デカルト主義の時期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 14:31 UTC 版)
「フランツ・ブレンターノ」の記事における「デカルト主義の時期」の解説
ブレンターノはドイツ観念論のような思弁による概念構成の哲学を退け、経験的立場からの哲学を主張した。ブレンターノはあらゆる社会的現象を整理する力となるのは「心理的法則を知ること、したがって哲学的知識」であると、哲学と心理学を同一視した上で、心理学的探求に従事する使命があると主張した。実際、彼は1872年から73年にかけて心理学に没頭し、その成果は1874年に『経験的立場からの心理学』("Psychologie vom empirischen Standpunkt")の出版によって公表された。 ブレンターノは、形而上学的な装いを避けるため、心理学を「心の学」ではなく、「心的現象に関する学」として規定した。そして「心理学の基礎を形成するのは、自然科学のそれと同じく、知覚と経験である」とし、「固有の心的現象の内部知覚が経験の第一の源泉であり、それが心理学研究にとって欠くことのできないものである」とした。つまり、ブレンターノは、人間の内部意識に中心を置き、内的心的現象を分析することを通して、哲学的体系(心理学)を構築しようとしたのである。ここで、その心的現象と呼ばれるものを特徴づけるために、経験的に感覚的性質として得られる所与(data)としての現象を、心的ならざる現象、物的現象と呼んで対立させた。 我々は内部になにか現象が発生するとき、すなわち所与(data)、表象を得るときは、五感による外的知覚を介して得るか、もしくは、その得た所与などから引き起こされる内的現象を内的知覚を介して認識する。ブレンターノは、色・音・暖・冷などの五感で知覚された「感覚的性質」、つまり現象を物的現象(physical phenomena)と呼んだ。そしてそれ以外の内的知覚でしか認識できない内的現象(感情など)で、その内容に関する対象(「対象」と言っているが実在性は求めない)への方向性や関係(これを志向性と呼ぶ)を持つもの、つまり自己の内部意識においてのみ知覚される「対象」の志向的内在(intentional inexistence)を持つという特質があるものを心的現象(mental phenomena)と呼んだ。なお、これにはいくつか反論もあったが、ブレンターノはあらゆる心的現象において例外なく対象の志向的内在を認めた。 ブレンターノが直接的に明証的な知覚であるとしたのはこのうち心的現象の方であって、心理学の研究は専らこの心的現象の内部知覚を経験の源泉とすべきとした。一方で、物的現象の外部知覚は、明証的たりえず、知覚との対象も間接的で、対象はあくまで現象としてのみ存在しているとした。 ふつう心理は、五感で知覚された所与の認識だけではなく、それらを原因とする内的に発生する現象の因果的連鎖からなると考えられるので、この志向性の概念は、心理学や現象学へ大きな影響を与えた。
※この「デカルト主義の時期」の解説は、「フランツ・ブレンターノ」の解説の一部です。
「デカルト主義の時期」を含む「フランツ・ブレンターノ」の記事については、「フランツ・ブレンターノ」の概要を参照ください。
- デカルト主義の時期のページへのリンク