『風と共に去りぬ』
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「ヴィヴィアン・リー」の記事における「『風と共に去りぬ』」の解説
1930年代終わりごろのハリウッドは、デヴィッド・O・セルズニックが製作を決定していた映画『風と共に去りぬ』の主役スカーレット・オハラを演じる女優候補を広く募集していた。リーのアメリカ側での代理人は、セルズニックの兄マイロン (en:Myron Selznick) が経営する代理店のロンドン支社だった。1938年2月にリーは、自身がスカーレット役に選ばれる可能性があるかどうかをセルズニックに打診している。セルズニックはリーが出演した『無敵艦隊』と『響け凱歌』を同月に確認し、リーがスカーレット役に相応しいかも知れないと考えたが、「あまりにイギリス的」だったと感じたため、リーにはスカーレット役は無理だろうと判断した。しかしながらリーは、当時アメリカで映画撮影を行っていたオリヴィエを頼ってロサンゼルスへと向かい、自分こそがスカーレットだということをセルズニックに納得させようとした。リーと面会した、セルズニックの兄でオリヴィエの代理人も務めていたマイロン・セルズニックは、弟がスカーレット役の女優に求めている資質をリーが持っているのではないかという印象を受けた。ハリウッドに伝わる伝説に、スカーレット役不在のままアトランタ炎上シーンを撮影していた現場にマイロンがリーとオリヴィエを連れて行き、セルズニックにリーを紹介して「よう天才、お前のスカーレットに会わせてやるぜ」と嘯いたというものがある。いずれにせよ、セルズニックはスクリーンテストを行い、リーがカメラの前で台本を読んで見せた。リーに満足したセルズニックは妻に宛てて「彼女(リー)がスカーレット役の大穴だ。見た目も全く申し分ない。まだ誰にも言ってない、お前だけだ。(スカーレット役は)ポーレット・ゴダード、ジーン・アーサー、ジョーン・ベネット、そしてヴィヴィアン・リーに絞られた」という手紙を書いている。『風と共に去りぬ』の監督を当初任されていたジョージ・キューカーもスカーレット役にリーを抜擢することに賛同し、リーのことを「信じられないくらいに野生的だ」と評価した。そしてリーがスカーレットを演じることが正式に決定された。 『風と共に去りぬ』の撮影現場はリーにとって辛いものだった。監督のキューカーが更迭されて、代わりにヴィクター・フレミングが監督となったが、リーはフレミングとしょっちゅう仲違いを起こしていた。リーと、メラニー・ハミルトン役を演じるオリヴィア・デ・ハヴィランドは夜にこっそりと前監督のキューカーと会っており、毎週末にはキューカーから演技指導も受けていた。リーはレット・バトラー役のクラーク・ゲーブルとその妻の女優キャロル・ロンバード、デ・ハヴィランドと仲良くなっていったが、スカーレットが感情的になるシーンが多かったアシュレイ・ウィルクス役のレスリー・ハワードとは、撮影現場でも実際に激しく衝突していた。週七日間拘束されることもあったうえに撮影が夜中までかかることも珍しくなく、このような状況下でリーは疲労を重ねていった。リーはオリヴィエが恋しくなり、ニューヨークで仕事をしていたオリヴィエに長距離電話をかけて「あなた、あなた、もう演技にはうんざり!もうイヤ、イヤ、二度と映画になんか出たくない!」と愚痴をこぼしている。 2006年に出版されたオリヴィエの伝記で、『風と共に去りぬ』撮影中のリーの躁病じみた言動への苦情に対して、オリヴィア・デ・ハヴィランドがリーを弁護していたという記述がある。「ヴィヴィアンは非の打ち所がないプロフェッショナルで、『風と共に去りぬ』では完全に自己管理が出来ていました。ただし、あのときの彼女には二つの大きな悩みがあったのです。一つは(スカーレットという)きわめて難しい役を完璧に演じなければならないこと、そしてもう一つはニューヨークにいたラリー(ローレンス・オリヴィエの愛称)と離れ離れになっていたことです」とデ・ハヴィランドは語っている。 『風と共に去りぬ』は公開直後から注目され、主役のスカーレットを演じたリーは絶賛された。しかしながらリーは「私は映画スターではなく女優です。映画スター、そう映画スターなどというのは嘘だらけの暮らしでしょう。偽りの価値観と虚栄のための生き方です。(それに比べて)女優は人生すべてを費やすに値する仕事であり、いつだって素晴らしく重要な役割なのです」と語っている。『風と共に去りぬ』は作品賞をはじめ10部門でアカデミー賞を受賞し、リーも主演女優賞を受賞した。さらにリーはニューヨーク映画批評家協会賞の主演女優賞も受賞している。
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