HQ9とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 工学 > 航空軍事用語 > HQ9の意味・解説 

【HQ-9】(えいちきゅうきゅう)

中国開発した初の国産長距離地対空ミサイル
紅旗9やFT-2000とも呼ばれる
蘭州級駆逐艦VLSには艦船発射型の海紅旗-9(HHQ-9)が搭載されているが性能陸上発射型とほぼ同じである。
当初アメリカパトリオット参考にして開発されていたが、後に、ロシアから購入したS-300P(SA-N-6 Grumble)のミサイルランチャー誘導システムなどを参考にして大きな設計変更が行われたと言われている。

スペックデータ

全長:6.8m
発射重量:1,300kg
実用高度:2530,000m
射程距離:6~120km
速度マッハ4.2
弾頭重量:180kg
推進方式固体推進ロケットモーター
誘導方式慣性誘導+TVM誘導+セミアクティブレーダー誘導終末

バリエーション


HQ-9 (ミサイル)

(HQ9 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/12 15:37 UTC 版)

HQ-9
2009年、北京での建国60周年記念パレードにおけるHQ-9の自走式発射機
種類 長距離地対空ミサイル
衛星攻撃兵器
弾道弾迎撃ミサイル
原開発国 中華人民共和国
運用史
配備期間 1997年 – 現在
配備先
  1. 運用国を参照
開発史
製造業者 中国航天科工集団
諸元
重量 約2,000kg
全長 6.8m
直径 1段目: 700mm
2段目: 560mm

炸薬量 180kg

最大高度 30,000m(基本型)
50,000m (HQ-9B)
誘導方式 慣性誘導指令誘導ミサイル経由追尾+終末アクティブ・レーダー・ホーミング
発射
プラットフォーム
地上車両 (HQ-9)
軍艦 (HHQ-9)
テンプレートを表示
HQ-9
HQ-9 地対空ミサイル
HHQ-9を搭載した長春(150)

HQ-9(紅旗9、ホンチー9)は、中国中国航天科工集団(CASIC)が開発した新世代の高・中高度防空ミサイルである[1]NATOコードネームCH-SA-9[2]。輸出名はFD-2000(輸出当初はFT-2000であった)。

艦載型はHHQ-9(海紅旗9、Red Banner-9、ハイホンチー9)と呼ばれる[3]

概要

1980年代に開発が開始され、ロシアから輸入したS-300PMU-1/2で使用する5V55シリーズのミサイルを基として、1990年代に完成した[3][4][5]。英国王立防衛安全保障研究所のジャスティン・ブロンクは、このミサイルを「ロシアのSA-20(S-300)をベースにしているが、レーダー、シーカーヘッド、C2要素はアメリカとイスラエルの技術に大きく影響されたハイブリッド設計」であると評している[5]

誘導システムは慣性誘導、中間指令誘導、および終末段階でのアクティブ・レーダー・ホーミングを組み合わせたトラック・ヴィア・ミサイル(TVM)方式を採用している[6]。開発には一部アメリカパトリオットミサイルの技術が取り込まれているとされ、初期のミサイルで使用されたTVM誘導方式は、イスラエルまたはドイツから購入したパトリオットミサイルから開発された可能性がある[7]

2001年の『Defence International』誌の記事によると、HQ-9は全長6.8m、質量は約2トン。第1段と第2段の直径はそれぞれ700mmと560mmである。弾頭重量は180kgで、最高速度はマッハ4.2である。また、他の中国製SAMシステムの火器管制レーダーを使用することも可能である[8]

派生型

北京で行われた抗日戦争勝利70周年記念パレード後のHQ-9
防空ミサイル
  • HQ-9
    基本型。NATOコードネームはCH-SA-9
  • HHQ-9
    HQ-9の艦対空ミサイル型[3]。NATOコードネームはCH-SA-N-9[2]
  • HQ-9A(海紅旗9A、海红旗9A)
    改良型。1999年に最初の試験が行われ、2001年に配備が開始された[9]
  • HQ-9B(紅旗9B、红旗9B)
    射程を260kmまで延長し、パッシブ赤外線シーカーを追加した改良型[4]。2006年2月に試験が行われたと報じられている[9]。NATOコードネームはCH-SA-21[2]
  • HHQ-9B
    HQ-9Bの艦対空ミサイル型。NATOコードネームはCH-SA-N-21[2]

