ゼネラル・エレクトリック TF39
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TF39 | ||
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要目一覧 | ||
種類 | 高バイパスターボファンエンジン | |
製造国 | アメリカ合衆国 | |
製造会社 | GE・アビエーション | |
最初の運転 | 1964年 | |
主な搭載機 | ロッキード・C-5 ギャラクシー | |
形式 | ターボファンエンジン(バイパス比8:1) | |
全長 | 312 in (792 cm) | |
直径 | 97 in (246 cm) | |
重量 | 8,000 lb (3,630 kg) | |
圧縮機 | 軸流式 | |
推力 | 43,300 lbf (193 kN) | |
燃料消費 | 0.313 lb/lbf-hr |
ゼネラル・エレクトリック TF39(General Electric TF39)は高バイパスターボファンエンジンである。ロッキード・C-5 ギャラクシーの動力として開発され初めて実用化された高推力高バイパスターボファンエンジン。民間航空機用エンジンであるCF6シリーズや、船舶や産業用ガスタービンエンジンであるLM2500は、本エンジンの設計をもとに開発された。
開発
アメリカ空軍は1964年に、次世代の戦略輸送機を意図した"CX-X 計画"を発表した。複数の機体やエンジンの提案があり、1965年にロッキード社による機体の設計案とゼネラル・エレクトリックのエンジンの設計案が採用された。
高バイパス比化されたターボファンエンジンは諸性能が大幅に向上しており、推力は43,000ポンドで燃料消費効率は約25%も改善された[1]。TF39のバイパス比は8:1、圧縮比は25:1で、先進的な強制空冷タービンの採用によりタービン温度は 2,500 °F (1,370 °C)へ引き上げられている。最初のエンジンは1965年に試験された。1968年から1971年にかけて、463基のTF39-1およびTF39-1AエンジンがC-5A航空隊の為に生産され、納入された。
設計
多くの新技術を採用したTF39は、1960年代の推力が41,000–43,000 lbf (182–191 kN)クラスの航空機用エンジンとしては革命的なエンジンで、以下のような特徴を備えていた。
- 1½ 段式ファンブレード (TF39のみ)
- 高いバイパス比8:1
- 可変式静翼
- 先進的な冷却機構を備えたタービン
- 当時のいかなるエンジンよりも優れた燃費
- カスケード式逆推力装置
機械的にTF39ほどの高バイパス比のターボファンエンジンはそれまでに無かった[2]。
ファンの回転翼は外部バイパス部の為に吸気案内翼に固定され、コアブースター段はファン回転翼の前にあった。これは類稀な設計で前から見ると明らかになる[3][4]。
派生機種
- TF39-GE-1
- 初期生産モデル。C-5Aに搭載。
- TF39-GE-1A
- C-5Aに搭載。
- TF39-GE-1C
- C-5Bに搭載。CF6よりフィードバックし、耐久性の面で改善を図った改良型。
仕様 (TF39-1C)
一般的特性
- 形式: ターボファン
- 全長: 312 in (792 cm)
- 直径: 97 in (246 cm)
- 乾燥重量: 8,000 lb (3,630 kg)
構成要素
性能
出典: [5]
出典
- ^ General Electric - CF6 history
- ^ スナバーはファンブレードの末端と中間部にあるファンの表面に直角に突き出ている突起である。スナバーは隣接するファンブレードを互いに支えあい、ブレードの振動特性を向上させる。
- ^ www.planes.cz - TF39 front view
- ^ www.airliners.net - TF39 running
- ^ Gas Turbine Engines. Aviation Week & Space Technology Source Book 2009. p. 119
- Gunston, Bill (2006). World Encyclopedia of Aero Engines, 5th Edition. Phoenix Mill, Gloucestershire, England, UK: Sutton Publishing Limited. ISBN 0-7509-4479-X
外部リンク
ゼネラル・エレクトリック CF6
(ゼネラル・エレクトリック TF39 から転送)
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CF6(アメリカ軍識別符号:F103)は、アメリカ合衆国のゼネラル・エレクトリック(現GE・アビエーション)が開発した航空機用高バイパス比ターボファンエンジンである。原型となったのはアメリカ空軍のC-5大型輸送機用に開発されたTF39 ターボファンエンジンで、世界初の実用高出力・高バイパス比エンジンであった。現在では軍用・民間を問わず様々な航空機に使用されている。また、後継機としてGEnxエンジンが開発された。
歴史
1964年にアメリカ空軍は次世代戦略輸送機を開発する「CX-X計画」を開始し、1965年にロッキードの機体とゼネラル・エレクトリックのエンジンを採用することが決定した。
