カルハロス - Carcharoth
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/27 15:00 UTC 版)
「巨狼」の記事における「カルハロス - Carcharoth」の解説
別名はアンファウグリア(Anfauglir)で、「渇きの顎」を意味する。 「赤顎」を名の意味にもつ、中つ国史上最大の巨狼。ヴァリノールの猟犬フアンの運命はモルゴスも聞き及んでおり、これに際して冥王は、自ら祖狼の血脈を引き継ぐ仔狼を選び出し、手ずから生き餌を与えて育てた。その結果モルゴスの地獄の炎と苦悶と飢えがその身に宿り、成長したカルハロスは、アングバンドの地下に収まらないほどに巨大化し、身の毛もよだつような強大な怪物と化した。そして、アングバンドの城塞の鉄壁の守護者として眠ることなく警護についた。如何なるものもその防御を通すことは敵わなかった。 その後シルマリルを手に入れるためベレンとルーシエンがアングバンドの城門に到着した際にカルハロスと対面する。二人はドラウグルインの毛皮とスリングウェシルの皮翼を使って化けていたが、ドラウグルインの訃報を耳にしていたために、疑念を抱いたカルハロスによって止まるよう命じられ地下要塞に入ることが叶わなかった。しかしその時、ルーシエンに流れる母メリアンから受け継いだマイアの血筋の力が発動し、カルハロスは眠りに落ちて侵入を許してしまう。だが二人が首尾よくシルマリルの一つを手に入れて逃走を図る時分、すでに怒れる門番は覚醒していた。憤怒の巨狼が侵入者たちの行く手をふさいだので、ベレンはヴァルダによって浄められたシルマリルから発せられる聖なる光が、不浄のものを退散させるであろうことに望みを賭け宝玉を怪物に見せつけた。しかし、カルハロスは怯むどころか今度は宝石の持つ魔の魅力に翻弄され、ベレンの右腕とシルマリルを一緒に喰ったのである。 すると、カルハロスの腹に入ったシルマリルは怪物を内側から焼き始め、カルハロスは凄まじい苦痛に苛まれた。その苦しみの余りとうとう狂ったこの巨狼は、恐ろしいほどに暴れ始め、アングバンドから移動しその足でベレリアンドを南下、道中の一帯を攻撃して回った。この怪物がおこした狂乱はアングバンドの滅亡以前にベレリアンドを襲ったあらゆる災難の中でも、最も恐ろしいものであったという。その後、シルマリルの力が加わったカルハロスはメリアンの魔法帯を突破しドリアスに至った。そしてこの脅威を排除するため狼狩りが編成されることとなった。狩りには時のシンゴル王自ら参加し、それに強弓のベレグ、武骨者マブルング、任務を終えたベレンとフアンという猛者らが加わった。捜索の果て、巨狼はエスガルドゥインの川辺で見つかった。ついにここに、カルハロスとフアンの運命付けられていたおそろしい死闘が繰り広げられることとなった。猟犬の吠える声にはオロメの角笛とヴァラールの怒りが、巨狼の咆哮にはモルゴスの憎悪と鋼鉄の歯よりも酷い悪意が込められていた。この闘いの最中、岩は裂けて崩れ落ち、エスガルドゥインの滝を埋めた。 死闘の果てに、カルハロスの毒牙によってフアンとシンゴル王の盾になったベレンが命を落としたが、同時に巨狼自身も宿敵の牙にかかり息絶えた。その後、マブルングの手により裂かれた怪物の腹の内部より、喰いちぎられたベレンの右腕とともにシルマリルが無事に取り出された。この時のカルハロスの体内はシルマリルによって殆どが焼却されていた。しかしマブルングが宝玉に触れようとすると、ベレンの手はもはや見えず、シルマリルだけがそのまま残った。 初期の設定ではカルハロスはその名をカルカラス(Karkaras、刃の牙の意)といい、彼が巨狼の祖であるとされていた。彼の外見は巨大な灰色狼であったとされる。
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