HHQ-9A及びHHQ-9Bは蘭州級駆逐艦などに装備されており、性能は陸上発射型とほぼ同じである。

弾道ミサイル防衛・対衛星兵器
  • HQ-19英語版
    弾道弾迎撃ミサイル型で、NATOコードネームはCH-AB-2[10]中距離弾道ミサイルに対抗するために設計されたと報じられている。ミッドコース(中間段階)およびターミナル(終末段階)で弾道ミサイルを目標とし、米国のTHAADに匹敵するとされる[11]。2018年までに「初期運用を開始」した可能性がある[12]
輸出モデル
  • FD-2000
    射程125kmの輸出型[7]ステルス機対策としてYLC-20パッシブレーダー英語版を搭載可能[13]。HT-233目標捕捉レーダー、Type 120低高度捜索レーダー、Type 305A AESA捜索レーダーを使用することができる[13]
  • FD-2000B
    射程250kmの輸出型[14]
  • HQ-9P
    パキスタン向けのカスタムモデル。対航空機迎撃射程は125km、対巡航ミサイル迎撃射程は約25km[15][16]

仕様

運用履歴

中国

中国は係争地域またはその近隣にHQ-9を配備している。2015年7月にはカシミールに近い新疆ウイグル自治区ホータン市[20]、2016年2月には南シナ海ウッディー島にミサイルが配備された[21][22]

パキスタン

パキスタンによるHQ-9およびHQ-16の購入交渉は2015年初頭に開始された[23]パキスタン陸軍はHQ-9Pを運用しており[16]、2021年10月14日に正式に就役した[16]

搭載艦

運用国

  現在の運用国:中国、モロッコ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、エジプト

かつての導入計画

  • トルコ - トルコの長距離防空ミサイルシステム(T-LORAMIDS)計画の候補となり、2013年9月に選定されたと報じられた[34]。これに対し米国は、中国製システムをNATOの防衛網に統合するための資金を凍結した[35]。しかし、2013年時点では契約が最終決定したという確証はなかった[36]。2015年2月、トルコ国防省は入札評価が完了し、選定されたシステムはNATOと統合せずにトルコが使用するとトルコ大国民議会に報告したが、具体的なシステム名は挙げられなかった。他のトルコ当局者は、まだ勝者は決まっていないと報告した[37]。同月後半、トルコ当局は複数の入札者と交渉中であり、中国の提案は技術移転に関する要件をまだ満たしていないことを明らかにした[38]。最終的に2015年11月、契約が撤回され、国産システムの開発を選択することが確認された[39][40]

