ゾーン、ベルト、ジェット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 06:20 UTC 版)
「木星の大気」の記事における「ゾーン、ベルト、ジェット」の解説
観測される木星の表面は、赤道に平行ないくつかの帯で分けられているように見える。帯には、明るい色のゾーンと比較的暗い色のベルトの2つの種類がある。幅の広い赤道ゾーン(EZ)は、おおよそ南緯7°から北緯7°まで広がっている。EZの上下には、南北赤道ベルト(NEB,SEB)が、それぞれ南緯18°、北緯18°まで広がっている。さらに赤道から離れると、南北熱帯ゾーン(NtrZ,StrZ)がある。ベルトとゾーンの交互のパターンは、緯度約50°の極地方まで続く。ベルトとゾーンの基本的な構造は、恐らく極に向かって広がったものであり、少なくとも80°まで達したと考えられる。 ゾーンとベルトの見かけの違いは、雲の不透明度の差に依っている。アンモニアの濃度はゾーンで高く、アンモニアの氷の濃い雲が高層に形成されて、明るい色に見える。一方、ベルトの雲は薄く、低い層にある。対流圏高層の温度は、ゾーンで冷たく、ベルトで暖かい。木星のゾーンとベルトの色をこれほど鮮やかにしている化合物については、よく分かっていないが、硫黄、リン、炭素からなる複雑な化合物が含まれると考えられている。 木星のバンドは、ジェットと呼ばれるゾーンを吹く風によって区切られる。東向き(逆行)のジェットはゾーンからベルトに遷移する過程で見られ、西向き(順行)のジェットはベルトからゾーンに遷移する過程で見られる。その速さは、赤道から極の方向に、ベルトでは遅くなり、ゾーンでは速くなる。そのため、ベルトのウインド・シアはサイクロン、ゾーンでは高気圧となる。EZはこの規則の例外であり、強い東向きのジェットの速度は、ちょうど赤道上で極小となる。ジェットの速度は、100m/s以上にも達する。この速度は、0.7から1バールに位置するアンモニアの雲の速度に相当する。逆行のジェットは、通常順行のジェットよりも強力である。ジェットの垂直の広がりは分かっていない。雲の上では、2から3スケールハイト低下し、雲の下では風は少し強くなって、少なくとも22バールまで下がると一定になる。これは、ガリレオ探査機が運用されていた最大の深さである。 木星の帯状構造の起源は完全に分かっていないが、地球のハドレー循環と同じ原理かもしれない。最も単純な解釈は、ゾーンでは上昇気流、ベルトでは下降気流が発生していると見ることである。大気にアンモニアが多く含まれると上昇し、膨張して冷え、高層に高密度の雲を形成する。ベルトでは大気は下降し、断熱過程で暖められ、白いアンモニアの雲は蒸発し、下層の暗い雲が露呈する。バンドの位置や幅、ジェットの位置や速度はかなり安定しており、1980年から2000年にかけてほんのわずかしか変化していない。変化の一例は北緯23°の北熱帯ゾーンと北温帯ベルトの境界の最も強い東向きのジェットの速度が低下したことである。しかし、帯の色相や彩度は時間を経るごとに変化している。
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