高バイパスターボファンエンジンは性能を大きく飛躍させ、燃費を25%改善しつつ43,000lb(約19.5t)の推力を生み出した[1]。TF39のバイパス比は8で、圧縮比は25、また、高度な冷却システムによって1,370℃というタービン温度を達成した。TF39の初号機は1965年に試運転し、1968年-1971年にかけて463基が生産されてC-5Aに搭載された。
TF39は民間用にCF6として提案され、すぐにイースタン航空向けに売込んでいたロッキード L-1011とマクドネル・ダグラス DC-10が関心を示した。L-1011は結局ロールス・ロイス RB211を採用してCF6の最大のライバルを作ることになったが、DC-10はCF6を採用して1971年に初飛行し、市場で成功を収めた。さらにCF6はボーイング747のエンジン選択肢の一つに選ばれた(ちなみに、747はCF6誕生のきっかけとなったCX-X計画でロッキードに敗れた開発資源を民間に転用したものである)。それ以来、CF6はエアバスA300、A310、A330やボーイング767、マクドネル・ダグラス MD-11などに採用されている[2]。
日本においては多くの民間航空機に搭載されている他、航空自衛隊の日本国政府専用機(初代)やE-767早期警戒管制機、KC-767空中給油機、C-2輸送機 に採用されている。
種類
TF39
TF39は、1960年代において革新的なエンジンだった。推力は41,000–43,000 lbf (182.4–191.3 kN)である。以下に示す新技術が投入された。
- 1½ 段ファンブレード、初段のファンが低圧圧縮を兼ねる(TF39が唯一の採用例)
- バイパス比:8
- 可変式静翼を圧縮器に採用
- タービンに先進的な冷却方法を採用
- 当時最良の燃料消費率
- カスケード式逆推力装置
機械的にTF39はそれまでになかった高バイパス比のターボファンエンジンである。それまでは初段のファンブレードには吸気案内翼が外部バイパス部にありコアブースターステージがファンローターの前にあった。 TF39の構造は次のサイトにある→ (外部リンク)
CF6-6

CF6-6は、民用のTF39として開発され、DC-10に最初に搭載された。最初期型のCF6であり、単段のファンとコアブースター段を5段の低圧タービンで駆動、16段の高圧軸流圧縮機を2段の高圧タービンで駆動する形式で、燃焼器はアニュラー式で排気を分割する。86.4 in (2.19 m)径のファンによって1,300 lb/s (590 kg/s)の推力を生み出し、バイパス比は5.72に達する。圧縮比は24.3である。最大離陸重量時の静止推力は40,000 lbf (178 kN)である。
CF6-50/45
CF6-50 シリーズは、推力が46,000–54,000 lbf (205–240 kN)の高バイパス比エンジンである。産業・船舶用にLM2500 ガスタービンエンジンとして開発された。1969年に長距離型DC-10用エンジンの後継として開発が開始された。
1969年、エアバスA300に採用され、1971年、エールフランスがローンチカスタマーになった。1975年にはKLMが最初のCF6-50搭載ボーイング747の発注を行った。CF6 ファミリーはこれを機にCF6-80へと発展する。
1980年には全日本空輸のボーイング747SR専用として推力を落としたCF6-45がファミリーに加わった。
CF6-80
CF6-80は、推力が48,000–75,000 lbf (214–334 kN)である。CF6-50 シリーズの成功を受けて更に改良した。高圧圧縮機は14段である。
767に搭載されたCF6-80C2B6Fの高圧タービンに起因する故障[3][4][5][6][7][8]を受け、FAAは一定時間使用したCF6-80の使用に注意を勧告している[9]。
-80シリーズには3種類がある。
CF6-80A
CF6-80Aは、推力が48,000–50,000 lbf (214–222 kN)で、ボーイング767とエアバスA310に搭載されている。このエンジンを搭載した767は1982年に、A310は1983年に就航した。また、ETOPSに認定されている。
CF6-80A/A1のファンの直径は86.4 in (2.19 m)で、空気流量は1,435 lb/s (651 kg/s)で圧縮比は28.0、バイパス比は4.66である。静止時における推力は48,000 lbf (214 kN)である。基本的な機械的構成は-50 シリーズと同様である。
CF6-80C2
CF6-80C2は、1985年10月から運用開始された。推力は52,500–63,500 lbf (234–282 kN)である。燃料消費率が同水準の推力のエンジンと比較して向上している。 CF6-80C2は、同一のハードウェアでエンジン制御部の"Rated Plug"を交換することで最大推力が16段階に調節でき、その用途の広さからこのエンジンは幅広い分野で使用されている。 CF6-80C2-A1は、ファン径が93 in (2.36 m)で空気流量は1,750 lb/s (794 kg/s)である。圧縮比は30.4でバイパス比は5.15である。静止時の推力は59,000 lbf (262 kN)である。-80Aに比べると、高圧圧縮機に特設ステージが1段、低圧タービンには第5段目が追加されている。
CF6-80C2は現在、ボーイング747やMD-11の様なワイドボディ機に搭載されている。CF6-80C2はエアバスA300、A310、ボーイング767向けにETOPS-180の認可を受けている。また、アメリカ空軍のC-5M スーパーギャラクシー、航空自衛隊のC-2[10]にも搭載されている。
