日本教職員組合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 16:17 UTC 版)
概説
日教組は、国立・公立・私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、大学、高等専門学校、専修学校、各種学校などの教職員で構成する組合と、教育関連団体スタッフによる組合を単位組織とする連合体組織であり、教職員の待遇改善、地位の向上、教職員定数の改善をはじめとする教育条件の整備などを主な目的として活動している利益団体である。現状では小学校、中学校、高等学校の教職員が組合員の大半を占めている。現存する日本の教職員組合の中で最も歴史が古く、規模も結成以来一貫して日本最大の教職員組合である[注 1]。日本国憲法や改正される前の教育基本法の精神を基本に、民主主義教育の推進と教職員の大同団結をめざすとしている[要出典]。
2007年の教育基本法改定、教員免許更新制導入に反対する運動など、教育課題に直接関係する活動のほか、政治的な活動も行っており[10]、入学式や卒業式で国旗掲揚及び国歌斉唱を求める文部科学省の指導[注 2]に対しては、様々な教職員に対する処分の実態などを背景にして「強制」であるとして批判的な立場をとる。
日教組の政治活動が大きな問題となった例としては、日教組系の山梨県教職員組合による政治献金問題や、教職員組合の政治活動問題などがある(詳細は下記の『教職員組合の政治活動への批判』などを参照)。
55年体制下では、他の総評系官公労と同じく、社会党を支持する有力労働組合の一つであったが、かつては日本共産党支持の教職員らも日教組に属し、共産党支持グループからなる反主流派が約3分の1の勢力を持っていた。しかし、1987年に総評が日本労働組合総連合会発足のために全日本労働総同盟と合流したため、共産党支持グループの大多数が1991年に日教組から離脱して、全日本教職員組合を発足させ、日教組内の反主流派はごく一部を残すのみとなった。日教組内の約半数弱を占めていた共産党系教職員らが離脱したことで、1991年に日教組の組織率は50%弱から2割一気に減って30%台となった[11]。
現状
かつて、日教組の組織の形態は法人格のない社団であり、そのことに起因する活動範囲、権利能力及び財産管理など(団体名義による契約締結及び口座開設並びに登記などができないこと)の問題を改善するために法人格取得への動きがあったが、難航していた。2021年時点では、法人格がある[12]。
かつては日本の学校教育に大きな影響力を持ち、文部省(現在の文部科学省)が教育行政によるトップダウン方式で均質かつ地域格差のない教育を指向するのに対し、現場の教員がボトムアップ方式で築く柔軟で人間的な教育を唱え、激しく対立した。その後、1994年(平成6年)に日本社会党委員長の村山富市を首班とする村山内閣(自社さ連立政権)が誕生した。そして、1995年(平成7年)、日本教職員組合は、文部省(当時)との協調路線(歴史的和解)へと方針転換を表明した。
組織内候補として日本民主教育政治連盟(日政連)に所属する議員を推薦して、国会に送り込んでおり、連合に所属する産別の中では、政治的影響力は大きいとされる。国会議員では衆議院議員に横光克彦・川内博史・本多平直・道下大樹、参議院議員には水岡俊一・那谷屋正義・斎藤嘉隆・鉢呂吉雄がいる。
2022年現在では立憲民主党支持が中心であるが、岩手県、大分県など社会民主党を軸に支持するところや、広島県のように新社会党を支援するところもある(大分県の例については大分県教職員組合を参照)。
組織
本部組織
- 大会
- 中央委員会
- 中央執行委員会
- 総務局(総務、財務)
- 組織局(組織、国際、広報)
- 高等学校・大学局
- 教育文化局(教育政策・文化・研究)
- 生活局(生活、賃金、法制)
- 専門部・対策委員会
- 幼稚園部
- 現業職員部
- 障害児教員部
- 養護教員部
- 実習教員部
- 事務職員部
- 栄養職員部
- 青年部
- 女性部
- 書記対策委員会
- 臨時採用教職員等対策委員会
- 学校図書館対策委員会
地方組織
- 都道府県の単位組合(詳しくは#加盟組合を参照)
- 地域ごとの単位組合
- 学校ごとの単位組合
- 地域ごとの単位組合
独立機関・所属機関
- 国民教育文化総合研究所(教育総研):シンクタンク
- 国立大学・公的機関交流センター(UIPセンター)
- 日本国公立大学高専教職員組合(日大教)
- 日本私立学校教職員組合(日私教)
組織率
公立小・中・高等学校における組織率及び組合員数は、文部省及び文部科学省発表による。単組数は直接的な下部組織のみ。
- 1958年(昭和33年):86.3%(調査開始時)
- 2003年(平成15年):30.4%、76単組、組合員数約31万8,000~33万人
- 2004年(平成16年):29.9%、76単組、組合員数約31~32万2,000人
- 2006年(平成18年):28.8%、76単組、組合員数約29万6,000人
- 2007年(平成19年):28.3%、76単組、組合員数約29万人
- 2017年(平成29年):22.9%、(調査なし)、組合員数約23.5万人[13]
都道府県で組織率に格差があり、山梨県、静岡県、愛知県、新潟県、福井県、三重県、兵庫県、大分県、北海道、大阪東部などで比較的高い組織率を保つ一方、栃木県、岐阜県、愛媛県など、ほぼゼロのところ、和歌山県のように、和歌山市に200~300人がほぼ集中しているところ、京都府のように、100人前後を組織するにとどまっているところもある。
新採用教職員に限った場合、その加入者数は約6,800人で、加入率は約19.2%(2017年10月1日現在)[13]である。
また、厚生労働省による「労働組合基礎調査」によれば、私立学校教員や大学教員、教員以外の学校職員を含んだ組織人員は約23万6,000人[14](2017年6月30日現在)である。
組合歌
- 日本教職員組合歌 作詞:今井広史、作曲:佐々木すぐる
正式な組合歌は「日本教職員組合歌」であるが、現在、集会などでよく歌われているものは、日教組が公募して「君が代」に代わる国歌として1951年に選ばれた「緑の山河」である。
注釈
- ^ 文部科学省の調査によれば、教職員組合加入者(教職員全体の半数弱)全体の中で日教組組合員の占める割合は約6割、新採用教職員の中で教職員組合に加入する者(新採用教職員全体の4分の1強)のうち日教組の占める割合は約8割である。
- ^ 文部省が根拠とする国歌国旗法は定義法であり、首相答弁でも強制はされないとされている
- ^ グランドプリンス新高輪は、自民党が党大会の会場にも利用している。2008年にも、1月17日に党大会を開催したばかりだった。この時も右翼団体の街宣車が会場にやって来たが、それを理由にプリンスホテルが自民党の利用を断ったことはない(もっとも、右翼団体が、日教組に対しては自民党より遙かに力を入れているという事情はある)。
- ^ 旅館業法は、伝染病や違法行為の恐れがある場合を除いて、ホテルは宿泊を拒否できないと定めている。
- ^ 例えば、「大分県教育委員会汚職事件」の直後であったからか、大分県が組織率が高い県であることとを結びつけて、勉強しない先生の子供でも教師になれるなどとも批判した。
- ^ 「発言として、はなはだ不適切。閣僚になられたら、されない種類の発言だ」と麻生太郎(時の内閣総理大臣)は述べた。[1] 朝日新聞2008年9月28日[リンク切れ]
- ^ 保守系雑誌の正論2008年9月号では日教組にメスを入れろとの、日教組に対する批判もある。その中で大分県は日教組の影響が強い県としている
出典
- ^ 令和5年労働組合基礎調査の概況 附表2 主要団体別労働組合員数の状況 厚生労働省 2023年12月20日
- ^ a b ““英語より韓国語、中国語教育を!” 子に自虐史観を植え付ける「日教組」集会レポート”. デイリー新潮. 2022年1月31日閲覧。
- ^ “社説(12/23):連合30年/真価問われる運動の進め方”. 河北新報オンラインニュース (2019年12月23日). 2022年1月31日閲覧。
- ^ “護憲の老舗、のれん守れるか 社民党、政党要件ぎりぎり:中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2022年1月31日閲覧。
- ^ “2007年統一地方選挙〜連合近畿ブロック推薦予定候補者一覧●連合大阪”. www.rengo-osaka.gr.jp. 2022年1月31日閲覧。
- ^ a b c “日教組の教研集会2年連続オンライン 今年は分科会も(産経新聞)”. Yahoo!ニュース. 2022年1月31日閲覧。
- ^ 『教職員団体への加入状況に関する調査結果について』(プレスリリース)文部科学省、2008年12月25日 。2010年6月17日閲覧。
- ^ EI教育インターナショナルの概要
- ^ Education International
- ^ a b c SAPIO2008年11月26日号[要ページ番号]
- ^ 「敗戦後遺症を乗り越えてGHQの占領、いまだ終わらず。 (扶桑社MOOK)」p57,森口朗の「日教組という病」から 2015年
- ^ “日本教職員組合の情報”. 法人番号公表サイト. 国税庁. 2021年1月24日閲覧。
