その他の推測される源泉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 15:29 UTC 版)
「山椒魚 (小説)」の記事における「その他の推測される源泉」の解説
前述のように井伏自身は「山椒魚」の着想の元としてチェーホフの「賭」を挙げているが、「賭」と「山椒魚」はそれほど似ていないとして、別の作品を「山椒魚」の源泉として推定する意見もある。ロシアの日本文学者グリゴリ・チハルティシヴィリ(グリゴーリイ・チハルチシビリ)は、井伏の「山椒魚」が19世紀ロシアの作家サルティコフ・シチェドリンの短編「賢いカマツカ」とそっくりだという指摘を行っている。「賢いカマツカ」は厭世的なカマツカ(コイ科の小魚)が世間を逃れて水中のねぐらに閉じこもる話である。シチェドリンは日本ではさほど知られている作家ではないが、井伏が学生だった当時ロシア文学は流行の最先端であり、先述の片上伸の講義などで井伏が彼の作品を知る機会はあったと考えられる。井伏が尊敬していた森鷗外も「観潮楼偶記」でシチェドリンを紹介している。猪瀬直樹は、井伏がことあるごとにチェーホフの「賭」に言及していたのは「賢いカマツカ」をもとにして書いた事実をはぐらかす意図があったのだろうとしている。 チハルチシビリはまた、「山椒魚」の源泉となっている可能性のある作品としてチェーホフの「敵」という短編を挙げている。「敵」はそれぞれ地主と医師である二人の男が互いに憎みあい、相手を非難し続けあう話で、修正前の「山椒魚」のような和解に至る場面はない。
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