シロダモ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/07 06:36 UTC 版)
シロダモ | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]()
1. 枝葉
|
|||||||||||||||||||||
保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
|||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||
Neolitsea sericea (Blume) Koidz. (1929)[2][3] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
シロダモ(白だも[5])、オオシマダモ[2]、シロタブ[6]、マカゴ(真籠)[7]、アブラキ(油木)[8]、ウラジロ(裏白)[9]、ハナガ(葉長)[10]、タマガラ[11] | |||||||||||||||||||||
下位分類 | |||||||||||||||||||||
シロダモ(白だも、学名: Neolitsea sericea)は、クスノキ科シロダモ属に分類される常緑高木の1種である。若葉は帯白色から黄褐色の毛で覆われ、下垂する。成葉の表面は濃緑色で光沢があり、裏面はロウ質に覆われて粉白色(図1)。雌雄異株(雌花と雄花が異なる個体につく)であり、小さな黄白色の花が密集して秋に咲く。果実は赤色の液果。本州(宮城・山形県以南)から南西諸島、台湾、朝鮮半島、中国南部に分布し、暖地の森林に生育する。「シロダモ」の名は、葉の裏が白いタモ(クスノキ科の樹木)の意味とされる[12]。
特徴
常緑広葉樹の小高木から高木であり、樹高は5–15メートル (m) になる[5][6][13][12](図2a)。樹皮は緑色を帯びた紫褐色から暗褐色、平滑、小さな皮目が散生する[5][6](図2b)。小枝は緑色、黄褐色の絹毛が密生するが、のちに無毛[5][6][14]。冬芽のうち葉芽は長楕円形で先端はとがり、花芽が球形、芽鱗に光沢があって黄褐色の毛がある[5][13][6]。
葉は互生、枝先に集まってつく[15][6]。葉柄は長さ2–3センチメートル (cm)、黄褐色の絹毛が密生するが、のちに無毛[6][14]。葉身は長楕円形から卵状長楕円形、8–18 × 4–8 cm、先端は尖り、全縁、3行脈が目立ち、側脈は4–5対、表面は無毛で光沢があり、裏面は絹毛が多少残りロウ質で覆われて粉白色[15][6][13][14](図1, 3, 4b)。葉をちぎるとわずかに芳香がある[16]。若葉は垂れ下がり、帯白色から黄褐色の絹毛で覆われている[15][6][13](図3)。
花期は3–4月または9–11月(日本では秋)、雌雄異株[15][6][14][17]。花は小さく(雄花の方がやや大きい)、淡黄色、散形花序を形成し、葉腋につく[15][6][13](図4)。総苞片は数個、広楕円形、黄褐色の毛があ理、花柄には黄色い長毛が密生する[6][13][14]。花被片は4枚、広卵形、背面に毛があり、雄花では平開、雌花では立ち上がる[6][13]。雄花には雄しべが6–8個、3–4輪で内側の2個の基部には腺体があり、花糸は長く突出、葯は4室、中央に不稔の雌しべがある[6][13][14][12](図4a)。雌花には棒状の仮雄しべが6個と雌しべが1個(白い柱頭が目立つ)ある[6][13](図4b)。
果期は翌年の1–2月または10–11月、果実が赤色に熟し、日本では秋であり花と同時に鑑賞できる[15][6][5][14][12][17]。果実は液果、楕円状球形、長さ12–15ミリメートル (mm)、果柄は長さ 7–10 mm、緑色[6][13]。種子は球形[6]。
分布
本州の山形県と宮城県以西、四国、九州、南西諸島から台湾、朝鮮半島南部、中国東南部に分布する[15][5][6][13][3]。山地や低地の比較的湿潤な森林に生育し、常緑広葉樹としては耐寒性が強い[15][6][14]。
保全状況評価
シロダモは、IUCNレッドリストカテゴリーでは低危険種 (LC) に指定されている[1]。日本では、秋田県と長野県で絶滅危惧I類とされている[18]。
種内分類群(下記参照)であるダイトウシロダモは、日本の環境省では絶滅危惧IB類 (EN) に、沖縄県では準絶滅危惧に指定されている[19]。また、キンショクダモは、鹿児島県で準絶滅危惧に指定されている[20]。
人間との関わり
庭木や防風林として植栽されるほか、器具材としても利用される[15][6]。種子から得られた油はツヅ油やオダクサ油とよばれ、シラミ防除に利用されたり、除虫用に水田にまかれたり、灯火用の油、石鹸や蝋燭の材料とされていた[15][6][12][21]。
下位分類
以下の種内分類群が認められることがある。
- ダイトウシロダモ Neolitsea sericea var. argentea Hatus. ex H.Ohba (2006)[3][22]
- 葉裏の毛が銀灰色で赤みがない[13]。果実は倒卵形、基準変種よりも大きく長さ 15–18 mm[23]。大東諸島に分布[13]。
- キンショクダモ(キンモウダモ)Neolitsea sericea var. aurata (Hayata) Hatus. (1969)[24]
- 葉裏の黄褐色の毛が、遅くまで残る[13]。花期は春ともされるが[13][16]、標本調査からはこの形質については疑問視されている[25]。伊豆諸島(利島)、小笠原諸島(これについては疑問視されている[25])、九州西部(福江島、甑島)、トカラ列島以南の南西諸島、台湾(蘭嶼、緑島)に分布[13]。
- キミノシロダモ Neolitsea sericea f. xanthocarpa (Nakai) Okuyama (1955)[3]
- 果実が黄色に熟す[26]。
脚注
出典
