運動の難点とは? わかりやすく解説

運動の難点

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 18:10 UTC 版)

フィジカルトレーニング」の記事における「運動の難点」の解説

24週間毎日ウォーキング続けることで体に及ぼす影響について調べ実験が行われた。歩数それぞれ10000歩、12500歩、15000歩であった結果は、除脂肪体重増えた脂肪増加し体重は全く減らなかった。研究者らは、「ウォーキングには、体重増加脂肪増加を防ぐ効果見られなかった」と結論付けている。 カリフォルニア州ローレンス・バークリー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)の統計学者ポール・ウィリアムス(Paul Williams)と、スタンフォード大学研究者ピーター・ウッド(Peter Wood)は、普段からよく走る習慣のあるランナー13000人を集め、彼らの1週間累計走行距離と、年ごと体重変化比較する研究結果2006年公表した。ピーター・ウッドは、運動健康にどのような影響を及ぼすのかについて、1970年代から研究行っていた人物でもある。この13000人のランナーについての研究では、最もたくさん走った人ほど最も体重少な傾向こそあったが、これらのランナー全員、「年を追うごとに太っていく(身体脂肪蓄積していく)」傾向にあった2007年8月アメリカ心臓協会(The American Heart Association)とアメリカスポーツ医学会(The American College of Sports Medicine)は、身体活動健康に関す指針共同発表した。この団体専門家たちは、週に5日1日30程度精力的な運動が「健康を保ち促進するために必要である」と述べた。しかし、「肥満になることや痩せたままでいることに対して運動どのような影響与えるのか」という質問になると、彼らは以下のようにしか答えられなかった。 「1日あたりエネルギー消費量が多い人は、それが少ない人に比べて時間とともに体重増える可能性が低い、と仮定することは理にかなっている。今のところ、この仮説支持する証拠となるものについては、説得力は無い」。 1960年疫学者のアルヴァン・ファインシュタイン(Alvan Feinstein)は、医学雑誌The Journal of Chronic Diseases』に掲載され批評様々な肥満治療の有効性について分析しその中で、「エネルギー消費量増やすという点において、運動何の役にも立たない」とし、肥満治す手段として「運動」を却下した。ファインシュタインは、「体重を減らす目的十分なカロリー消費するには、『やり過ぎ』と呼べるぐらいの身体活動必要になる。 さらに、身体運動食べ物対す欲求惹起しその後カロリー摂取量が、運動中に失われたものを超えてしまう可能性出てくる」と指摘した1973年10月アメリカ国立衛生研究所(The National Institutes of Health)は肥満についての会議主催した。この会議参加者1人スウェーデン人研究者、パル・ビヨントルプ(Per Björntorp)は、肥満運動に関する自身臨床試験結果について報告した。ビヨントルプは肥満体被験者7人に対して3回運動計画実施し半年続けた結果は、半年間の運動経て被験者たちの身体は相変わらず重く太ったままであった1977年アメリカ国立衛生研究所2度目肥満会議主催した。この会議集まった専門家たちは最終的に以下の結論達した。 「体重管理における運動の重要性信じがたいほどに低い。ヒト運動量増やせば、同時に食べる量も増えがちになり、運動による消費エネルギー増加食べる量の増加に勝るのかどうか、それを予測するのは不可能である」。 1989年デンマーク人研究者が、身体活動体重減少に及ぼす影響について研究結果公表している。普段から座りがちな被験者を、マラソン(26.2マイル)を走れるよう訓練させた。18か月間の訓練経て被験者らは実際にマラソン参加した。この研究参加した18人の男性体脂肪平均で5ポンド(約2.3減っていたが、女性被験者9人については、「体組成変化一切見られなかった」と書いている。この年ニューヨークにあるセントルーク・V・ルーズヴェルト病院肥満研究センター長、ハビエール・ピサニイェール(Xavier Pi-Sunyer)は、「運動量増やせ体重減らせる」という考え分析している現存する試験について再調査行った彼の結論以下のとおりであった。「体重と体組成における減少増加について、変化一切見られなかった」。 