ひからびた胎児とは? わかりやすく解説

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ひからびたたいじ【干からびた胎児】

読み方:ひからびたたいじ

原題、(フランス)Embryons desséchés》サティピアノ曲。全3曲。1913年作曲変わった題名多くみられるサティ作品中でも、特に奇抜な題名知られる各曲の題にある胎児とは、いずれもナマコなどの海生生物幼生や卵を指す。胎児の干物


サティ:ひからびた胎児

英語表記/番号出版情報
サティ:ひからびた胎児Embryons desseches作曲年1913年  出版年1913年  初版出版地/出版社: Demets 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 なまこの胎児 "d'holothurie"2分00 No Image
2 無柄眼類の胎児 "d'edriophthalma2分30秒 No Image
3 柄眼類の胎児 "de podophthalma"1分30秒 No Image

作品解説

2007年10月 執筆者: 樋口 愛

この曲には三曲それぞれにサティ自身観察的な注釈序文と曲中に指摘指示つけられている。
第一曲、なまこの胎児序文では、<無知な人たちは、ナマコを“海のきゅうり”と呼ぶ。ナマコは石の上や岩場によじ登っている。この海の動物は、猫のように喉をゴロゴロ鳴らし、おまけに不気味な糸を吐き出す。ナマコは日の光が嫌いらしい。サン・マロの入り江で、私は一匹のナマコを観察した。>とある。曲中の詩抄には「朝の外出 降っている。太陽隠れている。かなり寒い、いいぞ。かすかなゴロゴロ・・・、なんて素晴しい岩だ。最適だ。(この間に“歯痛で悩むナイチンゲールのように”と演奏者への指示がある。)夕暮れ帰宅降っている。太陽戻ってなければ、かなり寒い。あれは凄くきれいな岩だった。粘りつく岩だった。笑わせるな、新芽くすぐったいから。タバコがない、幸いにも私は吸わないのだ。(“最善尽くして”)」と指示書かれてある。この詩抄からナマコの生活がうかがえる。曲は左手分散和音ナマコゴロゴロという心の泣き声表しているようだ右手ナマコ岩場はりつきながらよっくりと這い動く様子旋律表したかったのか・・・。最後は完全和音ト長調)の和音18繰り返して締めくくられてる。
第二曲めの甲殻類胎児序文には<柄のない眼を持つ、眼が動かない甲殻類。フナムシやミジンコなど。生まれつき悲しい性質、気質をもち、断崖などにあいた横穴などに住み、世間とのつながりをもたず、こもっている。>とある。曲中の詩抄は「彼らはみな集まった。何と陰気なのだろうと一族の父が発言する。みなが泣き始める。(ここのフレーズで、サティシューベルト有名なマズルカからの引用と書いている。)哀れな生き物たち。彼はなんとうまく話したことだろう。大きな呻き声。」で終わる。曲は全体ピアニッシモ書かれており、重苦しい和音アルペジオではじまる。じめじめとした印象感じる。中間部泣き始め部分では、サティ自身シューベルト有名なマズルカからの引用と書いているが、この曲は実在しないショパン葬送ソナタパロディである。
第3曲めの柄眼類の胎児序文には<動く柄に眼がついている甲殻類。器用で疲れを知らない猟師のようだ。どこの海でも見られる。この柄眼類の身は風味の良い食物である。>とある。甲殻類とは、エビカニフジツボなど。狩り様子である。「獲物ねらって上がれ獲物惑わせろ」と書かれているカニの横這いのような細やかな速い動きが3連音から始まり、短い間にクレッシェンドフォルテにまで持っていっている。これにより狩り緊迫感あたえている。中間部レント獲物惑わすための角笛表現している。そしてまた細やかな活動的な音型になり、最後作曲者である自身強制的な終止仕方第一曲め同様に、完全和音ヘ長調)の和音18繰り返されるパロディ精神満ちた作品である。


胎児の干物

(ひからびた胎児 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/02 22:40 UTC 版)

表紙。

胎児の干物』(たいじのひもの、Embryons desséchés)は、エリック・サティ1913年に発表した全3曲からなるピアノ曲。『干からびた胎児』と表記される場合もある。

概要

作品に奇抜なタイトルを冠することの好きだったサティらしい、ユーモア溢れるものとなっており、サティの他の作品と同様に、楽譜の随所に様々な指示が記され、パロディ精神に満ちている。

なお、各曲の標題からも推測されるように、ここでの "Embryons" とは、海生生物の卵や幼生の意味と考えられ、「胎児」という訳は適切ではない。かつて『はららごの干物』という訳が与えられたこともある。

構成

第2曲『甲殻類の胎児』の一部分
  • 第1曲「ナマコの胎児」d'Holothurie
    冒頭に「わたしはサンマロ湾ナマコを観察した…」という序文。「歯の痛いナイチンゲールのように」という有名な指示がある。
  • 第2曲「甲殻類の胎児」d'Edriophthalma
    重苦しく開始され、曲全体がショパンの有名な「葬送行進曲」のパロディとなっているが、サティ自身はこの曲の中間部の譜面上に「シューベルトの有名なマズルカから」の引用であるとコメントしている(なお、シューベルトの曲にマズルカはない)。『無柄眼類の胎児』とも訳されることがある。
  • 第3曲「柄眼類の胎児」de Podophthalma
    中間部で狩りの角笛が響く。最後は完全終止の和音が18回繰り返されたあげく、「作曲者による強制的な終止形」(というコメント)で終わる。

編曲

1970年に作曲家・指揮者のフリードリヒ・ツェルハが「胎児の干物」を室内オーケストラ用に編曲し、自身の楽団「Die Reihe」を指揮して録音した。

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