻の追加派遣とミサイル追跡艦「T-AGM-23 オブザヴェーション・アイランド」に、海上自衛隊からイージス艦3隻、大韓民国海軍から2隻を加えた10隻態勢で臨む[1]。ミサイルは同月12日に発射される。

2013年4月に北朝鮮が弾道ミサイル発射の姿勢を見せた際にも、朝鮮半島南西沖に出動し警戒に当たった。

2020年6月13日、米海軍は後述の衝突事故の修復工事が完了したフィッツジェラルドを第7艦隊第15駆逐隊から第3艦隊第1駆逐隊に配置換えして、カリフォルニア州サンディエゴを母港とすると発表した。

衝突事故

衝突事故で破損した右舷

2017年6月16日午後横須賀を出港し、17日未明、静岡県賀茂郡南伊豆町沖を航行中にフィリピン船籍のコンテナ船ACX クリスタルと衝突。右舷前方の居住区・通信・機械室近辺が大破・浸水した。この事故で、居住区などにいた7名が艦内浸水区画で死亡[2][3]した他、艦長のブライス・ベンソン中佐ら3人が負傷した[4][5]。なお、艦長は水面上では最も損傷が激しかった右舷の上級士官居住区にある艦長室にて負傷した。

フィッツジェラルドは事故後しばらくは自力航行していたが、事故をうけ横須賀から派遣されたタグボート2隻が到着後はタグボートに曳航され、浸水区画から排水しながら17日夜に横須賀基地に帰港した[6]。横須賀帰港後はしばらく埠頭付けで応急修理を行っていたが、7月11日午前に横須賀海軍施設ドックに入渠した[7]

同年8月17日に事故責任として海軍は、艦長や副艦長らを解任し、事故当時に見張りに就いていた乗組員ら約10人を処分した。海軍作戦副部長は国防総省での会見で、フィッツジェラルドが20ノットの速度で航行中、当時艦橋にいた乗組員らが周囲の状況把握を怠ったと指摘。コンテナ船に気付いたときには、既に衝突を回避する時間がなかったという[8]。この事故では、元艦長と大尉2人、中尉1人が職務怠慢、艦体を危険にさらした罪、過失致死などの罪で訴追され軍法会議にかけられている[9]

同年10月8日に艦体は応急水密修理し出渠、イージスシステム本体修理は米本国で行うため[10]オランダの重量運搬専門海運会社のドックワイズ所有半潜水型重量物運搬船トレジャーが同じ横須賀所属ジョン・S・マケインシンガポールチャンギ海軍基地からの移送後積み替えを待っていたが移送中ジョン・S・マケインに亀裂が発見され台風が接近する可能性もあり、急遽フィリピンスービック海軍基地へ回航され重量運搬船の到着が見通せなくなり[11]代わりに同じドックワイズ所有の同型船トランス・シェルフが手配され、11月20日到着し[12]、24日に搭載[13]、25日浮上後船体に船体積み付け作業時に発生した破孔が発見され、運搬船積載のまま横須賀へ接岸し水密作業後の12月9日出港した[14]

修復費用は3億9,800万ドルほどになり、これには1500万ドル以上となるSPY-1Dの新規購入費用も含まれる。上部構造にゆがみが生じたためSPY-1レーダーに問題が生じる可能性があり修復を疑問視する声もあったが海軍は修復を進める方針を決定している[15]

2018年1月にミシシッピー州パスカグーラインガルス造船所に到着、まず乾ドックにて外装修理を集中的に施し、2019年4月に出渠し埠頭係留のままイージスシステムを含むC5I能力(Command, Control, Communications, Computers, Collaboration, and Intelligence)などを中心に修復及び刷新処理が行われている[16][17]

2017年はこれ以外にも1月のイージス巡洋艦アンティータムの人為的ミスによる座礁事故、8月のイージス駆逐艦ジョン・S・マケインのタンカー衝突事故と太平洋艦隊所属艦艇の衝突事故が相次いだ。この事態を受け米海軍は運用慣行の「包括的な見直し」を行うための「運用一時停止」を指示、同年8月21日の全艦艇の運用一時停止を命じた[18]ほか、海軍中将ジョセフ・P・アーコイン英語版を第7艦隊司令官から解任した[19]