イングランド医師、ジョン・ブリッファ(John Briffa)は「有酸素運動では筋肉増えない」「有酸素運動体重を減らす効果は無い」と明言している。また、ヒト運動量増やすと、それ以外場面で自然と運動しなくなる(座りがちになる)傾向にある」と指摘している。 ジョギング普及させたことで知られるジム・フィックス(Jim Fixx)は、自身ジョギング励んでいる最中心臓発作起こして倒れそのまま死亡しており、運動身体臓器負担をかける。東イリノイ大学教授運動生理学マラソン生理学専門家、ジェイク・エメット(Jake Emmett)はジム・フィックス死について、「彼の死は、走る行為冠状動脈性心疾患(Coronary Artery Disease)を防げないだけでなく、突然死を招く可能性出てくることを世界中確信させた」と書いている。 ジョギング最中およびジョギング終えた直後冠状動脈性心臓病(Coronary Heart Disease)で死亡する例は決して珍しいものではない。精良運動能力運動中の死亡事故から身体保護することを示す証拠は無い。 走っている最中死亡した40歳上の人間の死因多く冠状動脈性心臓病である。10年間で22 - 176km、週に平均で53kmの距離を走っていた40 - 53歳平均年齢46歳)の5人の白人ランナー走行中に突然死し、その剖検によればランナーとして走るようになる前に心臓病患っていた者は1人もいなかった。 体育館にてトレッドミル使って走っていた57歳男性が、その最中突然死亡した。彼の死因は「虚血性心疾患」(Ischemic Heart Disease)であった研究者らは「身体活動不定期に行う人は、そうでない人に比べて突然死の危険が高い」「極端な身体活動は、たとえ以前にその症状無かったとしても、心臓致命的な結果もたらす可能性がある」と報告している。 ケープタウン大学教授運動生理学スポーツ医学専門家ティム・ノークス(Tim Noakes)は、運動中の突然死について、「50歳以上の人は、あらゆる種類運動を開始する前に心血管の診断を受ける必要がある50未満の人でも、突然死した人物の家族歴について面談行い心血管疾患症状とその臨床徴候についての診断を受ける必要がある」「肥大型心筋症患っている場合運動中に死亡する危険が高くなる」「アスリートたちは運動中の心臓病発症予防できるとは限らないと書いている。 運動していても、炭水化物食べている限り高血糖防げず(高血糖惹き起こす最も一般的な原因炭水化物摂取にある)、インスリン感受性運動終えた途端に低下するインスリン抵抗性高くなる)。インスリン抵抗性運動では防げない。 「インスリン感受性が低い」ということは、「インスリン抵抗性が高い」(インスリン効き目が悪い)状態を意味する度が過ぎる運動ミトコンドリア(Mitochondria)の機能障害惹き起こし耐糖能(Glucose Tolerance, 上昇した血糖値下げる、血糖値正常に保つ能力)も低下させてしまう。 1950年代半ばハーヴァード大学栄養学者ジョン・マイヤー(Jean Mayer)は、ラット使ったある実験行った毎日数時間強制的に運動させられラットと、運動強制されなかったラットとで、ラット食事量と体重の変化について研究した運動計画沿って運動行ったラットは、運動をしなかった日にはより多く餌を食べ運動をしていない時には身体動かさないようにすることで消費エネルギー減らした一方運動強制されラット体重は、運動強制されなかったラットと「全く同じまま」であった。そして、実験用ラットがこの運動計画から解放されると、ラットはかつてなかったほどの量の餌を食べるようになり、運動強制されなかったラットよりも、歳とともに急速に体重増えたまた、ハムスターアレチネズミ使った研究では、運動させると「体重と体脂肪増加する結果終わっただけであった1970年代まで一般アメリカ人多くは、避けられるであれば空いた時間汗を流すべきであるとは考えていなかった。1977年ニューヨーク・タイムズ当時アメリカについて、「運動熱の高まり真っ只中にある」と報じた1960年代アメリカではExercise is bad for you」(「運動身体に毒である」)というのが広く行き渡った考え方であったが、それがいつしか、「Strenuous exercise is good for you」(「苦痛覚えるほどの運動身体良いのだ」)と変遷していった。 ロンドン生まれ葬儀屋ウィリアム・バンティング(William Banting)は、自身太り過ぎていたことに悩んでいた。