ヒトとタウリン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 14:18 UTC 版)
タウリンは体内でおもに肝臓で生合成されるか、摂取する食物を介して補給される。 ヒト、トリ、ネズミなどは体内でアミノ酸のメチオニンやシステインから合成することができるため、食事からの摂取が必須な栄養素ではない。ネコ、キツネなど、獲物からタウリンを得ていた肉食系の動物は、タウリンを体内で合成する能力が極端に低いため、食事からの摂取が必須な栄養素である。ヒトの新生児もタウリンを合成する能力が低く、母乳の初乳中に大量に含まれることから必須の成分であると考えられている。 タウリンはヒトの体内で胆汁の主要な成分である胆汁酸と抱合し、タウロコール酸などの形で存在する。消化作用を助けるほか、神経伝達物質としても作用する。白血球の一種である好中球が殺菌の際に放出する活性酸素や過酸化水素の放出(呼吸バースト)を抑える作用もある。 ヒトにおいては心臓に特に多く、次いで筋肉、肝臓、腎臓、肺、脳などに多い。また、網膜や卵巣、精子などにも含まれ、体重が60kgのヒトの体内には約6g(6,000mg、体重の0.1%)のタウリンが存在する。ヒトの尿中に排出されるタウリンの量は一日平均200mgであり、不足時には尿中から再吸収され身体の必要とされる部分に回される。 タウリンはヒトの生体内で重要な役割を担っているが、もともと魚介類を常食する日本の食習慣においては摂取量の高い物質であり、また成人は体内で合成できるため食事からどれだけの量が必要なのかを特定するのは難しい。タウリンは体内で必要な量が一定に保たれており、欠乏時は腎臓で再吸収を増やして尿中排泄を抑制し、余剰分はすみやかに尿中に排せつされる。そのため欠乏症になることはなく、一度に大量に摂取しても必要以上のタウリンが体内に蓄積されることはない。 ヒトの摂取において、うっ血性心不全および肝炎に対して一部で有効性が示唆されているが、その他、食品や栄養ドリンクに期待されている疲労回復、血中脂質の改善、高血圧予防などの効果については、ヒトを対象にした信頼性の高い研究において科学的根拠が不十分であり、今後のさらなる研究が待たれている。
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