《そちら》の敬語
「そちら」の敬語表現
「そちら」は、ビジネスシーンを始めとして、幅広い場面で使用できるとされている決まり語です。そのため、特に形を変えることなく、敬語を使用する場面で用いることが可能です。ただ、近くにいる第三者を指す場合「そちら」だけでは失礼に当たる恐れがあります。したがって、「そちらの方(かた)」という表現にした方が無難です。そして、「そちら」には、近くにいる人を指す以外にも、複数の使い道があります。二人称で「あなた」の代わりに使用したり、遠く離れた場所にいる人に対して、その場所や状況を指したりするといった使い道です。そのような場合は、そのまま「そちら」で問題はありません。「そちらの方」と表現するのは、三人称で会話に参加していない人に話を振る場合のみです。二人称では、「そちら」を使用するのが一般的な敬語です。さらに、近くにある商品や、方向などを指す際にも使用しますが、その場合も使用するのは「そちら」です。
「そちら」の敬語の最上級の表現
最上級の敬語表現で使用する場合も、基本的には「そちら」で問題はありません。ただ、三人称で第三者を指す場合、「そちらの方」という表現は、「そちら様」に変更した方が良いでしょう。ただ丁寧に人を指すだけの「そちらの方」よりも、「様」を付けた「そちら様」の方が、強い敬意を示せます。また、「あなた」の代わりに使用する「そちら」も、「そちら様」に置き換えることが可能です。さらに、「そちら様」とは別に、「貴殿」や「貴台」といった表現にもできます。あくまでも文章での使用に限定される上に、何度も使える言葉ではありませんが、強い敬意を示すことが可能です。「そちら」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「そちら」の代表的な敬語表現である「そちらの方」は、ビジネスメールや手紙では、送り先の相手とは別の人を指すために使用します。例文にすると「予定変更について、ご友人との連絡が取れないとのこと、承りました。そちらの方には、こちらからご連絡差し上げておきます」「追加でイベントに参加したいとおっしゃる方がいらっしゃると伺いました。そちらの方の連絡先をお教えいただけますでしょうか」といった形になります。「そちら様」を使用するのであれば、第三者を指す場合は「展示会には、お連れの方とご参加になることを確認しております。当日は、同じ時間にそちら様とご一緒にいらっしゃるということでよろしいでしょうか」という風に使用します。また、「打ち合わせの日程につきましては、そちら様のご都合の良い日をお選びいただいて構いません」といった形で、相手を指すこともできます。さらに、メールや手紙は文章なので、「貴台にご尽力いただいたおかげで、プロジェクトは順調に進んでおります」という風に、「貴殿」あるいは「貴台」の使用も可能です。
「そちら」を上司に伝える際の敬語表現
上司が遠くにいて、その場所を指すのであれば、「そちら」はそのまま使えます。また、上司が別のプロジェクトにいる時など、指す対象が上司を含めて複数人いる場合も「そちら」で問題ないです。ただ、二人称あるいは三人称での会話をして、上司個人を指す場合、名前を呼んだ方が良いです。もちろん、名前を知らない上司に対して、「そちら」を使用するのは問題ありません。しかし、名前を知っているにもかかわらず、「そちら」を使用すると、ほとんどの場合は失礼な印象になります。したがって、原則として上司個人を指す場合は、「そちら」は使用しないようにしましょう。「そちら」の敬語での誤用表現・注意事項
「そちら」の敬語表現では、敬意を強めようとして、余計な言葉を付け足してしまうという間違いが多いです。代表的なものは、遠く離れた相手がいる場所や、その場所での状況を指す際に、かしこまった形にしようとした時の、「そちらの方(ほう)」という表現です。「そちら」は漢字で表記すると、「其方」となります。その字からもわかるように、すでに「方」という意味合いは「そちら」に含まれています。「そちらの方」という表現は、「其方の方」という形になってしまい、不自然です。したがって、相手方を指す場合でも、間違えることなく、「そちら」を使用しましょう。また、状況に合っていない場合に、「そちら様」を使用しないように注意が必要です。「様」を付けると、強い敬意を示すことができます。しかし、原則として、ひとりの人を指すことしかできません。複数人を指す場合は、「そちらの方々」とします。「そちら様」だけでなく、「そちら様方」や「そちら様達」といった表現も使用しません。また、「そちら」はあくまでも代名詞の役割があるため、過剰な使用は良くありません。相手の名前がわかっているのであれば、無理に「そちら様」を使わず、「~様」という風に名前を使用した方が良いです。
「そちら」の敬語での言い換え表現
「そちら」は、相手の会社を指す場合は、「御社」あるいは「貴社」に置き換えることができます。「御社」は口頭、「貴社」は文章で使用する言葉です。どちらも、相手の会社を敬っている点は同じです。したがって、取引先など、相手の会社を敬う表現にするのであれば、「御社」または「貴社」を積極的に使用しましょう。ただ、「御社」と「貴社」を何度も繰り返すと、くどい表現になってしまいます。そのため、頻度が高い場合は、適度に「そちら」に置き換えると良いでしょう。また、その他にも、「貴会」や「貴協会」のように、会社以外を対象にした表現は数多くあります。- 《そちら》の敬語のページへのリンク