その他の推進・擁護する主張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 09:17 UTC 版)
「かけ算の順序問題」の記事における「その他の推進・擁護する主張」の解説
また、「かけ算の順序が逆になっているのは、かけ算の意味を理解していないからであり、かけ算の意味を理解していないと、わり算を理解できない。」などとして、「かけ算の正しい順序」の正しさを主張したりする[要出典]。これは、以下のような論法である。 ただ単に「わり算はかけ算の逆算だ」と指導するだけでは、じゅうぶんな理解を得られない。 なぜならば、わり算には、「12個のミカンを3人で分けると、1人何個もらえるか」(等分除)というパターンと「12個のミカンを3個ずつ分けると、ミカンをもらえるのは何人か」(包含除)というパターンがある。 同じわり算とよばれているものなのに出題パターンが2つあるので、ただ単に「わり算はかけ算の逆算だ」と指導するだけでは、じゅうぶんな理解を得られない。 それゆえ、かけ算の学習のときに、何個でひとかたまりになっているか・かたまりがいくつあるかを意識して、問題文の読み取りをさせる必要がある。 このように、「かけ算の順序に意味をもたせることによって、読み取りが正しくできているか判断できる。」という考えにもとづいて、「問題文の読み取りをしてから立式するように指導しないとただ計算ができるだけで応用問題に対応できなくなる。」「わり算を理解できなくなる。」などという主張がなされ、かけ算の順序にこだわった指導が展開されている[要出典]。 前国学院大学栃木短期大学の正木孝昌は、問題の答えを求めるには,どちらの順序でもどちらでもいいにもかかわらず、「式には,その情景を表現するという機能がある。その機能を大切にするためには」特定の順序で書かなければならないと主張した。 筑波大学附属小学校算数研究部の中心メンバーの田中博史は、意味づけのためにかけ算の式の数値に順序性を求めるのが当たり前だという考えを示した。また、割り算の初期指導まで等分除、包含除の理解の際に順序が決まっているほうが児童にもわかりやすいと主張した。 さらに、田中博史は、 「船が5そうあります。1そうに4人ずつ乗ることにします。」このような問題文になっていると子どもたちは必ず式を間違えますよね。「5 × 4」と書きます。今まで文の中に出てきた順番に数を使って式を書くだけで、ずっと丸をもらえていた子たちは、必ずこういう問題で引っかかります。ところが、この前2年生の子に聞いてびっくりしたことなのですが、「そろそろ式は反対に書かなきゃいけないころだ」と言うんです(笑)。「何で?」と聞くと、「プリントは、後の方になるとそういうふうにしないとバツになることが多い」と言うのです。そういえばそうですよね。まとめのテストの文章題の終わりは、必ず式が逆になる場合の問題が多いのです。まあ、統計的にみる力は素晴らしいものがあるかもしれませんが(笑)、それではやはり意味がありません。 そこで、この文の後に「何人乗ることができますか」と聞くのを一度やめて、絵にしてみようと指示をします。絵にすることでイメージ化させるのです。文章題は読んだら絵にさせます。絵にするところが考えるところです。正しく絵が描けたら、文章を読み取っていることになります。読み取った絵を見て式をつくるところは、教えていいと思います。「この場面を、このような式に書くんだよ。」と教えます。算数の式は外国語と一緒で、子どもにとっては新しい言葉ですから、教えなければいけません。 — 田中博史、東洋館出版社 プレミアム講座ライブ 田中博史の算数授業のつくり方 p62 と述べ、文章題の内容を正しく絵に描ければ読み取りができていると判断できるが、それだけでは不十分で「かけ算の正しい順序」をまもらないのは間違いであるとした。その理由として、「算数の式は外国語と一緒で、子どもにとっては新しい言葉ですから、教えなければいけません。」と述べ、「文章題の内容を式に翻訳する」という考え方を支持した。 そのうえで、「抽象化」については、以下のような見解を示した。 「子どもが大作の絵を描き、いつまでたっても抽象化しません」と言うから、「本当にたくさん絵を描かせていますか」と私が聞き返したところ、それほどたくさんは描かせていないのです。文章題を読んでは絵に描く。たくさん描かせる。それだけでいいんです。式や、答えを求めさせないで、お話を読んだら絵に描くことをいっぱいやらせると、子どもはそのうちに飽きてきます。 — 田中博史、東洋館出版社 プレミアム講座ライブ 田中博史の算数授業のつくり方 p62 絵を描くことに飽きてきた子どもは、大人に指示されなくても、文章題の内容を表わす簡略化した図を描くようになり、抽象化して考えるようになるという。しかし、 このように描いたのに、もし式を「5 × 4」と書いたとすると、この子は読み取りができないのではなくて、式の意味を間違えて覚えているだけとなります。治療するところが変わりますよね。 式を「5 × 4」と書いた子どもに「ちゃんと文章を読んでごらん」といくら指導してもだめです。この子は逆に覚えているわけですから。絵が図にできたら、その後で算数の言葉に表し直して「4 × 5」と書くんだよと、ここは確認していいところです。「こういう絵のことを4 × 5と言うんだよ」と教えるのです。 — 田中博史、東洋館出版社 プレミアム講座ライブ 田中博史の算数授業のつくり方 p62 として、かけ算の式には具体的な状況を表わす意味があるので正しい順序があるという考えを示し、正しい順序に従わない子どもは治療しなければならないと主張した。 ディポール大学教育学部の高橋昭彦は、かけ算の式において特定の順序のみが正しいという考えを前提に、どちらでもよいと考える先生・学生が多いアメリカの教育レベルを低く評価する考えを示した。
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