日本の哺乳類一覧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/02 09:03 UTC 版)
概論
日本列島はアジア大陸に隣接した島嶼(とうしょ)群であり、氷期に大陸から移入した生物が孤立個体群として独自に進化を遂げてきた。また、南北に3,000kmと長く、3,000m以上の高山地帯をもつため、亜寒帯から亜熱帯までの多様な環境が含まれる。このような背景のもと、日本に生息する約130種の陸生哺乳類のうち3割を超える固有種、7属の固有属による、多様かつ独特の哺乳類相が存在している。その一方で、北海道や対馬などのユーラシア大陸に近い地域では、それら固有種に加え大陸系の種も生息している[1]。
日本の哺乳類相は、北海道と本州の間にあるブラキストン線、トカラ列島と奄美群島の間にある渡瀬線で区切られており、これらを境に異なる動物群が生息している。また、動物地理学的に見れば、渡瀬線以北に分布する旧北区系の動物群と、渡瀬線以南に分布する東南アジアを起源とする東洋区系の動物群の2群に構成される[2]。
この項では、竹島や尖閣諸島など領有権争いがある場所(詳しくは尖閣諸島問題、竹島を参照)にのみ生息する種も日本固有種とする。
- 【凡例】
- 環境省によるレッドリスト(2012)での絶滅危惧種等のカテゴリー:
- 稀少性
- 固:日本の固有種・固有亜種
- 天然記念物・特別天然記念物:国が指定する天然記念物・特別天然記念物。(哺乳類天然記念物一覧も参照)
- 希少:「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)に基づき、政令で定められた「国内希少野生動植物種」。
真無盲腸目
〔在来2科・移入1科:計3科〕
- トガリネズミ科 Soricidae
- (チビトガリネズミ Sorex minutissimus )
- トウキョウトガリネズミ(亜種) S. m. hawkeri 【北/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)】 世界最小の哺乳類の1つ。
- ヒメトガリネズミ(カラフトヒメトガリネズミ) Sorex gracillimus 【北】
- アズミトガリネズミ Sorex hosonoi 【本/準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)/固】
- (バイカルトガリネズミ(トガリネズミ) Sorex caecutiens )
- エゾトガリネズミ(亜種) S. c. saevus 【北】
- (シントウトガリネズミ Sorex shinto) 【固】 バイカルトガリネズミ S. caecutiens の亜種とする説もある。
- ホンシュウトガリネズミ(亜種) S. s. shinto 【本】
- シコクトガリネズミ(亜種) S. s. shikokensis 【本/準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)/固】
- サドトガリネズミ(亜種) S. s. sadonis 【島(佐)/固】 独立種 S. sadonis とする説もある。
- オオアシトガリネズミ Sorex unguiculatus 【北】
- (ジャコウネズミ Suncus murinus )
- 【移】 ジャコウネズミ Suncus murinus 【本】 長崎県・鹿児島県。15世紀以前の熱帯アジアからの移入種か。
- リュウキュウジャコウネズミ(亜種) S. m. temmincki 【島(南)】
- カワネズミ Chimarrogale platycephala 【本/絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト):九州地方/固】 大陸に広く分布する C. himalayica と同種とする説もある。
- (ジネズミ(ニホンジネズミ) Crocidura dsinezumi ほぼ【固】)
- サイゴクジネズミ(亜種) C. d. dsinezumi 【本】
- ホンシュウジネズミ(亜種) C. d. chisai 【本】
- タネジネズミ(亜種) C. d. intermedia 【島(種)】
- オキノシマジネズミ(亜種) C. d. okinoshimae 【島(西)】
- ヤク(シマ)ジネズミ(亜種) C. d. umbrina 【島(屋)】
- コジネズミ Crocidura shantungensis【島(対)/準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)】 かつてはチョウセンコジネズミCrocidura suaveolens shantungensis とされた。
- ワタセジネズミ Crocidura watasei 【島(南)/準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)/固】 かつてはオナガジネズミ C. horsfieldii の亜種とされた(1998年版レッドリストでは C. h. watasei で掲載)。
- オリイジネズミ Crocidura orii 【島(南)/絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)/固】 奄美群島(奄美大島、加計呂麻島及び徳之島)の固有種。
- モグラ科 Talpidae
- ヒメヒミズ Dymecodon pilirostris 【本/固】
- ヒミズ Urotrichus talpoides 【本・島(対)/固】
- ミズラモグラ Euroscaptor mizura 【本/準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)/固】
- アズマモグラ Mogera imaizumii 【本・島(対・種・屋)/固】
- コウベモグラ Mogera wogura 【本】
- (サドモグラ Mogera tokudae 【本・島(佐)/固】 佐渡島と越後平野。)
- センカクモグラ M. uchidai 【島(尖)/絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)/固】 1976年採取、1991年新種認定。標本は魚釣島で捕獲された1体のみ。センカクモグラ属 Nesoscaptor に含める説もある。
- ハリネズミ科 Erinaceidae
- 【移】 アムールハリネズミ Erinaceus amurensis 【本】 ペットに由来するものが神奈川県・静岡県など各地で野生化、定着。
コウモリ目(翼手目)
〔在来5科〕
- オオコウモリ科 Pteropodidae
- (クビワオオコウモリ Pteropus dasymallus )
- オガサワラオオコウモリ Pteropus pselaphon 【島(小)/絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)/固/希少】 天然記念物。
- オキナワオオコウモリ Pteropus loochoensis 【島(沖)/絶滅(環境省レッドリスト)/固】 19世紀に3-4頭の採取記録。
- キクガシラコウモリ科 Rhinolophidae
- コキクガシラコウモリ Rhinolophus cornutus 【北・本・島(対・南)】
- オリイコキクガシラコウモリ(亜種) R.c.orii 【島(奄美大島)/絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)】
- オキナワコキクガシラコウモリ Rhinolophus pumilus 【島(南)/固】
- オキナワコキクガシラコウモリ(亜種) R.p.pumilus 【島(南)/絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)/固】
- ミヤココキクガシラコウモリ(亜種) R.p.miyakonis 【島(宮古島)/絶滅(環境省レッドリスト)/固】
