uranyl ionとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > uranyl ionの意味・解説 

ウラニルイオン

(uranyl ion から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/10 08:37 UTC 版)

UO22+球棒モデル
U-O 結合次数が3と表されるウラニルイオン。

ウラニルイオン (: uranyl ion) は、化学式が UO22+ と表されるウランオキシカチオンで、ウランの酸化数は+6である。ウランと酸素の間に多重結合性があることを示す短い U-O 結合をもち、直線形構造をとる。4つまたはそれ以上のエカトリアル配位子がウラニルイオンに結合する。特に酸素ドナー原子をもつ配位子と多くの錯体を形成する。ウラニルイオンの錯体は、鉱石からのウランの抽出、そして核燃料再処理において重要である。

構造と結合

ウラン(VI)の加水分解における pH と各イオンの存在度の関係。

ウラニルイオンは、高度に帯電した仮想的な U6+ イオンの加水分解による最終生成物とみなすことができる。

ウラン(VI)の炭酸・ヒドロキシド錯体における pH と各イオンの存在度の関係。

ウラニルイオンは硬いアクセプターとして振る舞い、水酸化物イオン炭酸イオン硝酸イオン硫酸イオンカルボン酸イオンのような酸化物イオンまたはフッ化物イオンドナー配位子より、窒素ドナー配位子と弱い錯体を形成する。エカトリアル位には4〜6つのドナー原子が存在する。例えば硝酸ウラニル [UO2(NO3)2]•2H2O では、エカトリアル平面内に二座ニトラト配位子からの4つと水分子からの2つ、合計6つのドナー原子がある。この構造は六角両錐であると表される。他の酸素ドナー原子にはホスフィンオキシドリン酸エステルがある[11]

UO2(NO3)2•2(triethylphosphate)

硝酸ウラニルは水溶液からジエチルエーテル中に抽出することができる。抽出された錯体は電荷をもたず、ウラニルイオンと結合した2つのニトラト配位子をもっている。水分子はエーテル配位子と置換され、錯体全体に顕著な疎水性を与える。電気的中性であることは、錯体を有機溶媒に溶かすための最も重要な要因である。硝酸イオンは、遷移金属イオンやランタノイドイオンよりもずっと強固なウラニル錯体を形成する。このため、ウラニルイオンとプルトニルイオン PuO22+ のような他のアクチニルイオンのみを他のイオンを含む混合物から抽出することができる。水溶液中でウラニルイオンと結合している水分子を代わりの疎水性配位子で置換することは、電気的中性な錯体の有機溶媒に対する可溶性を増加させる。これはシナジー作用と呼ばれる[12]

水溶液中のウラニルイオン錯体は、鉱石からのウランの抽出においても、そして核燃料の再処理においてもともに重要である。工業的には硝酸ウラニルの抽出は、好ましい代替配位子にリン酸トリブチル (TBP)、有機溶媒にケロシンを用いて行われる。このプロセスの後、これを硝酸で処理することによって有機溶媒から分離される。ウランは水相においてより溶解度の高い [UO2(NO3)4]2- のような錯体を形成する。この溶液を蒸発させることによって硝酸ウラニルが再生される[11]

鉱物

ウラニルイオンは、ウランに富んだ鉱物の割れ目で起こる水-岩石相互作用により生じる鉱脈から産出する。ツヤムン石 (Ca(UO2)2V2O8•8H2O)、燐灰ウラン石 (Ca(UO2)2(PO4)2•8-12H2O)、燐銅ウラン石 (Cu(UO2)2 (PO4)•8-12H2O)、ウラノフェン石 (H3O)2Ca (UO2)2(SiO4)•3H2O) などがウラニルイオンを含む鉱物の例である。大半のウランはピッチブレンドから抽出されるため、これらの鉱物はほとんど商業価値を有さない。

利用

ウラニル塩は、DNA電子顕微鏡による研究でサンプルを染色するために用いられる[13]

健康と環境問題

ウラニル塩は有毒で、重篤な腎不全や急性尿細管壊死を起こすことがある。腎臓肝臓に損傷を与える[14]。始原生殖細胞[15]を含む組織におけるウラニルイオンの蓄積は先天性疾患を引き起こし、白血球免疫機能障害を起こす。ウラニル塩は神経毒でもある。ウラニルイオンによる汚染は劣化ウランの目標とその周辺で見られた[16]

すべてのウラン化合物は放射性である。しかし原子力産業では、ウランは通常劣化ウランの形をとる。劣化ウランは主に4.468(3) × 109 年の半減期α崩壊する 238U からなる。これは弱いα線源であるため、この放射能は直接接触するか、もしくは摂取した場合のみ有害である。

出典

  1. ^ Cotton, S (1991), Lanthanides and Actinides, New York: Oxford University Press, p. 128 
  2. ^ Wells, A.F (1962), Structural Inorganic Chemistry (第3 ed.), Oxford: Clarendon Press, p. 966, ISBN 0198551258 
  3. ^ Umreiko, D.S. (1965), “Symmetry in the electronic absorption spectra of uranyl compounds”, J. Appl. Spectrosc. 2 (5): 302–304, doi:10.1007/BF00656800 
  4. ^ Berto, Silvia (2006), “Dioxouranium(VI)-Carboxylate Complexes. Interaction with dicarboxylic acids in Aqueous Solution: Speciation and Structure”, Annali di Chimica 96 (7-8): 399-420, doi:10.1002/adic.200690042 
  5. ^ Fillaux, C.; Guillaumont, D.; Berthet, J-C; Copping, R.; Shuh, D.K.; Tyliszczak, T.; Den Auwer, C. (2010), “Investigating the electronic structure and bonding in uranyl compounds by combining NEXAFS spectroscopy and quantum chemistry”, Phys. Chem. Chem. Phys. 12 (42): 14253–14262, doi:10.1039/C0CP00386G, PMID 20886130 
  6. ^ Brewster, D. (1849), Trans. R. Soc. Edinburgh 16: 111–121 
  7. ^ Denning, R. G. (2007), “Electronic Structure and Bonding in Actinyl Ions and their Analogs”, J. Phys. Chem. A 111 (20): 4125–4143, doi:10.1021/jp071061n, PMID 17461564 
  8. ^ Nakamoto, K. (1997), Infrared and Raman spectra of Inorganic and Coordination compounds, Part A (第5 ed.), Wiley, ISBN 0471 16394 5 , Part B, ISBN 0471 16392 9  Part A, p 167. Part B, p 168
  9. ^ Burgess, J. Metal ions in solution, (1978) Ellis Horwood, New York. p153
  10. ^ IUPAC SC-Database A comprehensive database of published data on equilibrium constants of metal complexes and ligands
  11. ^ a b Greenwood, Norman N. [英語版]; Earnshaw, Alan (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). Butterworth-Heinemann. pp. 1273–1274. doi:10.1016/C2009-0-30414-6. ISBN 978-0-08-037941-8.
  12. ^ Irving, H.M.N.H. (1965), “Synergic Effects in Solvent Extraction”, Angewandte Chemie International Edition 4 (1): 95–96, doi:10.1002/anie.196500951 
  13. ^ Zobel, R. and Beer, M. (1961) "ELECTRON STAINS : I. Chemical Studies on the Interaction of DNA with Uranyl Salts" J. Biophys. and Biochem. Cytol., vol. 10, pp. 335-346
  14. ^ Schröder H, Heimers A, Frentzel-Beyme R, Schott A, Hoffman W (2003), “Chromosome Aberration Analysis in Peripheral Lymphocytes of Gulf War and Balkans War Veterans”, Radiation Protection Dosimetry 103 (3): 211–219, PMID 12678382 
  15. ^ Arfsten DP, Still KR, Ritchie GD (2001), “A review of the effects of uranium and depleted uranium exposure on reproduction and fetal development”, Toxicology and Industrial Health 17 (5-10): 180–191, doi:10.1191/0748233701th111oa, PMID 12539863 
  16. ^ Salbu B, Janssens K, Linda OC, Proost K, Gijsels L, Danesic PR (2004), “Oxidation states of uranium in depleted uranium particles from Kuwait”, Journal of Environmental Radioactivity 78 (2): 125–135, doi:10.1016/j.jenvrad.2004.04.001, PMID 15511555 

「uranyl ion」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳

英語⇒日本語日本語⇒英語

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「uranyl ion」の関連用語

uranyl ionのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



uranyl ionのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのウラニルイオン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2026 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2026 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2026 GRAS Group, Inc.RSS