身体が重いゆえに自分自分靴紐を結ぶことすらできず、膝や足首関節痛めないよう、階段降りる際にはゆっくり後ろ向き降りる必要があり、階段上るだけでも息切れするほどであったバンティングが「この国でもっとも有能な医師」と呼んでいた医者相談した際には、「体重増えるのは全く自然なことであり、自分体重毎年1ポンドずつ増えている」と言われバンティング身体の状態については全く驚かない、として、「運動サウナ風呂洗髪増やしなさい」と言われただけであった。彼はへその緒裂け視力落ち、耳も聞こえなくなりつつあった。難聴について耳鼻科医相談するも、「大したことはない」として耳を掃除し他の障害については何も尋ねなかった。バンティング身体の不調はますます強まっていった。 バンティングは、体重を減らす目的テムズ川毎朝ボート漕ぎ続けることにした。彼の腕の筋力強化されたが、それに伴って猛烈な食欲湧き体重は減るどころかますます増えていった。医師であり、友人でもあったウィリアム・ハーヴィー(William Harvey)はバンティングに「運動止めなさい」と助言し炭水化物制限する食事法を教えたハーヴィーバンティング対し、「あなたは太り過ぎだ。脂肪があなたの聴覚管の1つ塞いでいる。すぐに体重を減らさねばならない」と述べた。この食事法に従ったバンティング大幅に体重減らしただけでなく、身体の不調回復していった。1863年バンティングは、減量成功した食事法や、減量にあたって試して失敗続けてきた方法についてまとめた『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』(『市民宛てた肥満についての書簡』)を出版したバンティングはこの書簡の中で、「減量に対して何の効果も無い方法」の1つとして「食べる量を減らして運動量増やす」を挙げている。バンティング自身テムズ川ボートを漕ぐだけでなく、水泳ウォーキングにも励み食べる量を極端に減らす「飢餓食」(Starvation Diets)も試したが、体重減らず体力はどんどん低下していった。バンティング減量へと導いたのは、食べる量を減らしたことでもなければ運動量増やしたことでもなく、「炭水化物制限する食事法」であった。彼は、 「I had the command of a good, heavy, safe boat, lived near the river, and adopted it for a couple of hours in the early morning. It is true I gained muscular vigour, but with it a prodigious appetite, which I was compelled to indulge, and consequently increased in weight, until my kind old friend advised me to forsake the exercise.」(「私は、重く安全なボート所有しており、川の近く住んでいた。私は早朝2 - 3時ボートを漕ぐ習慣付けることにした。確かに私の筋力強化されたが、それに伴って尋常でないほどの食欲が湧くようになり、食欲の抑制が効かなくなった親切な旧友から『運動の習慣捨てなさい』との忠告を受けるまで、体重増加止まることは無かった」) 「I can confidently state that quantity of diet may safely be left to the natural appetite; and that it is quality only which is essential to abate and cure corpulence.」(「食べる量については、自然に湧いてくる食欲に従って差し支えない肥満和らげ治療するために必要なのは食べ物の『質』だけである、と、確信をもって明言できる」) との言葉を残している。 『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』はまもなくベストセラーとなり、複数言語翻訳された。「Bant」は「食事療法に励む」を意味する動詞として使われるようになり、「Banting」という言葉ウィリアム・バンティングの名にちなん使われスウェーデン語にもこの単語輸入され使われるようになった英語辞典メリアム・ウェブスター(Merriam Webster)では、「Banting」について「肥満体としての食事療法で、炭水化物や甘い味付け食べ物避ける」と定義している。 イングランド医師トマス・ホークス・タナー(Thomas Hawkes Tanner)は、1869年出版したThe Practice of Medicine』(『実践医学』)にて、肥満治療するにあたっての「何の価値も無い処方箋」として、「食べる量を減らす」「毎日多く時間散歩乗馬費やす」を挙げ、「これらの方法どんなに辛抱強く続けたところで、望む目的達成されることはない」と断じた。 