ノーターとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 工学 > 航空軍事用語 > ノーターの意味・解説 

ノーター

名前 Nooter

ノーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/28 10:21 UTC 版)

MD エクスプローラー (ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州警察)
MD 520Nのテールブーム

ノーター( NOTAR , NO TAil Rotor の頭字語 )とは、他の多くの「単一の主回転翼」〔メインローター〕型式のヘリコプターが備えるテールローターに相当する飛行装置の一形式の名称。

テイルローターと同様に、ヘリコプター特有の「主回転翼(メインローター)の駆動に伴う反作用」(トルクとも呼ぶ)を原因とした、機体の操縦性喪失と墜落の危険につながるヨーイングを打ち消すための機体固有の仕組み。MDヘリコプターズによって開発された[1][2][リンク切れ]

開発

ノーター・システムの開発は1975年ヒューズ・ヘリコプターズ技術者が概念を開発した[3]1981年、12月、数機のヒューズH-6Aにノーター・システムが初めて搭載された。米陸軍からノーター技術開発の為、貸与された機体であった。

動作原理と機構

ノーターの原理。青色が空気の流れ。1.空気取入口 2.可変ピッチファン 3.コアンダ・スロット付きのテイルブーム 4.垂直安定板 5.直噴ジェットスラスター 6.下降流 7.コアンダ効果による横推力の発生を示したテイルブームの断面図 8.反トルク力

コアンダ効果を応用している[3]。内蔵されたファンのピッチを変える事により、テイルブームから噴出する空気の量を変えてメインローターの反作用の変化と釣り合わせる。 テイル・ブームの基部内に備わった送風ファンエンジンによって駆動されて、外気を取り込み、後部へと伸びるテイル・ブーム内へ送風する。テイル・ブームにはブーム途中の片側側面とブーム末端部の反対側面に開口部を持ち、送風された空気を噴出させる。

それぞれの噴出は「サーキュレーション・ジェット」と「ダイレクト・ジェット」と呼ばれる。ブーム途中の開口部では、側面から下方へ向けてサーキュレーション・ジェットを噴出することでメイン・ローターの作り出す強力な下降気流(の一部)を曲げる。このコアンダ効果によって、ブーム左右の下降気流の流れが不均一となり、開口部側の流速が高まって側方へ引っ張られる。ブーム末端部の開口部からのダイレクト・ジェットはそのまま側方へ押す力となる。

2つの側方への力は、メイン・ローターの回転が作り出す機体の回転運動(反トルク)を打ち消すように働く。また、機首方向を決める運動(ヨー)で使用される。

通常のテイル・ローターのように回転翼が露出せず、機体内部にあるので地上着陸時などでの人身事故の危険が減らせることや、騒音の低減が図れる。

ホバリング時には、サーキュレーション・ジェットとダイレクト・ジェットは、ヨーイングの制御にほぼ50%ずつの効果を発揮しているが、前進飛行速度が40 km/h - 95 km/h 程度では、テイル・ブーム側面を流れるメイン・ローターからの下降気流が斜めになるためコアンダ効果は働かず、サーキュレーション・ジェットの効果に代わって、テール末端部の垂直尾翼が反トルクを含めてヨーイングの制御に使用できる[4]

内部に空気を通すため、テールブームの断面が円形になっているのが外見上の特徴である。

長所・短所

長所

  • 騒音低減が期待できる
  • 地上離着陸時に高速回転しているテイル・ローターに接触する危険がなくなる
  • テイル・ローターの翼端が発生する渦流がないので振動が軽減される
  • テイル・ローター機のドクターヘリでは振動の為に機内で注射を打つことは困難だったが、ノーター機では可能となった
  • パイロットの負荷が軽減される
  • 伝達軸等の駆動系統の部品点数が減り、整備費が軽減される

短所

  • テイル・ローター機と比較して、ペダル操作の反応に時間差(タイムラグ)がある
  • テイル・ブームが太くなるので空力特性、特に直進時の安定性が悪くなる
  • 巡航時には効果がなくなるため、ヨー操縦を方向舵に頼る必要があり、また大きな抗力が発生してしまう
  • 推力効率がダクテッド・テイル・ローター以上に悪く、上述した抗力と相まって燃費が悪くなる

ノーター採用機種

ノーター・システムを搭載した機体は3機種生産されている。全てMDヘリコプター製である。

テイルローターに起因する振動や危険が皆無であるため、ドクターヘリへの採用が多いが、低騒音なため警察、報道にも採用されている。ただし、燃費の悪さがネックとなって今の所はMD 900が軍用としてメキシコ海軍に採用された程度の事例である。

出典

  1. ^ ノーターシステム解説(日本語)
  2. ^ http://www.kulikovair.com/Notar.htm
  3. ^ a b Frawley, Gerard: The International Directory of Civil Aircraft, 2003-2004, page 155. Aerospace Publications Pty Ltd, 2003. ISBN 1-875671-58-7
  4. ^ 鈴木英夫著 「図解ヘリコプター」 BLUEBACKS 講談社 2001年10月20日発行第1刷 ISBN 4-06-257346-6

関連項目

外部リンク


ノーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 00:16 UTC 版)

「ヘリコプター」記事における「ノーター」の解説

ノーター ではテールブーム基部ファンにより低圧縮高ボリューム空気をテールブーム内に送り込む。この空気一部を(メインローター反時計回り場合)テールブーム右側からテールブームに沿って下方向噴出させ、テールブームの周りコアンダ効果利用した気流循環作りメインローターから吹き下ろされるテールブーム左右空気流に速度差が生じ擬似翼型成型することにより空力揚力(エアロダイナミクスリフト)を発生させ、反トルクを得る。 テールブーム後端にはヨーコントロールペダルによりコントロールされるダイレクトジェット噴出口があり、横方向コントロール使用されるホバリング中のエアロダイナミクスリフトと、ダイレクトジェットによる反トルク効果50%程度であるが、前進飛行速度が40-95km/mぐらいでは、吹き降ろす風が斜めになるためにブーム側面のサーキュレーション・ジェットは効果失い後端からのダイレクト・ジェットだけが有効となる。ただ、このくらい速度からは後端垂直安定板が風を受けることでトルク打ち消す効果生じるため、エンジン駆動ファン弱くして燃費向上寄与することが出来る。また、騒音振動少なくなるという利点もある。

※この「ノーター」の解説は、「ヘリコプター」の解説の一部です。
「ノーター」を含む「ヘリコプター」の記事については、「ヘリコプター」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ノーター」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ノーター」の関連用語

ノーターのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ノーターのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
航空軍事用語辞典++航空軍事用語辞典++
この記事はMASDF 航空軍事用語辞典++の記事を転載しております。
MASDFでは航空及び軍事についての様々なコンテンツをご覧頂けます。
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのノーター (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのヘリコプター (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS