マングローブ マングローブの概要

マングローブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/01 15:11 UTC 版)

ブラジル北部のパラー州にあるマングローブ林

また、集合体すなわち植物群落[6]または森林としては英語で "mangrove thicket"[ en: mangrove〈マングローブ〉+ thicket〈低木の茂み、薮、雑木林〉]といい[8][6]、日本語ではこれを訳して「マングローブ林( - りん)」という[8]。さらに、漢訳した日本語では「紅樹林(こうじゅりん)[2][3][4][5][6][7][9]」といい、時に「海漂林(かいひょうりん)」ともいう[要出典]。なお、の総称としての「マングローブ」と集合体としての「マングローブ林」は、研究者や辞事典[4][5][7]も含めて厳密に使い分けされているとは言えず、前者は後者の意味でも用いられる。後者の表現に限って前者を指すことはまずない。

分布

マングローブ林は2016年の時点で126の国や地域に分布しており、分布総面積は約1520万ヘクタールと推定されている[10]。主として、オセアニア南洋諸島からオーストラリアまで)、東南アジアを主とするアジア大陸南東部、インド亜大陸東アフリカ南部(マダガスカル島を含む)、西アフリカ南アメリカ大陸北部、中央アメリカ西インド諸島北アメリカ南部(メキシコフロリダ半島)の沿岸地域に分布する(■画像を参照)。日本では南西諸島全域と九州南部(沖縄県全域と鹿児島県南部)に自然分布するが、本州にも人工的に移植された場所がある(※後述:#日本のマングローブ)。一方で伊豆・小笠原・マリアナ島弧には見られない。

特に20世紀後半以降、世界中のマングローブ林の多くは開発による伐採が問題になっている(後述

語源・用語

マングローブの語源は、マレー語潮間帯に生育する樹木の総称を表すmangi-mangi(マンギ・マンギ)に、英語で小さい森を表すgroveの合成である[11]

マングローブという用語は「森林全体」と森林を構成する樹木の「」を表す場合があり、混乱を招くため、前者を「マングローブ(林)」、後者を「マングローブ植物」と使い分けることが一般的である。また、前者をマンガル(mangal)、後者をマングローブと区別することもある[12][13]

成立条件

2000年における世界のマングローブ林の分布

マングローブ林は一般的に熱帯から亜熱帯の、波浪の影響が弱い、中等潮位付近から最高高潮位までの高位干潟に成立する[10]宮城豊彦は、マングローブ林が成立する立地を次の3つに分類している[10]

デルタ・エスチュアリ型
の河口域に存在し、河川による堆積作用によって形成された干潟上に成立するタイプ
砂州・浜堤-ラグーン型
海側に形成された砂州浜堤によって作られた、静穏な環境にあるラグーンや湿地内の干潟に成立するタイプ
干潟・サンゴ礁型
沿岸の島との間に形成された陸繋砂州やサンゴ礁によって形成された干潟上に成立するタイプ

波当たりのない、遠浅で汽水の場所であるのでがたまりやすく、泥質に生育する樹木には往々に見られることであるが、泥質の中は酸素が不足がちになるため、呼吸根といわれる、地表に顔を出すを発達させるものが多い。マングローブの、外縁(海側)のものは満潮時には幹や一部の葉まで海水に浸り、内側のものは塩分を含む泥質ではあるが直接に海水を被ることはなくそこから陸上の植生につながる。生育する植物の種は群落内の各地点で異なり、耐塩性の違いなどによって帯状分布を示す[10]

亜熱帯上部、たとえば日本の九州ではせいぜい2mの高さのところもあるが、熱帯地域では30mに達するものがある。また、特有のつる植物もあり、場所によっては若干の草本も出現する。

ヌマスギ属ラクウショウなど、淡水性の樹木でもマングローブによく似たものは多いがこれらはマングローブとは区別される。日本の沖縄県の南大東島には世界的に珍しい陸封されたマングローブ林がある。


注釈

  1. ^ 胎生種子”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  2. ^ 学名Uca lactea perplexaシノニムCeluca lactea perplexa

出典

  1. ^ 小学館プログレッシブ英和中辞典』第4版. “mangrove”. コトバンク. 2019年11月14日閲覧。
  2. ^ a b c d 小学館『デジタル大辞泉』. “マングローブ”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  3. ^ a b c 三省堂大辞林』第3版. “マングローブ”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  4. ^ a b c ブリタニカ国際大百科事典』小項目事典. “マングローブ”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  5. ^ a b c 小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “マングローブ”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  6. ^ a b c d 平凡社百科事典マイペディア』. “マングローブ”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  7. ^ a b c d 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “マングローブ”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  8. ^ a b 平凡社『世界大百科事典』第2版. “マングローブ林”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  9. ^ 紅樹林”. コトバンク. 2019年11月15日閲覧。
  10. ^ a b c d e f 藤本潔宮城豊彦、西城潔、竹内裕紀子 編著『微地形学 人と自然をつなぐ鍵』(古今書院 2016年 ISBN 978-4-7722-7141-7)pp.80-104.
  11. ^ 諸喜田 1997, p. 64.
  12. ^ Mac nae 1968 [要ページ番号][出典無効]
  13. ^ 土屋・宮城 1991, p. 164.
  14. ^ a b c d e f 紅海に緑の防波堤を/ エジプト 温暖化対策 マングローブ植樹/政府主導 年5万本「次世代の宝に」東京新聞』夕刊2022年9月1日1面(2022年9月4日閲覧)
  15. ^ 伊澤ほか 2002 [要ページ番号]
  16. ^ 伊澤ほか 2001 [要ページ番号]
  17. ^ 土屋・宮城 1991, pp. 177–178.






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