分数階微積分学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/22 01:08 UTC 版)
この文脈における「冪」の語は作用素の合成を繰り返し行うという意味で用いており、それに従えばたとえば f2(x) = f(f(x)) ということになる。さてたとえば、微分作用素 D の平方根(あるいは微分を半分だけ作用させる)という意味での式
に何か意味のある解釈をつけられるかということを考える。この式は、つまりある作用素を「二度」作用させて、微分作用素 D と同じ効果を得られるということを意味しているのであり、あるいはもっと一般に、実数 s に対して微分作用素の冪
にあたるものを決定できるかという問をも考えることができるだろう。このとき、s が整数 n を値にとるならば、n > 0 のときこの冪は通常の意味での n-階微分作用素となり、n < 0 のときは積分作用素 J の (−n)-乗となるように定義されるものでなければならない。
このようなことを考える理由はいくつかある。ひとつはそれによって「離散」的な変数 n で添字付けられる微分作用素の族 Dn 全体が作る半群を実数 s を径数とする「連続」的な半群のなかにあるとして考えられるようになることである。連続的半群というものは数学のさまざまなところに現われ、豊かな理論を備えている。分数階微分積分学では、冪として必ずしも有理数冪に限らず実数冪や複素数冪を一般に扱うため「分数階」という名称で呼ぶのは少々紛らわしいが、慣習的に「分数階微分積分学」の名称が使われている。
- ^ ここで積分作用素の J は integration の頭文字 I を用いるところ、I は恒等写像など他の意味に使われたり、I に似た字形の記号・文字がいろいろと使われたりすることによる混同を避けるためにしばしば使われる。
- ^ Liouville, Joseph (1832), “Mémoire sur quelques questions de géométrie et de mécanique, et sur un nouveau genre de calcul pour résoudre ces questions”, Journal de l'École Polytechnique (Paris) 13: 1-69.
- ^ Liouville, Joseph (1832), “Mémoire sur le calcul des différentielles à indices quelconques”, Journal de l'École Polytechnique (Paris) 13: 71-162.
- ^ この主題の歴史については、以下の修士論文(フランス語)Stéphane Dugowson, Les différentielles métaphysiques (histoire et philosophie de la généralisation de l'ordre de dérivation), Thèse, Université Paris Nord (1994) を参照。
- ^ Hadamard, J. (1892), “Essai sur l'étude des fonctions données par leur développement de Taylor”, Journal of pure and applied mathematics 4 (8): 101–186
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