スラップ訴訟
別名:恫喝訴訟、恫喝的訴訟、スラップ裁判、威圧訴訟、スラップ
英語:Strategic Lawsuit Against Public Participation、SLAPP
ある程度の発言力や社会的影響力のある、社会的に優位といえる立場の者が、特に発言力や影響力を持たない相対的弱者を相手取り訴訟を起こすこと。強者が弱者に対して訴訟をしかけることで、半ば社会的な恫喝あるいは報復として機能する。
スラップ訴訟は、たとえば個人と企業との間の対立において企業が個人を提訴するという形で行われる。個人は企業が孕む問題を告発する情報を発信し、企業側はこれを名誉毀損として提訴する、という構図が典型といえる。訴えられた個人の側は訴訟に対応するために個人では対応しきれないような金銭的・時間的な負担が強いられる。世論は企業側に好意的な見解を寄せやすい。結果として告発者を疲弊させる嫌がらせ効果に結びつく。
スラップ‐そしょう【スラップ訴訟】
スラップ
(スラップ訴訟 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/04 23:06 UTC 版)
スラップ(英: SLAPP、strategic lawsuit against public participation)とは、訴訟の形態の一つである。金銭的余裕のある側が、裁判費用・時間消費・肉体的精神的疲労などを相手に負わせることを目的とし、最終的に敗訴・棄却されるであろう事例に「名誉毀損」と主張する加罰的・報復的訴訟を指す。特に金銭さえあれば裁判が容易に起こせる民事訴訟において行われる。批判的言論威嚇目的訴訟などとも訳される。なお、アメリカの一部の州では後述のように原告側へ「スラップ」ではないことの立証責任を課したり、スラップ提起そのものを禁止している[1][2][3][4][5][6][7]。スラップ訴訟、口封じ訴訟[8][9]、威圧訴訟とも言われる[10]。
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- 1 スラップとは
- 2 スラップの概要
- 3 原告敗訴等スラップ確定事例
- 4 参考文献
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