ニューヨークで心臓病専門医をやっていたブレイク・F・ドナルドソン (Blake F. Donaldson)は、「肥満体心臓病患者」に対し1919年ごろから「ほぼ肉だけで構成され食事」を処方した1日3回食事で、1日摂取カロリー少なくとも3000kcalはあった。ドナルドソンまた、食べる量を減らして運動量増やす」を行って体重は全く減らないことに気付いていた。脂肪の総摂取量1日摂取カロリーのうちの75 - 80%であり、2ポンド (907 g)の脂肪付いた牛肉食べるよう患者指導した脂肪の摂取量がこれより少なかったり、食事抜いたりすると、患者体重減少速度低下したという。ドナルドソンによれば40年後に引退するまでに、17000人の肥満患者にこの食事処方したという。ドナルドソン自然史博物館訪れ、そこに常駐していた人類学者に「先史時代の我々の祖先たちはどんなものを食べていたのか?」と尋ねたところ、人類学者は「我々の祖先脂肪非常に多い肉を食べていた」と答えたという。ドナルドソンは、「いかなる減量食であれ、脂肪がとても多い肉こそが不可欠である」と判断し、この食事肥満患者処方していた。ドナルドソン患者たちは、空腹感悩まされることなく週に2 - 3ポンドずつ体重減らせたという。体重減らせなかったのは「パン中毒患者であったという。ドナルドソン1961年出版した著書Strong Medicine』(『効き目の強い』)にて、「医者糖尿病についてどれだけ知っているか、というのはどうでもいい話だ。体重減らし、その減った体重維持するにはどうすればいいかを知らないであればその人物は医者失格である。身体太りやすく、体重増加抑制する方法について自ら学んだ医師であれば問題深刻さをより理解しているようだと書いている。 1940年代デラウェア州にある会社デュポン社 (DuPont)に所属していたアルフレッド・W・ペニントン(Alfred W. Pennington)は、過体重および太り過ぎの従業員20人に、「ほぼ肉だけで構成され食事」を処方した。彼らの1日摂取カロリー平均3000kcalであった。この食事続けた結果、彼らは平均で週に2ポンド減量見せた。この食事処方され過体重従業員には、「一食あたりの炭水化物摂取量20g以内」と定められ、これを超える量の炭水化物摂取許されなかった。デュポン社産業医部長、ジョージ・ゲアマン(George Gehrman)は、「食べる量を減らしカロリー計算し、もっと運動するようにと伝えたが、全くうまくいかなかった」と述べた。ゲアマンは、自身同僚であるペニントン助け求めペニントンはこの食事処方したであったサイエンス・ジャーナリストゲアリー・タウブス(Gary Taubes)は、「『体重を減らす目的で、食べる量を減らして運動量増やす』という考え方一見筋が通っているように見えるが、実際に間違っているだけでなく、何の役にも立たない」、「もしも『座りがちな生活』(Sedentary Behavior)が我々を肥満にさせ、運動がそれを防いでくれるというのなら、肥満ではなく痩せ』が流行するはずである。しかし実際には、運動熱の始まり同時に肥満の流行起こった」と指摘し、「減量目標であり、あなたの健康と生活がそれに左右されるとしても、『1年半の間毎日努力続ければ脂肪を5ポンド(約2.3減らせるかもしれないと言われたら、あなたは26マイル(42km)を走れるようになるための訓練をするだろうか?」と問いかけている。 メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)の医師で、肥満と糖尿病専門家ラッセル・ワイルダー(Russell Wilder)は、1932年行った肥満についての講演で以下のように述べた。 「肥満患者は、ベッドの上安静にしていることで、より早く体重減らせる一方で激し身体活動減量速度低下させる」「運動続ければ続けるほどより多く脂肪消費されるはずであり、減量もそれに比例するはずだ、という患者理屈一見正しいように見えるが、体重計何の進歩示していないのを見て患者落胆する」。 ワイルダーは、「運動すれば減量できる」「座りっぱなしの生活を送っていると太る」「食べ過ぎるから太る」といった考え方を「幼稚」として退けていた。

※この「運動の難点」の解説は、「フィジカルトレーニング」の解説の一部です。
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