- ^ a b de Kok, R. (2021年). “Neolitsea sericea”. The IUCN Red List of Threatened Species 2020. IUCN. 2024年2月8日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Neolitsea sericea (Blume) Koidz. シロダモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年11月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q “Neolitsea sericea”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年2月8日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Neolitsea ohbana Koidz. シロダモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月12日閲覧。
- ^ a b c d e f g 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、235頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 太田和夫 (2000). “シロダモ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. pp. 450–451. ISBN 4-635-07003-4
- ^ 「真籠」『動植物名よみかた辞典 普及版』 。コトバンクより2025年2月10日閲覧。
- ^ 「油木」『動植物名よみかた辞典 普及版』 。コトバンクより2025年2月10日閲覧。
- ^ 「裏白」『動植物名よみかた辞典 普及版』 。コトバンクより2025年2月10日閲覧。
- ^ 「葉長」『動植物名よみかた辞典 普及版』 。コトバンクより2025年2月10日閲覧。
- ^ a b 「白だも」『精選版 日本国語大辞典』 。コトバンクより2025年2月10日閲覧。
- ^ a b c d e 緒方健 (1997). “ハマビワ”. 週刊朝日百科 植物の世界 9. pp. 71–72. ISBN 9784023800106
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 米倉浩司 (2015). “シロダモ属”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 87–88. ISBN 978-4582535310
- ^ a b c d e f g h Flora of China Editorial Committee. “Neolitsea sericea”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2025年2月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、243頁。 ISBN 4-522-21557-6。
- ^ a b 林将之 (2020). “シロダモ”. 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類 増補改訂版. 山と渓谷社. p. 114. ISBN 978-4635070447
- ^ a b “Neolitsea sericea (Blume) Koidz.”. Pl@ntNet. 2025年2月20日閲覧。
- ^ “シロダモ”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2025年2月8日閲覧。
- ^ “ダイトウシロダモ”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2025年2月8日閲覧。
- ^ “キンショクダモ”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2025年2月8日閲覧。
- ^ “シロダモ”. 植物データベース. 熊本大学薬学部薬用植物園. 2025年2月9日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ダイトウシロダモ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2025年2月9日閲覧。
- ^ 新里孝和・松村俊一・横田昌嗣・阿部篤志・仲宗根忠樹・城間盛男 (2018). “ダイトウシロダモ”. In 沖縄県文化環境部自然保護課編. 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物第3版(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-. 沖縄県. p. 162
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “キンショクダモ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2025年2月9日閲覧。
- ^ a b 須貝杏子, & 佐藤隆人 (2023). “標本観察によるシロダモ属のフェノロジー調査”. 小笠原研究年報 46: 17-23. CRID 1520296885749414272.
- ^ 尼川大録、長田武正『検索入門樹木 : 総合版』保育社、2011年(原著1988年)、31頁。 ISBN 978-4-586-31055-5。
外部リンク
- “Neolitsea sericea”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年2月8日閲覧。(英語)
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Neolitsea sericea (Blume) Koidz. シロダモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年11月23日閲覧。
- 波田善夫. “シロダモ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学生物地球学部. 2013年11月23日閲覧。
- “シロダモ”. 植物データベース. 熊本大学薬学部薬用植物園. 2025年2月9日閲覧。
固有名詞の分類
Weblioに収録されているすべての辞書からシロダモを検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- シロダモのページへのリンク