- ^ a b “教職員団体への加入状況について”. 文部科学省. 2018年9月5日閲覧。
- ^ “平成29年労働組合基礎調査の概況 附表2”. 厚生労働省. 2018年9月5日閲覧。
- ^ 勤評・神奈川方式について 神奈川県高等学校教育会館・教育研究所
- ^ a b 『総評十年史 第5編 大闘争の展開』 旬報社デジタルライブラリー
- ^ 『小林 武』 - コトバンク
- ^ 「前夜から館内に潜む 消火液まいた右翼」『中國新聞』昭和46年7月22日夕刊 7面
- ^ 「日教組大会 前橋開催もこじれる」『朝日新聞』昭和48年(1973年)6月13日朝刊、13版、23面
- ^ 日本大百科全書(小学館) 大野喜実・川崎忠文
- ^ http://db.jil.go.jp/cgi-bin/jnk01?smode=dtldsp&detail=S19970609008
- ^ 『週刊労働ニュース』1980年5月19日号、同1980年9月3日号、同1981年5月25日号
- ^ 『週刊労働ニュース』1986年9月8日号、同1987年3月16日号、同1988年2月8日号など
- ^ 『週刊労働ニュース』1989年9月11日号
- ^ http://db.jil.go.jp/cgi-bin/jnk01?smode=dtldsp&detail=S19891218013
- ^ http://db.jil.go.jp/cgi-bin/jnk01?smode=dtldsp&detail=S19900305010
- ^ a b 1992年1月29日毎日新聞
- ^ 週刊新潮2009年9月3日号
- ^ 『迷走 日本の原点』櫻井良子 新潮社
- ^ 2007年7月1日、TBS「JNN報道特集」
- ^ “日教組委員長、政治活動の正当性強調”. 読売新聞. (2010年3月15日) 2010年3月15日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 読売新聞2008年2月3日
- ^ 『朝日新聞』2月2日、『毎日新聞』2月2日、『中日新聞』2月2日、『読売新聞』2月3日、『産經新聞』2月10日
- ^ 日教組ホテル利用拒絶に関する会長談話 日本弁護士連合会
- ^ 日教組・第57次教育研究全国集会(全体集会)中止の決定についての談話
- ^ 毎日新聞 2006年12月17日付記事より[要ページ番号]
- ^ 西村幸祐 (2010年3月9日). “【民主党を支援する日教組の暗部】善意の寄付でマネーロンダリングか”. 夕刊フジ (産経新聞社) 2010年3月11日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “日本教職員組合ホームページ 子供救援カンパの使途”. 日本教職員組合. (2009年6月3日) 2010年7月2日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2007年1月24日付 朝刊39面、『朝日新聞』2007年1月24日付 夕刊14面
- ^ “北海道教組から民主・小林議員側へ1000万円超の裏金か 札幌地検が捜査”. 産経新聞. (2010年2月15日) 2010年2月15日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “札幌地検、北教組幹部ら4人逮捕 政治規正法違反容疑”. 47NEWS. (2010年3月1日) 2010年3月1日閲覧。
- ^ “北教組幹部ら4人逮捕 札幌地検 選挙資金事件 規正法違反の疑い”. 北海道新聞. (2010年3月1日) 2010年3月3日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “北教組幹部ら4人逮捕 違法な選挙資金を提供容疑”. 朝日新聞. (2010年3月1日) 2022年12月30日閲覧。
- ^ “北教組幹部ら2人起訴 民主・小林氏陣営へ不正資金提供 小林氏「離党、辞職は考えていない」”. 日本経済新聞. (2010年3月22日) 2022年12月30日閲覧。
- ^ “北教組幹部に有罪判決 小林議員側への不正資金事件札幌地裁”. 日本経済新聞. (2010年6月14日) 2022年12月30日閲覧。
- ^ “元陣営経理担当の有罪確定 北教組事件”. 日本経済新聞. (2010年6月24日) 2022年12月30日閲覧。
- ^ “民主・小林千代美議員が辞職 北教祖違法献金事件で”. J-CASTニュース. (2010年6月17日) 2022年12月30日閲覧。