2019年8月29日、日本の運輸安全委員会は本件に関する事故報告書を公表した[20]

クレスト

フィッツジェラルドのクレストは、フィッツジェラルド家の盾形の紋章(赤い十字を備えた白い楯)が元となっている。楯は防御を意味し、赤の十字は強さを意味する。また、赤色は勇気と行動を意味する。この伝統的なデザインは4つのシロツメグサと金の小環が織り交ぜられた青い十字が加えられて修正された。青の十字はベトナム戦争で英雄的な行動を取ったフィッツジェラルド中尉にその死後与えられた海軍殊勲章を記念している。金の小環は永遠に続く希望、忠誠と調和を意味する。

4つのシロツメグサはフィッツジェラルド中尉のアイルランドの家族および遺産を表す。

脚注

  1. ^ 10日から北ミサイル発射の予告期間 米イージス艦が黄海へ 日米韓で10隻態勢
  2. ^ “Missing sailors found dead in flooded compartments on US Navy destroyer”. CNN. Cnn.com. (2017年6月17日). http://edition.cnn.com/2017/06/17/us/missing-sailors-found/index.html 2017年6月18日閲覧。 
  3. ^ 米イージス艦衝突 不明7人の遺体見つかる”. CNN (2017年6月21日). 2017年6月18日閲覧。
  4. ^ “米イージス艦と比籍のコンテナ船衝突 1人負傷、7人と連絡取れず”. 産経ニュース. 産業経済新聞社. (2017年6月17日). http://www.sankei.com/affairs/news/170617/afr1706170003-n1.html 2017年6月17日閲覧。 
  5. ^ “衝突の米イージス艦浸水、航行不能に 乗組員7人不明 静岡・下田沖、コンテナ船と”. 日本経済新聞. (2017年6月17日). http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXLASDG17H10_X10C17A6CC0000/ 2017年6月17日閲覧。 
  6. ^ コンテナ船と衝突の米駆逐艦、横須賀に帰港”. ニフティニュース (2017年6月21日). 2017年6月18日閲覧。
  7. ^ 駆逐艦フィッツ、ドライドック入り
  8. ^ 衝突イージス艦の艦長解任=事故責任の所在明言せず-米海軍”. 時事通信 (2017年8月18日). 2017年8月18日閲覧。
  9. ^ “衝突事故の米海軍艦、元艦長ら過失致死罪で軍法会議に”. CNN. (2018年1月17日). https://www.cnn.co.jp/m/usa/35113269.html 2018年2月2日閲覧。 
  10. ^ 衝突駆逐艦フィッツジェラルド、ドライドックを出される
  11. ^ 2017年10月  横須賀 米艦船の在港状況
  12. ^ 重量物運搬船、横須賀港沖に到着
  13. ^ 事故駆逐艦、重量物運搬船に載る
  14. ^ 重量物運搬船、フィッツジェラルド載せて横須賀基地入港
  15. ^ The Navy’s broken ships of 2017 are coming back to life; here’s how its going
  16. ^ 日本近海で民間船と衝突したアメリカ駆逐艦 船体の修理を終え2年ぶりに海へ
  17. ^ USS Fitzgerald Leaves Dry Dock, Continues Repairs Pierside in Pascagoula
  18. ^ 米海軍、全艦隊の運用停止 駆逐艦衝突受け
  19. ^ “Commander of Naval Fleet Relieved of Duty After Collisions”. The New York Times (ニューヨーク・タイムズ). (2017年8月22日). https://www.nytimes.com/2017/08/22/world/asia/us-navy-ship-collision-uss-mccain-search-sailors.html 2017年8月23日閲覧。 
  20. ^ 報告書番号MA2019-8 - 運輸安全委員会

関連項目

外部リンク


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