《行ってください》の敬語
「行ってください」の敬語表現
「行ってください」は、「行っ」と「て」、「ください」の3要素に品詞分解できます。「行っ(行き)」は、カ行五段活用の動詞「行く」の連用形です。「目的地に向かって進む、移動する」といった意味。接続の助詞「て」と合わせることで、「行って」という促音便になります。「ください」は、動詞「くれる」の尊敬語である「くださる」の命令形です。「くださる」の本来の命令形は「くだされ」であり、「ください」は「くだされ」の音変化だとされています。また、「ください」は「くださいませ」の略だとする説もあります。動詞「ください」は、「クッキーを1枚下さい」や「おつりを下さい」といった形で相手に物などを請求する際に使用する表現です。しかし、動詞の連用形に「て」がついたものなどの後につく場合、「ください」は補助動詞になります。「行ってください」や「止めてください」、「待ってください」のように、相手に対して要望、懇願するという意味を持っています。よって、「行ってください」は(目的地に向かって)移動する、進むよう相手に要望する場合に用いる表現です。
「ください」は丁寧な表現であるものの、「行って」は動詞「行く」の促音便形です。よって、目上の相手に対して「行ってください」を用いると、失礼になってしまいます。「行って」の部分を「行く」の尊敬語におきかえることで、「行ってください」の敬語表現に変化します。「行く」の尊敬語の具体例として挙げられるのは、「おいでになる、いらっしゃる、お越しになる、行かれる」などです。「ください」と組み合わせると、「おいでください」や「いらっしゃってください」といった敬語表現になります。
「いらっしゃる」は、動詞「行く・来る・居る」の尊敬語です。基本的には「いらっしゃってください」と言いますが、「いらっしゃる」を略して「いらしてください」と言う場合もあります。
「行ってください」の敬語の最上級の表現
「おいでください」。名詞「御出で(おいで)」は、「行くこと・来ること・居ること」の尊敬語です。「出る」の尊敬語から転じて、「おいで」になっています。「おいで」のみでは命令形になってしまうものの、「ください」と合わせることで相手に対する敬意があらわれます。「おいでください」は敬意のこもった丁寧な表現であるため、取引先の上層部のような目上の相手に対しても使用することが可能です。「行ってください」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
日時を指定する場合は「〜時までにおいでください」、場所を指定する場合には「~までおいでください」とします。「恐れ入りますが」や「お手数ですが」「ご足労をおかけしますが」「差支えなければ」「よろしければ」といったクッション言葉を添えることも重要です。例文として、「差支えなければ、当日は14時までにおいでください」や「大変恐縮ですが、10月20日の14時に弊社までおいでください」などが挙げられます。「行ってください」を上司に伝える際の敬語表現
「おいでください」は、社長のような、特に身分が高い相手に対して用いる表現です。「11時に会議室に行ってください」と伝えたい場合は、「11時に会議室までおいでください」と言います。しかし、上司の中でも親しい間柄の相手には「いらっしゃってください」を使用することも可能です。「行ってください」の敬語での誤用表現・注意事項
「行ってください(いってください)」を、「おこなってください」と読むことも出来ます。「行う(おこなう)」は、「物事を実施する」という意味。「いってください」は「(目的地へ)移動することを要望する」際に使用するのに対し、「おこなってください」は「(何らかの)物事を実施することを要望する」際に用いる表現です。「行って」を「いって」と読むか、「おこなって」と読むかどうかは文脈から判断します。「おこなってください」は、「行なってください」と表記するのが一般的です。「行かれる」も、動詞「行く」に助動詞「れる」をつけた尊敬語の一つ。よって、「行かれてください」も「行ってください」の適切な敬語表現だと言えます。しかし、「行かれる」のように動詞に助動詞「れる、られる」をつけた表現は、「軽い敬意を表す尊敬語」だとされています。相手によっては「行かれてください」を使用すると失礼になってしまう可能性もあるため、注意が必要です。親しい先輩に「行かれてください」を用いることは可能ですが、敬語が重視される場で「行ってください」と伝える場合には「おいでください」などを使用します。
「行ってください」の敬語での言い換え表現
「行く」の尊敬語である「おいでになる」「いらっしゃる」「行かれる」「お越しになる」などには、基本的に言い換え表現はありません。しかし、外出する相手を見送る場合は、「いってらっしゃい」「いってらっしゃいませ」と言います。「いってらっしゃい」は、「行って」と「いらっしゃい」を組み合わせた、「無事に行って、戻ってきてください」という意味を持つ表現です。「ませ」は、助動詞「ます」の命令形。相手に対して「(丁寧な気持ちを込めて)依頼、要求、懇願する」際に使用します。- 《行ってください》の敬語のページへのリンク