- ^ “北教組、違法献金事件で支部にかん口令”. 読売新聞. (2010年3月6日) 2010年3月7日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “東京教組が“病休指南”手当減額一覧”. 産経新聞. (2009年12月20日) 2010年5月1日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 【主張】中山国交相辞任 信頼失う言動くり返すな 産経新聞[リンク切れ]
- ^ 「水差された」自民議員怒り…中山国交相は辞任後も持論[リンク切れ]読売新聞2008年9月28日22時54分
- ^ 共同通信2008年9月27日
- ^ 9月29日10時19分時事通信配信[リンク切れ]
- ^ 「日教組強いと学力低い」中山説、調べてみれば相関なし 朝日新聞2008年9月27日[リンク切れ]
- ^ 組合と学力に関連性はあるか? 低学力地域は日教組票多く MSN産経ニュース2008年10月8日[リンク切れ]
- ^ Okumura's Blog 2008年10月11日 日教組票と学力 コメントでは産経の記者に対する批判も見られる2008年12月30日閲覧
- ^ 日敎組 (1967). 日敎組20年史,p66
- ^ 八木秀次 (2009). 正論 第450-453 号p192. 産經新聞社
- ^ “【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 日教組よ、まず「自己批判」せよ”. 産経新聞. (2008年10月21日)
- ^ 佐々淳行『連合赤軍「あさま山荘」事件』文藝春秋、1996年6月、181-183頁。ISBN 4163517502。
- ^ 佐々淳行 『危機管理宰相論』 文藝春秋 [要ページ番号]
- ^ 大野敏明 (1996年2月2日). “日教組の「自衛官の子いじめ」 「人権」はなかった…”. 産経新聞(東京夕刊)
- ^ 正論2003年4月号
- ^ “男子も「さん」で… 「君」廃止、学校で広がる”. 神戸新聞. (2002年11月24日)
- ^ a b “「反原発」イデオロギー強制も 日教組教研集会で報告”. 産経新聞. (2012年1月29日) 2012年1月31日閲覧。
- ^ “中学授業で「百人斬り」 自虐的教育を報告 日教組教研集会 (1/2ページ)”. 産経新聞. (2012年1月30日) 2012年3月29日閲覧。
- ^ “中学授業で「百人斬り」 自虐的教育を報告 日教組教研集会 (2/2ページ)”. 産経新聞. (2012年1月30日) 2012年3月29日閲覧。
- ^ “英語より韓国語、中国語教育を!” 子に自虐史観を植え付ける「日教組」集会レポート デイリー新潮、週刊新潮2018年2月15日号掲載、2018年2月21日閲覧
- ^ a b c 『産経新聞』 2003年1月20日朝刊 『「北朝鮮」賛美、日教組の過去清算されず』
- ^ 安井郁、高橋勇治 編『チュチェの国 朝鮮を訪ねて』読売新聞社、1974年、185頁。ASIN B000J9GOPM。
- ^ 『世界』 1972年12月号「日朝交流の課題」より。
- ^ “【続・民主党解剖】政権前夜(6)「わが世の春」待つ日教組 (2/3ページ)”. 産経新聞. (2009年8月10日) 2011年6月17日閲覧。
- ^ [【北を賛美する日教組】 2003年05月17日、 産経新聞朝刊]
- ^ 朝鮮新報2006年9月12日付記事
- ^ a b 『産経新聞』 2003年1月20日朝刊 『25日から日教組強研集会 「拉致めぐる」報告なし 戦争責任と相殺論目立つ』 ‐ 事前に公表された各分科会の報告書から。
- ^ 日本教職員組合編『教科書白書2001』より。
- ^ a b “日朝教育関係者 全国交流集会、シンポジウム 民族教育権擁護へさらに連帯を”. 朝鮮新報. (2007年3月2日) 2010年3月3日閲覧。
- ^ “ラブホ、W不倫…日教組の岡本泰良委員長 雲隠れのち辞任 報道後は姿見せず”. 産経新聞. (2016年11月7日) 2017年11月11日閲覧。
- ^ 豪遊W不倫の日教組委員長、辞任必至 タクシー代私的流用報道「指摘通りです」[リンク切れ]
- ^ a b c “関連団体|What's JTU? | 日本教職員組JTU”. www.jtu-net.or.jp. 2023年11月18日閲覧。
日本教職員組合と同じ種類の言葉
労働組合に関連する言葉 | 従業員組合(じゅうぎょういんくみあい) 御用組合 日本教職員組合 横断組合 欧友会 |
- 日本教職員組合のページへのリンク