PID制御とは? わかりやすく解説

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PID制御

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/05 17:18 UTC 版)

PID制御のブロック線図
この図中ではt:時間、u:操作量、r:目標値、y:出力値、e:偏差
PID制御における、ゲイン調整による応答の変化

PID制御(ピーアイディーせいぎょ、Proportional-Integral-Derivative Controller、PID Controller)は、制御工学におけるフィードバック制御の一種である。出力値と目標値との偏差、その積分、および微分の3つの要素によって、入力値の制御を行う方法である[1]古典制御論の枠組みで体系化されたもので長い歴史を持っており、これを基に様々なフィードバック制御手法が開発・提案され続けている。過去の実績や技術者の経験則の蓄積により調整を行いやすいため、産業界では主力の制御手法であると言われている。

P制御

基本的なフィードバック制御として比例制御P制御)がある[2]。これは操作量を制御量と目標値の偏差の一次関数として制御するものである。

ここで、ある制御対象の制御する量を制御量出力などと呼び[3]、制御量に追従させたい希望の値を目標値[4]と呼び、目標値を得るため制御対象を操作する量あるいは制御対象に入力する量を操作量入力などと呼ぶ[3]。なお、ある時刻tでの操作量をu(t)、出力値をy(t)、目標値をr(t)とする。このとき、目標値と現状の制御量との差を、制御偏差偏差などと呼びe(t)で表し[5][6]r(t) - y(t)である[5]。ここでラプラス変換にもとづく伝達関数で上記の式を表現すると、

PID制御の着想の基となったとされる船の操舵手

制御技術と理論の起源は、蒸気機関の調速機から始まった[24]。PID制御は、その後、特に船の自動操舵の開発の中で発達していった。1911年、エルマー・アンブローズ・スペリー(en:Elmer Ambrose Sperry)が、PID制御器の構成を成した船の自動操舵機構を開発した[25]1922年には、ニコラス・マイノースキー(Nicolas Minorsky)が船の自動操舵に関して数式化された制御理論の発表を行い[26]、これがPID制御の最初の着想とされている[14][24]

その後1936年、テイラー社(Taylor Instruments)のカレンダー(Callender)らにより、空気式PID調整器の原型が製作された[27]。しかしPIDパラメータの調整の仕方が不明であったため、この調整器の売れ行きは不調に終わった[27]。これを受けて、1942年に同テイラー社のジョン・ジーグラ(John G. Ziegler)とナサニエル・ニコルス(Nathaniel B. Nichols)らにより、実用的なPIDパラメータの調整則が考案された[27]。さらに、この調整則は同テイラー社のジェラルディン・クーン(Geraldine Coon)により広められ、良く知られるようになった[28]

脚注

  1. ^ 森泰親 2001, p. 177.
  2. ^ 佐藤ほか 2014, p. 113.
  3. ^ a b 佐藤ほか 2014, p. 8.
  4. ^ 佐藤ほか 2014, p. 96.
  5. ^ a b c d 岡田昌史『システム制御の基礎と応用―メカトロニクス系制御のために』、数理工学社、2008年1月、ISBN 978-4901683524
  6. ^ a b c 豊橋技術科学大学・高等専門学校 制御工学教育連携プロジェクト 編著『専門基礎ライブラリー 制御工学 ―技術者のための、理論・設計から実装まで―』、2012年3月、ISBN 978-4-407-32575-1
  7. ^ a b c d 佐藤ほか 2014, p. 114.
  8. ^ a b 森泰親 2001, p. 178.
  9. ^ 須田信英 1995, p. 770.
  10. ^ a b 佐藤ほか 2014, p. 115.
  11. ^ 山本・加藤 1997, p. 64.
  12. ^ a b c 佐藤ほか 2014, p. 118.
  13. ^ 佐藤ほか 2014, p. 179.
  14. ^ a b 須田信英 1995, p. 769.
  15. ^ 佐藤ほか 2014, p. 120.
  16. ^ J. G. Ziegler; N. B. Nichols (1942). “Optimum Settings for Automatic Controllers”. Trans. ASME 64: 759-768. 
  17. ^ a b c 近藤正示 2004, p. 32-33.
  18. ^ Finn Haugen (2010). “Comparing PI Tuning Methods in a Real Benchmark Temperature Control System”. Modeling, Identification and Control (Norwegian Society of Automatic Control) 31 (3): 81. http://www.mic-journal.no/ABS/MIC-2010-3-1.asp. 
  19. ^ a b c 森泰親 2001, p. 180.
  20. ^ 須田信英 2004, p. 41.
  21. ^ a b 須田信英 2004, p. 42.
  22. ^ a b c 山本・加藤 1997, p. 89.
  23. ^ 須田信英 2004, p. 40.
  24. ^ a b 広井和男 2004, p. 2.
  25. ^ Bennett 1996, p. 18.
  26. ^ Bennett 1996, p. 19.
  27. ^ a b c 広井和男 2004, p. 3.
  28. ^ Bennett 1996, p. 20.

参考文献

関連項目

外部リンク


PID制御

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/02 09:00 UTC 版)

制御システム」の記事における「PID制御」の解説

詳細は「PID制御」を参照 比例制御だけを用いた場合上述のような問題の他に、誤差とそれを是正する力が常に比例関係にあるという問題がある。上述の例では、設定温度最大定格電力50%維持されるとした。例えば、設定温度最大定格電力80%で維持されるとしたら、どうなるだろうか比例帯50度に設定されたとすると、80%の電力加熱されるのは、SP より15度低い温度の時となる。従って、操作者は SP実際設定温度より15度高く設定することを覚えておく必要があるまた、この15度という値は完全に一定とは限らない周囲気温にも影響されるし、炉内の状況によっても変化するだろう。 このような問題解決するため、様々なフィードバック制御技法考案された。最も一般的なものとして、比例制御の他に微分制御積分制御使ったPID制御がある。

※この「PID制御」の解説は、「制御システム」の解説の一部です。
「PID制御」を含む「制御システム」の記事については、「制御システム」の概要を参照ください。

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