おなが‐がも〔をなが‐〕【尾長×鴨】
尾長鴨
オナガガモ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/14 08:12 UTC 版)
オナガガモ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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左オス、右メス
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Anas acuta Linnaeus, 1758 |
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和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
オナガガモ(尾長鴨) | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Northern Pintail |
オナガガモ(尾長鴨、学名:Anas acuta)は、カモ目カモ科カモ亜科マガモ属に分類される鳥類の一種である。北半球に広く分布する大型のカモで、名前通りオスの尾羽が長いのが特徴である。
分布
ユーラシア大陸の北部と北アメリカ北部の寒帯から亜寒帯にかけての地域で繁殖し、冬季はユーラシアおよび北アメリカの温帯から熱帯地域やアフリカ北部に渡り越冬する。カモ類の中ではマガモ、コガモ、ハシビロガモに並んで分布域が広い。アジア極東部で繁殖するものは、同じ個体が年によって日本などのアジア地域や北アメリカと異なった地域で越冬することが、足環を使った標識調査で確認されている。
日本では全国に冬鳥として多数渡来する。

形態
全長はオス61-75cm、メス51-57 cm。翼開長は80-95 cm。マガモよりもわずかに大きい。他のカモより比較的首と尾羽が長くスマートな体型をしている。オスの方が大きいのは、もともとオスの方が大きいのに加え、尾羽の中央2枚が10 cmほども細長く伸びることによる。
オス成鳥は頭部が黒褐色、首から胸、腹まで白色で、その境界では白い帯が首の側面から後頭部に切れこむ。体は黒い横しま模様が細かく走る。背中に蓑のような黒い肩羽があり、翼と尾も黒いが、腰に黄白色の太い帯が入る。また、くちばしは中央が黒くて側面が青灰色をしている。メスは頭部は褐色、その他の部分は黒褐色に淡褐色の縁取りがある羽毛に覆われ、全体的に黒褐色と淡褐色のまだら模様に見える。くちばしは全体が黒い。
なお非繁殖期のオスはメスによく似たエクリプスに変化するが、くちばし側面の青灰色が残るので区別できる。
その他メスが雄化した個体や、他のカモ類との雑種(同属のマガモ・コガモ・トモエガモ・ヒドリガモなどとの)もまれに記録される。
生態
越冬地では湖沼、河川、海岸などに生息する。群れを形成する。日本では、各地のハクチョウ渡来地において、ハクチョウ類の周囲に多数群がっているのが観察される。
食性は雑食性で、植物の種子や水草、貝類などを食べる。昼間は休息をとり、夜間に餌場に移動して採餌するが、餌付けされている地域では日中も活動する。ハクチョウ渡来地ではハクチョウの餌付けの際に殺到する様が見られる。また、北アメリカでは多数飛来するオナガガモに作物を食害されないように、ムギなど穀物の一部をわざと収穫せずに畑に残し、オナガガモに食べさせている。
繁殖形態は卵生。繁殖期は5-7月で、抱卵・育雛はメスが行う。
オスはコガモのような高い鳴き声の他「ピル、ピル」などいくつかの違った声で鳴く。メスの鳴き声はマガモのように「ガーガー」である。
人間との関係
食用
肉は食用になる。カモ類の中でも食味が良いことで有名で、『大和本草』ではマガモ、コガモ、本種の3種を美味な鴨として挙げている[2]。
世界的に重要な狩猟鳥獣の一つで、日本でも「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成十四年法律第八十八号、通称:鳥獣保護法)[3]で狩猟鳥獣に一つと定められている(リスト一覧は同法の施行規則第三条にあり[4])。狩猟を希望する場合は同法に従って狩猟免許を取得し都道府県の名簿に登載されれば、亜種も含めて冬季に決められた区域内と手法で狩猟ができる。なお、卵の採取は同法の第八条により[3]、鳥もち・釣り針・かすみ網などによる狩猟は同法の施行規則第十条により禁止されている。また、施行規則第十条により一日に捕獲できる上限はカモ類合計で5羽と定められている[4]。
種の保全状況評価
国際自然保護連合(IUCN)により、軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]。日本の高知県でレッドリストの危急種の指定を受けている[5]。
名前
標準和名は「オナガガモ」とされ、『日本鳥類目録』(1974)[6]や『世界鳥類和名辞典』(1986)[7]ではこの名前で掲載されている。江戸時代の博物図鑑『大和本草』には「尾長ガモ」として掲載されており、遅くともこの頃には使われていた[2]。
種小名 acutaは鋭いという意味。名前からどの部位を指しているのかは分からないが、和名と同じく尾の様子を指しているのではとされる。「鋭い尾」という意味にしたい場合は auticauda、acuticaudataなどとすべきで、実際にこれを使った名前が他の鳥で知られる。属名 Anasはラテン語でカモ類を表す[8]。
関連画像
脚注
- ^ a b BirdLife International. 2019. Anas acuta. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T22680301A153882797. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-3.RLTS.T22680301A153882797.en. Accessed on 05 May 2025.
- ^ a b 貝原篤信(1709)『大和本草 巻乃十五 巻乃十六』(国立国会図書館所蔵 請求記号:特1-2292イ)doi:10.11501/2557370(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ a b 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号) e-gov 法令検索. 2025年8月15日閲覧
- ^ a b 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則(平成十四年環境省令第二十八号) e-gov法令検索. 2025年8月15日閲覧
- ^ “狩猟鳥獣のモニタリングのあり方検討会”. 環境省. 2020年1月26日閲覧。
- ^ 日本鳥学会 編 (1974) 『日本鳥類目録(改訂第五版)』. 日本鳥学会. 学習研究社, 東京. doi:10.11501/12638160(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 山階芳麿(1986)『世界鳥類和名辞典』. 大学書林, 東京. doi:10.11501/12601719(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 内田清一郎, 島崎三郎 (1987) 『鳥類学名辞典―世界の鳥の属名・種名の解説/和名・英名/分布―』. 東京大学出版会, 東京. ISBN 4-13-061071-6 doi:10.11501/12601700(国立国会図書館デジタルコレクション)
参考文献
- 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年、126-7頁
- 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、109頁
関連項目
固有名詞の分類
- オナガガモのページへのリンク