うま味調味料 うま味調味料の概要

うま味調味料

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/01 16:03 UTC 版)

初めて登場した、うま味調味料「味の素」(アジパンダ瓶、2017年

かつては「化学調味料」と称されていたが、1990年代から「うま味調味料」と言い換えられるようになった(詳細は後述)。現在は、加工食品において原材料名として、「調味料(アミノ酸等)」と表記されていることが多い。

初めて登場したうま味調味料は、グルタミン酸ナトリウムを主成分として1909年明治42年)に発売された「味の素」である。

後述するように、欧州米国などでは科学的根拠が無いにもかかわらず、消費者の間でうま味調味料の健康に対する懸念が払拭できないと認識されたことから、あらゆる食品レストランで「NO MSG」(グルタミン酸ナトリウム不使用)を標榜する対応が行われており、物議を呼んでいる[1]

歴史

1907年明治40年)、大日本帝国(現:日本国)の化学者池田菊苗が、「ヒト味覚には『酸・甘・塩・苦』の4つに加えて「うま(旨)味」が存在する」と提唱。その後昆布に由来する「うま味」の主成分が、「グルタミン酸」であることを発見した。これをナトリウム塩として精製したものが、1909年(明治42年)に商品名「味の素」で発売された。これが世界で初めて売られた、うま味調味料である。

1920年代にはアメリカ合衆国にも輸出される。第二次世界大戦後にアメリカ陸軍が、兵隊たちに配るレーション缶詰)の味の不評に困り、改善策を模索した中で浮上して、実際に味が劇的によくなったことがわかった後、市販の加工食品外食でも使われるようになり、アメリカ社会に一気に普及した。

1968年、アメリカ合衆国でうま味調味料を大量に食べたことが原因で、中華料理店で食事をした人々の一部が、頭痛・疲労感など広範な症状を発症したとして、これが中華料理店症候群英語: Chinese Restaurant Syndrome, CRS)と名付けられた。中華料理店症候群の原因がグルタミン酸ナトリウムであると見られたため、これ以降うま味調味料の安全性を巡った論争が始まった[2]

その後の実験・研究から、1987年にはFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)がグルタミン酸ナトリウムを『安全』と認定し、欧州医薬品庁アメリカ食品医薬品局食品安全委員会なども同様に『安全』との結論を出した。しかし、アメリカ合衆国では批判は収まっていないが、Andrew Zimmernなど、アメリカの有名料理人がうま味調味料の使用を公表している。

うま味成分

  • グルタミン酸:昆布、チーズ、醤油、味噌、野菜類
  • イノシン酸:肉、魚介類
  • グアニル酸:きのこ類

うま味調味料の種類・食品添加物

欧州連合では以下のうま味調味料を食品添加物(E番号)として定義している。

E番号 名前 目的 状況
E620 グルタミン酸 調味料 EU認可[3]
E621 グルタミン酸ナトリウム (MSG) 調味料 EU認可[3]
E622 グルタミン酸カリウム 調味料 EU認可[3]
E623 グルタミン酸カルシウム 調味料 EU認可[3]
E624 グルタミン酸アンモニウム 調味料 EU認可[3]
E625 グルタミン酸マグネシウム 調味料 EU認可[3]
E626 グアニル酸 調味料 EU認可[3]
E627 グアニル酸ナトリウム 調味料 EU認可[3]
E628 グアニル酸カリウム 調味料 EU認可[3]
E629 グアニル酸カルシウム 調味料 EU認可[3]
E630 イノシン酸 調味料 EU認可[3]
E631 イノシン酸ナトリウム 調味料 EU認可[3]
E632 イノシン酸カリウム 調味料 EU認可[3]
E633 イノシン酸カルシウム 調味料 EU認可[3]
E634 5'-リボヌクレオチドカルシウム 調味料 EU認可[3]
E635 5'-リボヌクレオチド二ナトリウム 調味料 EU認可[3]

他にE640としてアミノ酸の「グリシンとそのナトリウム塩」を認可しているがグリシンはうま味というより甘味を持つ。

製法

製品や各国により製法の違いがあるが、廃糖蜜(原料植物から絞った液から砂糖を抽出した時の液体残留物)に微生物(菌)を加えてグルタミン酸を生成させ、それを水酸化ナトリウムと反応させてナトリウム塩とする方法が、製造費用が抑えられるため主流である[4]トウモロコシなどの澱粉酵母に与えて、原料の糖を作る場合もある。

インドネシアでは2000年タンパク質を分解する菌の栄養源を作る触媒として、由来の酵素を使用していたため、イスラム教の禁止食品(ハラームの項を参照)に認定され、発売禁止になった。その後製法を変えて問題を解決している[5]


  1. ^ 「化学調味料」の誤解解きたい 味の素社長世界を巡る”. 日本経済新聞 (2019年4月27日). 2024年2月17日閲覧。
  2. ^ ロバート・ウォルク 著、ハーパー保子 訳「第4章 キッチンの科学」『料理の科学 1 素朴な疑問に答えます』(第1刷)楽工社、2012年12月20日、pp. 189-190頁。ISBN 9784903063577 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p https://www.food.gov.uk/policy-advice/additivesbranch/enumberlist#Others
  4. ^ 『食品の裏側2 実態編: やっぱり大好き食品添加物』安部司著(ISBN 978-4492223369 2014年3月 東洋経済新報社)(「調味料(アミノ酸等)」)驚くべきその製法
  5. ^ 宗教徒食”. 北海道新聞. 2014年1月1日閲覧。
  6. ^ http://www.nytimes.com/2008/08/26/health/nutrition/26nutr.html?_r=0
  7. ^ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23620336
  8. ^ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23727643
  9. ^ 吉川春寿、芦田淳編、「中華料理症候群」、『総合栄養学事典』、第4版、同文書院 ISBN 4-8103-0024-2
  10. ^ Kenny R. A., Food Chem. Toxic., 24, 351, 1986.
  11. ^ Geha RS, Beiser A, Ren C, Patterson R, Greenberger PA, Grammer LC, Ditto AM, Harris KE, Shaughnessy MA, Yarnold PR, Corren J, Saxon A (2000). “Review of alleged reaction to monosodium glutamate and outcome of a multicenter double-blind placebo-controlled study”. J. Nutr. 130 (4S Suppl): 1058S–62S . PMID 10736382. 
  12. ^ Ohguro, H.; Katsushima, H.; Maruyama, I.; Maeda, T.; Yanagihashi, S.; Metoki, T.; Nakazawa, M. Experimental Eye Research 2002, 75, 307-315. DOI: 10.1006/exer.2002.2017
  13. ^ Too much MSG could cause blindness - 26 October 2002 - New Scientist
  14. ^ a b 商品についてのQ&A - 味の素株式会社
  15. ^ 日本うま味調味料協会Webサイト - プロフィールの項
  16. ^ 化学調味料無添加表示:協会はこう考えます - 日本うま味調味料協会
  17. ^ 工業統計調査の分類について
  18. ^ 特定商品の販売に係る計量に関する政令
  19. ^ 日本標準産業分類
  20. ^ 食品中のクロロプロパノール類に関する情報 - 農林水産省


「うま味調味料」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「うま味調味料」の関連用語

うま味調味料のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



うま味調味料のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのうま味調味料 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS