請負 危険負担の問題

請負

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/14 23:00 UTC 版)

危険負担の問題

不可抗力により目的物が滅失・毀損した場合には危険負担の問題となる。

仕事完成前の段階における目的物滅失・毀損による履行不能の場合、請負人の仕事完成義務は消滅し原則として報酬請求権を行使しえないほか費用償還請求権も有しない(536条1項)。注文者に帰責事由がある場合には、請負人は報酬請求権を失わないが、完成までに必要とされた費用等を注文者に償還しなければならない(536条2項、最判昭52・2・22民集31巻1号79頁)。

仕事完成後から引渡前の段階において、当事者のいずれの責めにも帰すことができない事由により目的物滅失・毀損が生じて履行不能となった場合については、536条1項適用説と534条適用説があった。しかし、2017年の改正で534条は削除された。

建設業においては、「危険負担」という概念そのものが、民法上の危険負担とは異なる概念として捉えられている。すなわち「土建請負契約にいう危険負担とは、工事の『受渡』にいたる間に請負人が工事において被った損害(なかんずく、不可抗力による損害)を、請負人又は注文者のいずれが負担すべきかという問題であって、必ずしも - いや、むしろほとんどすべての場合には - 請負人の履行不能に関するものではなくして、請負人の履行費用の負担に関するものである[34]」というのが、建設業における「危険負担」の認識である。各種の建設請負約款においては危険負担について民法とは異なる定めを設けている[35]

請負の終了

請負特有の終了原因として注文者が損害を賠償することによって認められる解除と注文者の破産手続開始による解除がある。

注文者の損害賠償による解除

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる(641条)。この場合の契約解除については催告不要説と催告必要説(有力説)がある[36]

注文者の破産手続の開始による解除

  • 請負人・破産管財人による解除
    • 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる(642条1項本文)。ただし、仕事完成後は請負人に解除権を認める必要がないことから、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で仕事を完成した後は請負人は契約を解除できないとされた(642条1項ただし書)[31]
    • 前項に規定する場合において、請負人は、既にした仕事の報酬及びその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる(642条2項)。
    • 第一項の場合には、契約の解除によって生じた損害の賠償は、破産管財人が契約の解除をした場合における請負人に限り、請求することができる。この場合において、請負人は、その損害賠償について、破産財団の配当に加入する(642条3項)。
  • 損害賠償の要件
契約の解除によって生じた損害の賠償は、破産管財人が契約の解除をした場合における請負人に限り、請求することができる(642条2項前段)。この場合において、請負人は、その損害賠償について、破産財団の配当に加入する(642条2項後段)。



  1. ^ a b c d e 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、271頁
  2. ^ a b 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、209頁
  3. ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、287頁
  4. ^ a b c d e 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、290頁
  5. ^ a b c 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、211頁
  6. ^ a b 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、210頁
  7. ^ 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、274-275頁
  8. ^ a b すっきり早わかり 債権法改正のポイントと学び方 (PDF)”. 東京弁護士会. 2020年4月1日閲覧。
  9. ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、246頁
  10. ^ a b 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、288頁
  11. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、209-210-211頁
  12. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、209・213頁
  13. ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、247-248頁
  14. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、209-210頁
  15. ^ b:建設業法別表第一に掲げる建設工事については、一括して他人に請け負わせること(一括下請負)は、建設業法第22条により原則禁止されている。
  16. ^ a b c d 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、247頁
  17. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、209-210・213頁
  18. ^ a b c 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、212頁
  19. ^ 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、287-288頁
  20. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、209-210・213頁
  21. ^ 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、287頁
  22. ^ a b 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、288頁
  23. ^ a b 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、213頁
  24. ^ a b 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、289頁
  25. ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、291-292頁
  26. ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、248頁
  27. ^ a b c d e f g h i j k l m n 民法(債権法)改正で実務はどう変わる? 2 (PDF)”. 大和総研. 2020年3月14日閲覧。
  28. ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、293頁
  29. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、218-219頁
  30. ^ 建設会社から見た民法改正のポイント (PDF)”. 日本建設業連合会. 2020年3月14日閲覧。
  31. ^ a b c 改正債権法の要点解説(9) (PDF)”. LM法律事務所. 2020年3月14日閲覧。
  32. ^ a b 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、223頁
  33. ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、259頁
  34. ^ 川島 武宜・渡辺洋三著 『土建請負契約論』 日本評論社、1950年
  35. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、218頁
  36. ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、295頁


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