ナショナル セミコンダクターとの合併
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/13 03:47 UTC 版)
「サイリックス」の記事における「ナショナル セミコンダクターとの合併」の解説
1997年8月、訴訟が進んでいる間に、サイリックスはナショナル セミコンダクターに吸収合併された(ナショナル セミコンダクターは既に、インテルとのクロスライセンスを持っていた)。これにより、サイリックスは更なる販路を確保し、さらにナショナル セミコンダクターの製造工場を使用できる様になった。その工場は元々RAMや高速通信のアナログ回路を作っていたものであった。RAMとCPUの製造は類似しているため、その時のアナリストは、この統合が納得できるものだと信じていた。IBMとの製造委託契約はしばらくの間継続されたが、サイリックスは最終的に全てのチップの製造をナショナル セミコンダクターの工場で行うことにした。合併はサイリックスの財務状態を向上させ、またファブレスでは採用が困難であった最新プロセスでの製造を行う設備を使用することを可能とした。 合併は同時に、リソースの集中先を変更させた。ナショナル セミコンダクターの優先度はMediaGXの様にシングルチップの安価な多機能集約型デバイスであり、MIIや6x86の様な高性能のチップでなかった。修正版の6x86はインテルのPentium IIと直接競合しようとしたものであった。ナショナル セミコンダクターはサイリックスの高性能チップの設計能力に疑問をもち、また市場でインテルと高性能製品で争うことを恐れていた。一方、MediaGXは市場で直接の競争相手が存在せず、また低コストPCの生産のためOEM継続の要望があり、これが安全策に見えた。 ナショナル セミコンダクターはサイリックスが合併した後、財務的な問題に直面し、この問題はサイリックスを同様に痛めつけた。サイリックスのMIIがPR-300からPR-333の間の性能を持つ一方で、1999年までの間にAMDとインテルは激しいスピード競争の結果として、CPUの動作クロックスピードを450MHz以上に大きく向上させ、2000年には遂に1GHzの大台に到達したが、サイリックス製CPUの動作クロック向上は遅々として進まなかった。また、MIIにはFSBと83MHzを標準として使用するものがあり、分周率の問題から動作や互換性、あるいは安定性に問題が発生するケースが散見された。Socket 7のマザーボードの大多数は、通常の30MHzか33MHzをPCIバスの固定された1/2分周器でクロック供給して使用していた。一方、MIIの83MHzバスでは、PCIバスを、PCI規格が定める上限を超える41.5MHzで動作させる結果となり、このバスに接続されたPCIデバイスは安定せず、動作しないことが多かった。一部のマザーボードは1/3分周器をサポートしていたが、その場合にはPCIバスは27.7MHzで動作し、安定動作するがその低速さからシステムの性能に悪影響を与えた。この問題は、最終的にFSBが100MHzで動作するいくつかのモデルにおいて修正された。そうしているうちに、MediaGXはインテルとAMDのローエンドチップの圧力に直面した。それは、廉価なコストでより高い性能を得られた。サイリックスの製品は1996年には性能の良い製品であると考えられていたが、やがて、ミドルレンジに落ち、リストにあると言うレベルに、そして、リストの端に載っているというレベルになり、市場を完全に失う危険な状態となった。 サイリックスの最後の低価格マイクロプロセッサは300MHz(100x3)で動作するサイリックスMII-433であり、AMD K6-2 300MHzと比較してFPU計算で速かった(Dr. Hardwareのベンチマーク)。しかし、このチップは他の製造元の実動作クロック433MHzで動作するプロセッサに対しての競合品であった。たとえそれがサイリックス自身の宣伝により直接行われたものであったとしても、この比較は公正なものではなかった。 ナショナル セミコンダクターはCPU市場から距離を置いており、サイリックスのエンジニアはそれぞれバラバラになってしまった。その時まで、ナショナル セミコンダクターはサイリックスをVIA Technologiesに売り渡し、設計チームは存在せず、MIIの市場は消滅していた。VIAはセントールやVIAより、サイリックスの名前のほうが市場での認識が良いと信じて、サイリックスの名前をセントールテクノロジー (Centaur Technology) により設計されたチップに使用した。 ナショナル セミコンダクターはMediaGXの設計をもう数年続けたが、それをGeodeの名前で残し、それを集積プロセッサとして売ろうと考えていた。2003年AMDにこのGeodeの権利が売り渡された。 2006年6月AMDは0.9Wの消費電力の低パワープロセッサを公開した。このプロセッサはGeodeのコアに基づいており、サイリックスの技術的工夫がまだ生き残っており、これからも生き残ることを示している。
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