スラップ訴訟
別名:恫喝訴訟、恫喝的訴訟、スラップ裁判、威圧訴訟、スラップ
英語:Strategic Lawsuit Against Public Participation、SLAPP
ある程度の発言力や社会的影響力のある、社会的に優位といえる立場の者が、特に発言力や影響力を持たない相対的弱者を相手取り訴訟を起こすこと。強者が弱者に対して訴訟をしかけることで、半ば社会的な恫喝あるいは報復として機能する。
スラップ訴訟は、たとえば個人と企業との間の対立において企業が個人を提訴するという形で行われる。個人は企業が孕む問題を告発する情報を発信し、企業側はこれを名誉毀損として提訴する、という構図が典型といえる。訴えられた個人の側は訴訟に対応するために個人では対応しきれないような金銭的・時間的な負担が強いられる。世論は企業側に好意的な見解を寄せやすい。結果として告発者を疲弊させる嫌がらせ効果に結びつく。
スラップ‐そしょう【スラップ訴訟】
スラップ
(スラップ訴訟 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 19:24 UTC 版)
スラップ(英: SLAPP、strategic lawsuit against public participation)とは、訴訟の形態の一つであり、特に金銭さえあれば裁判が容易に起こせる民事訴訟において、誹謗中傷を除いた公共の利益に関わる反社会的言動・行為への真実性又は真実相当性のある批判・発信に対して、自らは裁判結果で赤字となろうとも名誉毀損を主張し、弁護士費用・時間消費・肉体的精神的疲労などを相手に負わせることを目的に起こされる加罰的・報復的訴訟を指す言葉である。口封じ訴訟[1][2]、威圧訴訟[3]、批判的言論威嚇目的訴訟などとも訳される。アメリカでは禁止されている州もある[4][5][6][7][8][9]。自衛策としては、相手の人格は攻撃しないことで誹謗中傷の「疑い」すらかけられぬほど、自分の意見を批判の範疇に留めることである[10]。
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- ^ “突然、弁護士からの手紙が自宅に…あなたが「誹謗中傷」で訴えられる日(トイアンナ) @gendai_biz” (日本語). 現代ビジネス. 2022年5月5日閲覧。 “そして自衛策としては、誹謗中傷の「疑い」すらかけられぬほど、自分の意見を批判の範疇にとどめることだ。相手の人格を攻撃してはいけない。それは命すら奪いかねないのだから。だが、「この意見に対して強く反対します」「こういった発言は、〇〇に当てはまる人を差別しているのではないか」といった批判は、自由にできる。 今こそ、誹謗中傷ではない「意見に対する批判」の作法を、SNSユーザーは学ぶべきときが来たのだと信じている。”
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