無人攻撃機
別名:無人戦闘機、無人戦闘攻撃機、無人戦闘航空機
英語:UCAV、Unmanned Combat Aerial Vehicle
攻撃能力を持つ軍用の無人航空機(UAV)のこと。無人偵察機に対して、ミサイルや爆弾などの攻撃機能を付与し、偵察任務と攻撃任務の両方を行うことを可能にした兵器である。
米軍は2001年から、無人攻撃機として「プレデター」や「リーパー」などの無人攻撃機を導入、運用しており、アフガニスタンやパキスタンにおける対テロ作戦などで活用している。2014年現在までに、テロ組織の司令官を複数人殺害するなどの戦果を挙げてきたが、誤爆による民間人の犠牲も多数出ているとされる。米軍は、民間人の犠牲をできるだけ少なくするために、より威力の低いミサイルを用いるなどの対策を行っている。
無人攻撃機の利点としては、搭乗員の生命の危険がないこと、パイロット養成に必要なコストが少ないこと、機体が小型で比較的安価であることなどが挙げられている。欠点としては、誤爆などの精密性に関する問題が挙げられるほか、無人攻撃機のパイロットが「ゲーム感覚」で人を殺害しているのではないかなどとして、非人道的な兵器だという批判が行われることがある。しかし、実際には無人攻撃機のパイロットの精神的負担は大きく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥るパイロットが多いともいわれている。
2010年の時点で、無人攻撃機を含む無人航空機を開発または運用している国は、40か国以上に及ぶとされた。日本の自衛隊は、中国・北朝鮮対策を念頭に、2014年度から無人偵察機「RQ-4 グローバルホーク」を購入することを発表したが、無人攻撃機の開発または導入の予定はないとされている。近年は、無人攻撃機にステルス性を付与した「ステルス無人攻撃機」も開発されており、2014年1月現在、米国、フランス、ドイツ、中国の4か国が開発の成功を発表している。
UCAV
(無人攻撃機 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/13 16:05 UTC 版)
UCAV(英: unmanned combat air vehicle)は、無人航空機(無人機、UAV) 、および、軍用ロボットの一種である。爆撃、偵察任務を行うために特に設計されたものを指す。
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- 1 UCAVとは
- 2 UCAVの概要
- 3 計画が中止されたUCAV
- 4 関連項目
無人攻撃機
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英語ではUCAV (Unmanned Combat Aerial Vehicle) と呼ばれる。偵察型や哨戒型にハードポイントを設置し兼用できる機体も登場しており、武装した状態で偵察し目標を発見した際はそのまま攻撃任務に移行できるマルチロール機が実用化された。無人偵察機がマルチロール化した例では、RQ-1 プレデターがMQ-1 プレデターとなり、MQ-9 リーパーが作られた経緯がある。 人間が搭乗しないため、敵地で撃墜されても操縦員が死傷したり、捕虜になるリスクがない。現代ではMQ-1 プレデターなど武装した無人航空機が世界で数多く登場しており、2001年のアメリカ同時多発テロ事件後、アメリカ軍がアフガニスタンへの侵攻を開始した2001年10月14日に先立つ10月7日、MQ-1 プレデターがヘルファイアミサイルを搭載して武装偵察飛行を行ったことに始まり、その後アフガニスタン戦線の外、イラク戦争、イエメンなど中東地域での攻撃に多用されるようになった。主な任務は対地攻撃だが、2002年12月にスティンガーで武装したプレデターがイラク戦争でイラク軍のMiG-25と交戦し、互いに対空兵器を装備した有人機と無人機の史上初の空中戦となった。 アメリカ政府によるテロ容疑者暗殺作戦ディスポジション・マトリックス(英語版)の開始で、攻撃能力を持つ無人機はアフガニスタンとパキスタンでのターリバーン、アルカーイダ攻撃への参加が推し進められ、2009年8月にパキスタン・ターリバーン運動のバイトゥッラー・マフスード司令官を殺害しているが、誤爆や巻き添えによる民間人の犠牲者が多いことが問題となっている。これは、無人機操縦員の誤認や地上部隊の誤報、ヘルファイアミサイルの威力が大きすぎることなどが原因となっている。ヘルファイアミサイルの問題に関しては、より小型で精密なスコーピオンミサイルを採用して対処することになっている。 