ダム事業の見直し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/23 14:48 UTC 版)
1990年代以降公共事業の見直しが各方面で叫ばれるようになったが、地方自治体の場合は財政悪化が深刻になっていたために、巨額の投資を必要とするダム事業には特に再検討の必要性を議会・住民などから求められるようになった。この中で全国各地の補助多目的ダムを中心にダム建設の中止・凍結・事業縮小が相次いだ。この傾向は今後とも続いていくと見られている。同時にダム事業を巡る事業主体である自治体首長の汚職事件の発覚などで、ダムを巡る国民の視点が厳しくなったのも事業の見直しに拍車を掛けている。 特に長野県の田中康夫知事(当時)による2002年(平成14年)の「脱ダム宣言」は環境保護・利権行政からの脱却・財政再建の意味から各方面に多大な影響を与えた。しかし肝心の治水代替案が根拠薄弱という指摘も多く、住民の安全を守る地方自治体の首長として今後有効な治水対策が打てるのか、議論が巻き起こった。また、2006年(平成18年)に就任した嘉田由紀子滋賀県知事は県内の建設中ダムを全て凍結する事を表明した。さらに熊本県の潮谷義子知事による球磨川の荒瀬ダム撤去決定(2002年)、東京都の石原慎太郎知事らによる利根川水系ダム事業参加の撤退など、地方発によるダム事業への再検討が大きく進められた。こうした流れはいわゆる「改革派」知事によって進められ、その結果全国の道府県でダム事業が中止され、既存の河川整備(堤防建設・川幅拡張など)による代替事業が進められた。 ところが平成18年7月豪雨を契機とした田中康夫落選(2006年長野県知事選で)は、後任の村井仁知事による「脱・脱ダム宣言」で浅川ダム(浅川)を始めとした事業の再・再検討が行われ、これに伴い一部の自治体ではダム事業の再評価を始めた。浅野史郎知事時代に凍結を決めた宮城県の筒砂子ダム建設事業の凍結解除、嘉田知事による芹谷・北川第一ダム事業再開などがその例である。これは地球温暖化によって頻発する水害に対し、河川管理者である都道府県知事の責任が重大になったことの表れでもあり、こうしたことがダム事業への再評価の動きにつながっている。だがこうした傾向に「改革派」知事を推した市民団体などは反発を強めており、今後は河川の危機管理と支持者・住民との意見調整が重要と見られている。
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