CF6-80E1
CF6-80E1は、エアバスA330用に特別に開発された。推力は67,500–72,000 lbf (300–320 kN)である。CF6-80E1A2のファン径は96 in (2.44 m)である。空気流量は1,925 lb/s (873.2 kg/s)で圧縮比は32.6、バイパス比は5.3である。
他の派生型
産業用と船舶用に開発されたCF6-80C2は、LM6000 シリーズと称し、高速船舶や艦船に搭載される。 LM2500とLM5000は圧縮器の端から軸出力を取り出している。LM6000は低圧圧縮器をCF6-50から流用している。
CF6-32
CF6-32は、ボーイング757向けにCF6-80の出力を減らしたものである。実際には採用されなかった。
比較
仕様 | CF6-6 | CF6-50 | CF6-80A | CF6-80C2 | CF6-80E1 |
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ファン/圧縮機の段数 | ファン1段/低圧1段/高圧16段 | ファン1段/低圧3段/高圧14段 | ファン1段/低圧3段/高圧14段 | ファン1段/低圧4段/高圧14段 | ファン1段/低圧3段/高圧14段 |
低圧タービン/ 高圧タービン段数 |
5/2 | 4/2 | 4/2 | 5/2 | 5/2 |
最大直径(インチ) | 105 | 105 | 105 | 106 | 114 |
全長(インチ) | 188 | 183 | 167 | 168 | 168 |
乾燥重量(lbs) | 8,176-8,966 | 8,966-9,047 | 8,760-8,776 | 9,480-9,860 | 11,225 |
搭載機 | DC-10-10 | エアバスA300B DC-10-15/-30 KC-10 ボーイング747-200 747-300 E-4 YC-14 |
エアバスA310-200 ボーイング767-200 |
エアバスA300-600/R/F A310-200/-300 ボーイング767-200/200ER 767-300/-300ER 767-400ER E-767/KC-767 747-300 747-400/-400ER MD-11 C-5M スーパーギャラクシー 川崎 C-2 |
エアバスA330-200/-300 A330 MRTT |
最大出力時における 燃料消費率 |
0.35 | 0.368-0.385 | 0.355-0.357 | 0.307-0.344 | 0.332-0.345 |
海面高度での 最大出力(lbf) |
41,500 | 51,000-54,000 | 48,000-50,000 | 52,500-63,500 | 67,500-72,000 |
最大出力時における 総圧縮比 |
25-25.5 | 29.2-31.1 | 27.3-28.4 | 27.1-31.8 | 32.4-34.8 |
バイパス比 | 5.76-5.92/5.89 | 4.24-4.4 | 4.59-4.66 | 5-5.31 | 5-5.1 |
採用機
- TF39
- CF6-6
- CF6-50
- CF6-45
- CF6-80
- ボーイング747
- ボーイング 767
- ロッキード C-5M Super Galaxy
- マクドネル・ダグラス MD-11
- マクドネル・ダグラス MD-12(実現せず)
- エアバスA300-600
- エアバスA310
- エアバスA330
- 川崎 C-2
出典
- ^ General Electric - CF6 history
- ^ General Electric - Model TF39
- ^ Report on aircraft C-FTCA 6 September 1997 engine failure Aviation Safety Network
- ^ Report on aircraft PP-VNN 7 June 2000 engine failure Aviation Safety Network
- ^ Report on aircraft ZK-NBC 8 December 2002 engine failure Aviation Safety Network
- ^ Report on aircraft N654US 22 September 2000 engine failure Aviation Safety Network
- ^ Report on aircraft N330AA 2 June 2006 engine failure Aviation Safety Network
- ^ N330AA photos airliners.net
- ^ NTSB wants at-risk GE CF6 engines removed Flight International, 2006年9月5日
- ^ [1]航空自衛隊 主要装備 C-2
- ^ “The GE CF6 family”. 26-02-2010閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。
外部リンク
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