バックラーとブロードソード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 18:36 UTC 版)
「西洋剣術」の記事における「バックラーとブロードソード」の解説
バックラーは直径25cm程の小さな盾であり、ルネサンス時代まで、とりわけ弓兵や一般兵に好んで使用された防具である。 軽く小さいバックラーは機動性が高く、中型以上の盾とは全く異なり、自分から相手の剣に当てていく使い方をする。そのため、盾の欠点である死角が生じないが、相手の攻撃を正確に読んで当てていく技術が要求される。気持ちとしては二刀流に近いが、バックラーを小剣にすると防御が難しい。これは腕を伸ばすことで盾の影が多く取れること(剣だと通常腕を曲げて構える)拳を中心とした前後左右で受けられるので目視誤差が少ない(小剣だと拳から上だけに限定される)が理由かもしれない。あるいは切っ先を相手に向けるとその分、ガード面積は少なくなる。 剣とバックラーのコンビネーションを扱った「I.33」においては、基本的にバックラーは柄をしっかりと持ち、腕を伸ばして、拳を相手に突きつけるように構える。こうすることで、盾の影を大きく取ることができる。 腕を伸ばす以外の構えとしては、たとえば、「女の構え(Frauen-Hut)」は中型以上のシールドにも応用できるとされる。これは、相手に左肩を見せるように横向きに立ち、バックラーと剣は胸の前で肘を曲げて祈るように持つ構えで、この姿がおびえる女性に見えることからこの名前がある。相手に左肩と背中ががら空きだと思わせ、攻撃を誘い、それを裏拳で叩き落すようにバックラーで防御し、同時に右手の剣で水平に斬りつける方法である。このときも右手と左手は同じ動きをする。フィルボウはフィドル(バイオリンの原型の楽器)を弾いているのににているところから来た名前だ。剣をバックラーの裏に切っ先をななめ下にかまえる。これから剣で相手の剣を防御し、バックラーを持つ左腕で相手の右腕を絡めることが出来る。 右手の剣を握った拳の上にバックラーを被せるように持ち、重ねたまま攻撃するテクニックはベーシックである。これは、「小さな盾は遠くに構える」という原則に沿っており、また、最も狙われやすい篭手が絶対に防御されるという理にかなったテクニックである。相手は、篭手以外のところを狙おうとするならば、数十センチは間合いを詰めねばならなくなるのである。また、この構えは手の内が隠せるため、例えば左手に剣を持ち替え、バックラーと一緒に握っても相手には分からない。 その他、シールドに比べると遥かに軽く、自分のリーチの最大範囲で扱えるバックラーは、予備的攻撃、すなわち相手を殴る、押し付けるといった動作がしやすい。たとえば、相手の攻撃を体で避けた際には、素手の場合と異なり、バックラーでは相手の拳だけではなく、剣を持った右手自体を押さえることもできる。金属のバックラーでのパンチは非常に強力で、頭部を殴れば一撃で相手を失神させる。 バックラーはレイピアでも使うしブロードソードでも使う。レイピアのダガーで(真っ直ぐ横に長いキヨン、帆船の帆のような護拳を持つタイプのもの)はバックラーと同じように構えても良い。事実、このタイプのダガーは護拳を相手に向け剣身は垂直になるように構える。いわば、短剣のついたバックラーである。 また、バックラーは左の腰につけていた。引っ掛けているだけなので瞬時に持つことができる。つまり、急に襲われた時、左手でバックラーを瞬時に持ち、防御しつつ、右手で剣を抜いた。喧嘩っ早い連中は剣の鞘は全てを被うものではなく金属リングにしていたので簡単に剣を引き抜くことが出来た。この、引き抜いた直後の構え、すなわち右手を高く左の上に剣先は下を向いている状態~がレイピアの構えの1番である。西洋剣は剣帯で吊ってあるため握りは左の太ももか少し上である。この位置は腕を下ろすと自然に当たる位置で剣帯がある分長い剣でも抜ける。西洋風抜刀術である。また、構えの10番は背中をガードする。つまり多人数に囲まれたときのものである。
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