アフィン変換の性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/07 02:11 UTC 版)
アフィン変換が可逆であるとき、正則アフィン変換という。アフィン変換が正則となるのは、線型変換部分 A が正則であるときであり、そのときに限る。有限次元の場合、拡大係数行列による表現をもちいれば、逆変換は ( A − 1 − A − 1 b 0 , … , 0 1 ) {\displaystyle {\begin{pmatrix}A^{-1}&-A^{-1}b\\0,\ldots ,0&1\end{pmatrix}}} で与えられる。正則アフィン変換の全体はアフィン変換群を成す。n-次元空間上のアフィン変換群 affn は、n-次一般線型群 GLn を部分群として含み、それ自身は (n+1)-次一般線型群 GLn+1 の部分群を成す。 相似変換の全体は直交変換のスカラー倍で表される変換全体の成すアフィン変換群の部分群である。アフィン変換の線型変換部分 A の行列式の値が 1 または −1 であることと、その変換で面積が保たれる(等積変換である)こととは同値であり、そのようなアフィン変換の全体もまた部分群を成す。両方の条件を組み合わせれば等距変換を得るが、そのような変換は線型変換部分 A が直交変換となるものであり、その全体は相似変換群と等積変換群双方の部分群を成す。 これらの群はどれも、(線型変換部分 A の行列式が正であるがゆえに)向きを保つ変換からなる部分群をもつ。3-次元での等距変換群は剛体の運動(真の回転と純平行移動)全体の成す群である。 任意の行列 A について以下の条件は互いに同値である。 A − I が可逆行列(I は単位行列)。 A は 1 を固有値に持たない。 任意のベクトル b に対して、アフィン変換 Ax + b はちょうど一つの不動点を持つ。 適当な b を選んで、アフィン変換 Ax + b がちょうど一つの不動点をもつようにすることができる。 線型変換部分が A であるようなアフィン変換は、適当な点を原点と見て線型変換として書くことができる。 もしアフィン変換が不動点を持てば、それを原点とみなすことにより、アフィン変換を線型変換に簡約化することができ、変換の分類と理解の助けとすることができる。たとえば、変換をある軸に関するある角の回転として記述することは、変換を回転と平行移動の組み合わせとして記述することに比べれば、全体での振舞いを把握するのは容易である。しかしこれは対象とするものと文脈に依存する。「物体」に対する変換を記述するのであれば、離れたところにある点に関する単一の回転として記述するよりも、適当な平行移動を組み合わせて物体の中心を通る軸に関する回転として記述するほうが意味のある場合も多い。たとえば、「200m 北へ行き、反時計回りに 90° 回転する」というほうが、同じ意味の「141m 北東にある点を中心に反時計回りに 90° 回転する」というよりも判りやすい。 不動点を持たない(したがって A が 1 を固有値に持つ)平面上のアフィン変換は以下のいずれかである。 純平行移動。 ある方向への直線に関して(必ずしも直交しない)別の与えられた方向への拡大縮小と、拡縮方向へは純でない平行移動との組合せ。スケール因子は別の固有値で、一般化された意味での拡大縮小はスケール因子が 0 である場合(射影)や負である場合(鏡映や映進など)を含む。 剪断と剪断方向へは純でない平行移動との組み合わせ(固有値は 1 のみで、対数的重複度は 2 だが幾何的重複度は 1)。
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