無人機によるテロリスト組織への攻撃は、しばしば倫理や法律上の議論を惹起するが、アメリカ政府によれば無人機による攻撃は、テロリストの攻撃に対して均衡が取れている規模であること、結果的に多くのアメリカ兵の生命を救っていることをあげ、合法的でかつ倫理的にも反していないとの見解を示している。アメリカ軍では無人機の操縦者のうち7人に1人は民間人(ブラックウォーターUSAなどの民間軍事会社)だが、アメリカ軍の交戦規定により攻撃は軍人が担当している。無人攻撃機にはアメリカ軍の他にイスラエルも早くから導入している。多様な無人攻撃機の実証実験機などのテストが進行中である。無人攻撃機の実証実験機にはX-45やX-47がある。 現代では司令部と前線部隊の通信中継、取得した画像提供と同時に援護攻撃を行うなど多彩な任務に投入されている。イラク戦争ではイラク軍の防空網に対する囮として使われたほか、イラク戦争に先立つ2002年12月23日には、イラク飛行禁止空域を警戒飛行していたMQ-1が搭載していたスティンガー空対空ミサイルでイラク軍のMiG-25を攻撃している。広く知られた利用方法はアルカーイダやターリバーンへの攻撃で、宣戦布告なき戦争(=不正規戦争)でパキスタンやイエメン、ソマリアなど、撃墜されパイロットが捕虜となった場合国際的な問題とされそうな国で多用されている。 アメリカ軍が、無人機での攻撃を開始して以降、殺害した人数は、2013年2月時点で約4,700人と推定されている。アメリカ空軍は2023年までに、すべての攻撃機のうち3分の1が無人機になるとしている。 世界最大の無人攻撃機輸出国となった中国は翼竜や彩虹など積極的に攻撃能力を持つ無人機を発展途上国に輸出してイラク軍やエジプト軍のISILへの作戦やナイジェリア軍のボコ・ハラム攻撃、サウジアラビア軍とアラブ首長国連邦軍の2015年イエメン内戦への軍事介入など中東やアフリカで実戦使用され、先進国に輸出を限定していた米国もこれに規制緩和で対抗しており、武装無人機の拡散による紛争拡大が懸念されている。また、イランは武装無人機のシャヘド129(英語版)によってシリアで反政府勢力を攻撃し、市販の中国製エンジンを搭載したアバビール(英語版)のような武装無人機を中東のシーア派民兵組織に拡散させて問題になっており、イエメンのフーシが自前化したアバビール(カセフ1)やサマド3(英語版)などでサウジ石油施設攻撃を起こして世界経済に大きな影響を与えた。2014年リビア内戦では暫定政府のトルコ製無人攻撃機のバイラクタル TB2とリビア国民軍の中国製無人攻撃機の翼竜が互いに破壊し合う無人機戦争が起きている。 テロ組織側でもISILは自動識別や自動運航が可能で滑走路での離着陸を必要としないDJIやスカイウォーカー・テクノロジーなど殆どは世界市場でメジャーな中国製の民生用無人機に爆発物を載せて攻撃機に改造するといった利用が拡大している。2017年のシリア・イラクにおける紛争で、ISは手榴弾や迫撃砲弾、たる爆弾などを搭載した民生用ドローンを投入して政府軍に多くの死傷者を出している。構造は単純で、真下に爆弾を落とすだけの簡素なものだが、誤差数メートルという驚異的な精度で攻撃できた。小型のドローンは被発見性も低く、騒音も軍用機に比べてはるかに小さいため、直下の兵士が全く気付かないまま攻撃を受けることもあった。戦車に対する攻撃にも使用されており、撃破の事例はまだないが、対戦車榴弾や対戦車ロケットによる攻撃が試みられている。少なくともこの攻撃で乗員が殺傷されたことがISの連日投稿する動画で確認されており、脅威度の高さを裏付けるものとなった。民生用ドローンを攻撃用途に用いる場合、防護が一切ないので小銃弾を受けるだけで簡単に撃墜されてしまうが、十分な高度があれば攻撃後の退避は容易である。赤外線をほとんど出さない上にRCSも低いので、SAMによる対処は不可能である。軍用機として見れば極めて安価であり、歩兵が直接運用し自前で近接航空支援が可能なことから、テロリストから見れば理想的な航空兵器であり、懸念が高まっている。イラクで充電不足で自動帰還した自らのドローンにISの戦闘員が誤爆されるという珍事が起きた際は民生用ドローンの高性能化の脅威を示すものと報じられた。2018年8月にベネズエラではDJIの商用無人機に爆弾を搭載して大統領暗殺を狙ったテロ事件(Caracas drone attack)も起きており、これはドローンによる国家指導者に対する初のテロとされた。 また、アメリカやイスラエルなどの正規軍でも廉価で使い勝手が良いことから民生用無人機は使用されており、イスラエル軍はDJIの無人機に催涙弾を搭載して2018年3月にガザ地区のデモ隊に使用して死傷者を出した。
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