ドットインパクト方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/30 02:40 UTC 版)
縦横に並べたドットに対応する細いピン(=針状金属)を、紙の上に配置されたインクリボン(=インクを吸わせた帯)に叩き付けて(インパクトして)印刷する仕組み。 この方式が登場して数十年間ずっと「ドットマトリクス・プリンター」と呼ばれていたが、1990年代にインクジェット方式が登場・普及し、その方式もやはり「点のマトリクス」で文字を表現していたので、「ドットマトリクス」と呼ぶだけでは理屈の上ではそれも指しうる事態になってしまい、かなり紛らわしくなってしまったので、旧来の(以前はある意味「当たり前」と思われていた「インパクト式」の)ドットマトリクス式プリンターを区別して呼ぶためにレトロニムを作り「ドットインパクト式プリンタ」「ドットマトリクス・インパクト・プリンタ」などと呼ばれるようになった。 この方式は複写用紙への重ね印刷ができる、ほぼ唯一の方式である(これにより、完全に同一の文章を一度に打ち出すことができる。)。 打撃に用いるワイヤピンは磁気アクチュエータにより高速で駆動される。このプリントヘッドには、釈放型と吸引型がある。ワイヤピンは極力平坦な切断面でなければならないため、高出力レーザーによる切断加工が施されている。 吸引型 印字する瞬間にワイヤピンが接合されたアクチュエータを電磁石で吸引してワイヤピンを押し出す方式である。印字後はアクチュエータの弾性により元の位置に戻る。 釈放型 印字する瞬間に電磁石に電流を流して、アクチュエータを保持していた磁力を打ち消し、アクチュエータのバネ性でワイヤピンを押し出すものである。 また、印字するインクリボンの色を切り替える機構を持つことで多色印字の可能な機種もある。 小型で安価。 水平型 小型で8枚まで複写が可能。 ライン型 業務用の大型、高価。 初期のものでは1文字あたり8ピン (48 dpi (dots per inch)、最大では48ピン (360 dpi) 程度のものまであった。PC-8822などの16ピン仕様の製品が登場してからは、漢字の印刷が現実的となった。PC-8801からPC-8822へ漢字の「漢字」という文字の印刷は、BASICコマンドにおいてLPRINT chr$(27)+"K" +chr$(&H34)+chr$(&H41) +chr$(&H3b)+chr$(&H7a) +chr$(27)+"H"<改行>とすることで印刷することができた。現在は24ピン (180 dpi) がほとんどである。 かつては事務用から家庭用まで広く使われた。だがドットを構成するピンを叩きつける構造のため作動音が大きく(騒音防止のために、プリンターや用紙一式を収納できる防音カバーも市販されている)、高精細化にも限界があり、ほとんどの用途で他の方式(主に家庭用はインクジェットプリンター、業務用はレーザープリンター)に置き換えられている。現在ではプリンターとしては、ATMなどでの記帳や複写用紙(ノーカーボン紙等)への重ね印刷に用いられる用途が殆どである。 だが、他のプリンターと比較して電力をさほど消費せず、またこの方式に用いるインクリボンは、乾燥に強いという利点がある。したがって、待機時間を含めた長時間作動での維持負担が少ないため、アラーム記録(これは連続紙を利用するという点も大きい)、アナログ式のタイムレコーダーや各種測定器など時間計測に用いる場合、重宝される。
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