- ヤエヤマコキクガシラコウモリ Rhinolophus perditus 【島(先)/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)/固】 石垣島・西表島。
- キクガシラコウモリ Rhinolophus ferrumequinum 【北・本・島(対)】日本に分布するものをニホンキクガシラコウモリ R.f.nippon という亜種とする場合もある。
- カグラコウモリ科 Hipposideridae
- ヒナコウモリ科 Vespertilionidae
- (ヒメホオヒゲコウモリ Myotis ikonnikovi 【北・本】)
- ヒメホオヒゲコウモリ(亜種) M.i.ikonnikovi 【北】
- シナノホオヒゲコウモリ(亜種) M.i.hosonoi 【本/絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト):紀伊半島、中国地方】
- ウスリホオヒゲコウモリ Myotis gracilis 【北/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)】 かつてはヨーロッパホオヒゲコウモリ Myotis mystacinus の亜種 M. m. gracilis とされた(2007年版レッドリストでは M. gracilis として記載)。
- (カグヤコウモリ Myotis frater )
- カグヤコウモリ(亜種) M.f.kaguyae 【北・本/固】
- モモジロコウモリ Myotis macrodactylus 【北・本】
- (ドーベントンコウモリ Myotis daubentonii )
- ウスリドーベントンコウモリ(亜種) M.d.ussuriensis 【北】
- クロホオヒゲコウモリ Myotis pruinosus 【本/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)/固】
- ヤンバルホオヒゲコウモリ Myotis yanbarensis 【本/絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)/固】 1997年発見、1998年新種認定。
- (ノレンコウモリ(タイリクノレンコウモリ) Myotis nattereri )
- ホンドノレンコウモリ(亜種) M.n.bombinus 【北・本/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)】
- クロアカコウモリ Myotis formosus 【島(対)/絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)/固】
- モリアブラコウモリ Pipistrellus endoi 【本/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)/固】
- オオアブラコウモリ Pipistrellus savii 【北・本・島(対)/情報不足(DD)(環境省レッドリスト)】 6例のみ。いずれも大陸からの迷行と思われる
- アブラコウモリ(イエコウモリ) Pipistrellus abramus 【本・島(対・南)】 史前帰化動物。本種を日本固有種とし、アジア大陸に分布するものを P.javanicus という別種とする説もある。
- オガサワラアブラコウモリ Pipistrellus sturdeei 【島(小)/絶滅(環境省レッドリスト)】 19世紀末に母島で採取された1例のみ。
- コヤマコウモリ Nyctalus furvus 【本/絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)】4例のみ。ヨーロッパヤマコウモリ Nyctalus noctura と同一種とする場合もある。
- ヤマコウモリ(ニホンヤマコウモリ) Nyctalus aviator 【北・本・島(対・南)/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)】
- (ヒメホリカワコウモリ Eptesicus nilssonii )
- ヒメホリカワコウモリ(キタクビワコウモリ)(亜種) E.n.parvus 【北】
- クビワコウモリ Eptesicus japonensis 【本/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)/固】
- ヒナコウモリ Vespertilio superans 【北・本】
- ヒメヒナコウモリ Vespertilio murinus 【礼文島/情報不足(DD)(環境省レッドリスト)】日本では、2002年の北海道礼文島での1例があるのみ。大陸からの迷行と思われる。
- チチブコウモリ Barbastella leucomelas 【北・本/絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト):本州、四国】
- ニホンウサギコウモリ Plecotus sacrimontis 【北・本/絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト):近畿地方以西/固】 かつてはウサギコウモリ Plecotus auritus の亜種 P.a.sacrimontis とされた。
- リュウキュウユビナガコウモリ(コユビナガコウモリ) Miniopterus fuscus 【島(南)/絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)】 かつては本州にも生息していたと考えられる。1933年、紀伊半島での記録あり。
- ユビナガコウモリ Miniopterus fuliginosus 【本・島(対)】
- (コテングコウモリ Murina ussuriensis )
- ニホンコテングコウモリ(亜種) M.u.silvatica 【北・本・島(対)】
- (テングコウモリ Murina leucogaster )
- ニホンテングコウモリ(亜種) M.l.hilgendorti 【北・本】M. hilgendorti として独立種とする説もある(2007年版レッドリストでは M. hilgendorti で掲載)。
- クチバテングコウモリ Murina tenebrosa 【島(対)/情報不足(DD)(環境省レッドリスト)/固】 1962年に対馬で発見、1970年新種記載。標本は1点のみ。
- リュウキュウテングコウモリ Murina ryukyuana 【島(南)/絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)】 1997年発見、1998年新種認定。
- オヒキコウモリ科 Molossidae
- オヒキコウモリ Tadarida insignis 【北・本/絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)】 日本で最大の食虫性コウモリ。
- スミイロオヒキコウモリ Tadarida latouchei 【島(奄美大島・口永良部島)/情報不足(DD)(環境省レッドリスト)】 2例のみ。
- ^ Ohdachi et al. eds. "The Wild Mammals of Japan" Shoukadoh, 2009
- ^ 土肥昭夫ら著 『哺乳類の生態学』 東京大学出版会、1997年、8-9頁、ISBN 4-13-060167-9
- ^ Kahoku Shimpō (2017年). “Goron kinta elephant seal on the beach protected for the first time on the Japan Sea side” (Japanese). 2018年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年11月3日閲覧。
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