アレスティング・フックの歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/09 15:21 UTC 版)
「アレスティング・フック」の記事における「アレスティング・フックの歴史」の解説
艦上機のアレスティング・フックは航空母艦側のアレスティング・ワイヤーと対になった装備であり、アレスティング・フックの歴史はそのままアレスティング・ワイヤーの歴史でもある。 アレスティング・フックの原型は、1911年1月18日にアメリカで行なわれた装甲巡洋艦「ペンシルベニア」への世界最初の着艦実験において既に、カーチス複葉機に装備されていた。「ペンシルベニア」には横索式のアレスティング・ワイヤーが張られ、カーチス複葉機にも横索用アレスティング・フックが装備された。適当なワイヤー制動装置がなかったためワイヤーは両端を砂袋に結び付けられて、フックが引っかかったワイヤーが砂袋を引きずる重量の抵抗で制止させた。この成果をもとにしてアメリカのその後の空母建造、そしてフランスが1927年に建造した空母「ベアルン」においては、現在のものにつながる横索式のアレスティング・ワイヤーが装備され、艦上機にも現在と同様の横索用アレスティング・フックが装備された。艦上機が連続して着艦してくる空母で実用的に使用できる制動装置を持った横索式アレスティング・ワイヤーを最初に装備したのは「ベアルン」と言われ、アメリカは空母への実用搭載では遅れを取った。 一方イギリスにおいては、当初横索式アレスティング・ワイヤーの制動装置実用化に懐疑的で、すぐ実用化できる方式として縦索式のアレスティング・ワイヤーが装備され、それにあわせ艦上機にも主脚のタイヤ間に櫛形に5本~10本のフックが並ぶ形状のアレスティング・フックが装備されていた。縦索式のアレスティング・ワイヤーは現在のようにアレスティング・フックを直角に引っ掛けて制動させるものではなく、百本ほどの進行方向と平行のワイヤーと機体側フックとの間に生じる摩擦によって速度を減じるものであった。世界で最初に空母甲板にアレスティング・ワイヤーを装備したのは、このイギリスであった。しかしこの縦索式は制動能力に著しく劣り、横滑りした機体が甲板から転落する事故なども多発したため、一時イギリス海軍は制動装置の使用禁止を命じるほどであった。「ベアルン」の成功を知って横索式アレスティング・ワイヤーの制動装置の開発を行い、1929年から「フューリアス」に横索式を装備して実験を開始、結果が良好であったため空母を建造していた諸国の中では最後となる1931年以降順次イギリス空母も横索式アレスティング・ワイヤーを装備して、艦上機にも現在と同形態のアレスティング・フックが装備されることとなった。 日本は当初、空母建造の手本をイギリスに求めていたため、「鳳翔」などごく初期の空母にはイギリスと同様の縦索式アレスティング・ワイヤーが装備され、艦上機にも縦索式用の櫛形アレスティング・フックが装備されていた。しかし当然のことながら制動能力が悪かったこともイギリス同様であったため、1930年にフランスよりフュー式横索制動装置を輸入して「加賀」に横索式アレスティング・ワイヤーを装備して実験を行うとともに、同装置を海軍及び萱場四郎などで研究して制動装置の国産化を図った。1931年には萱場式国産横索制動装置が完成し赤城に横索式アレスティング・ワイヤーを装備、その後も改良を重ね以後すべての空母は横索式アレスティング・ワイヤーを、艦上機は横索用アレスティング・フックを、装備することとなった。 こうして第二次世界大戦開戦時には、世界の空母と艦上機はすべて、現在と同様の横索式アレスティング・ワイヤーと対応アレスティング・フックを持ち合わせていた。 ウィキメディア・コモンズには、アレスティング・フックに関連するメディアがあります。
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