脚注

出典

  1. ^ China's CASIC targets international expansion”. Janes (2016年2月11日). 2025年8月12日閲覧。
  2. ^ a b c d “Chapter Five: Asia: Regional trends in 2024”. The Military Balance 2025 125 (1): 206–311. (2025). doi:10.1080/04597222.2025.2445477. 
  3. ^ a b c McCabe, Thomas R. (23 March 2020). “Air and Space Power with Chinese Characteristics: China's Military Revolution”. Air & Space Power Journal 34 (1): 28. https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/ASPJ/journals/Volume-34_Issue-1/F-McCabe.pdf 2021年12月11日閲覧。. 
  4. ^ a b c Dahm (March 2021): page 6
  5. ^ a b Bronk, Justin (January 2020). Modern Russian and Chinese Integrated Air Defence Systems: The Nature of the Threat, Growth Trajectory and Western Options (Report). Royal United Services Institute. p. 20. 2021年12月11日閲覧.
  6. ^ Hong Qi 9 (HQ-9) Air Defence Missile System”. Army Technology (2021年5月28日). 2025年8月12日閲覧。
  7. ^ a b China deploys HQ-9 surface-to-air missiles to Woody Island” (2016年2月11日). 2016年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年8月12日閲覧。
  8. ^ a b c d e 「黃河」 (January 2001). “巡天神箭 紅旗9號與紅旗家族動態”. Defence International (114): 72–81. http://www.diic.com.tw 2025年8月12日閲覧。. 
  9. ^ a b HQ-9/-15, and RF-9 (HHQ-9 and S-300) (China), Defensive weapons”. Jane's Information Group (2010年1月7日). 2012年5月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年8月12日閲覧。
  10. ^ Trevithick, Joseph (2021年2月4日). “China Claims It Has Conducted A New Midcourse Intercept Anti-Ballistic Missile Test”. The Drive. 2025年8月12日閲覧。
  11. ^ Testimony before the U.S.-China Economic and Security Review Commission Hearing on China's Nuclear Forces”. U.S.-China Economic and Security Review Commission (2021年6月10日). 2021年12月11日閲覧。
  12. ^ United States Office of the Secretary of Defense (2018). Annual Report To Congress: Military and Security Developments Involving the People's Republic of China 2018 (PDF) (Report). p. 60. 2018年8月17日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2021年12月11日閲覧.
  13. ^ a b Chinese Anti-Aircraft Missiles for Turkey? Some Implications for Security and Industry”. Atlantic Council (2013年10月2日). 2021年12月11日閲覧。
  14. ^ Le Maroc réceptionne le système de défense anti-aérienne chinois FD-2000B
  15. ^ Usman Ansari (2024年3月27日). “Pakistan unveils aircraft and rocket programs, parades military tech”. 2024年4月10日閲覧。
  16. ^ a b c Pakistan Army commissions HQ-9/P air-defence system”. Janes (2021年10月15日). 2021年12月11日閲覧。
  17. ^ Russia 'losing to China on Iran S-300 quest'”. www.payvand.com. 2020年12月3日閲覧。
  18. ^ 解放军报:中部战区高炮某团改编为地空导弹旅 集体移防西部战区”. www.guancha.cn. 2020年12月3日閲覧。
  19. ^ China Shows New Fighters, Missiles and Drones”. AINonline (2017年8月2日). 2022年5月16日閲覧。
  20. ^ “PLA sends HQ-9 air defense missiles close to Kashmir border”. Want China Times. (2015年7月6日). オリジナルの2015年10月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151006082024/http://www.wantchinatimes.com/news-subclass-cnt.aspx?id=20150706000005&cid=1101 2015年8月2日閲覧。 
  21. ^ “China 'has deployed missiles in South China Sea' - Taiwan”. BBC News. (2016年2月17日). https://www.bbc.com/news/world-asia-china-35592988 
  22. ^ “U.S. expects 'very serious' talks with China after missile reports”. Reuters. (2016年2月17日). https://www.reuters.com/article/southchinasea-china-missiles-idUSKCN0VP2UT 
  23. ^ “Pakistan first to China's table for HQ-9, HQ-16 missile systems”. Want China Times. (2015年4月2日). オリジナルの2015年7月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150716164547/http://www.wantchinatimes.com/news-subclass-cnt.aspx?id=20150402000058&cid=1101 2015年8月2日閲覧。 
  24. ^ The Military Balance 2024. International Institute for Strategic Studies. p. 260 
  25. ^ Samuel Cranny-Evans & Gabriel Dominguez (2021年10月15日). “Pakistan Army commissions HQ-9/P air-defence system”. janes.com. 2025年7月27日閲覧。
  26. ^ (英語) Hum Arze Pak Key Hawai Fauj K Uqaab, (11 March 2022), https://www.youtube.com/watch?v=3H7wGfpS68s 2022年3月11日閲覧。 
  27. ^ Marruecos a punto de recibir su primer sistema de defensa aérea de largo alcance” (スペイン語). Defensa.com (2020年6月26日). 2020年6月26日閲覧。
  28. ^ Turkmenistan Shows Off New Chinese Rockets”. Eurasianet (2016年4月2日). 2019年11月23日閲覧。
  29. ^ IISS 2024, p. 209.
  30. ^ Uzbekistan conducts first FD-2000 air-defence test”. ジェーン・ディフェンス・ウィークリー (2019年11月22日). 2019年11月23日閲覧。
  31. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 206. ISBN 978-1-032-50895-5 
  32. ^ “Egypt confirms acquisition of Chinese HQ-9B long-range air defence system”. Military Africa. (2025年7月2日). https://www.military.africa/2025/07/egypt-confirms-acquisition-of-chinese-hq-9b-long-range-air-defence-system/ 
  33. ^ “Iran receives Chinese surface-to-air missile batteries after Israel ceasefire deal long-range air defence system”. Middle East Eye. (2025年7月8日). https://www.middleeasteye.net/news/iran-receives-chinese-surface-air-missile-batteries-after-israel-ceasefire-say-sources 
  34. ^ Chinese firm wins Turkey's missile defense system tender”. reuters.com. reuters (2013年9月26日). 2013年9月26日閲覧。
  35. ^ Congress to block Turkey using US funds to buy missile system from blacklisted Chinese firm”. telegraph.co.uk. AFP (2013年12月14日). 2013年12月14日閲覧。
  36. ^ Lague, David (2013年10月2日). “For China, Turkey missile deal a victory even if it doesn't happen”. Reuters. https://www.reuters.com/article/china-turkey-idUSL4N0HS1PK20131002 
  37. ^ Turkey eyes deal with China on missile defense despite NATO concern”. Reuters (2015年2月19日). 2015年5月12日閲覧。
  38. ^ Turkey goes back to other missile system bidders as China drags feet: officials”. Reuters (2015年2月26日). 2015年5月12日閲覧。
  39. ^ Toksabay, Ece (26 September 2013). "Chinese firm wins Turkey's missile defense system tender". Reuters.
  40. ^ Butler, Daren; Karadeniz, Tulay; Martina, Michael (18 November 2015). Mark, Heinrich (ed.). "UPDATE 2-Turkey confirms cancellation of $3.4-bln missile defence project awarded to China". Reuters.

参考文献

  • The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. ISBN 978-1-032-78004-7 
  • Dahm, J. Michael (March 2021). Offensive and Defensive Strike (PDF) (Report). South China Sea Military Capabilities Series. Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory. 2021年12月11日閲覧.

関連項目

外部リンク


HQ9+

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/27 18:33 UTC 版)

HQ9+はクリフ・ビッフルによって作られたジョーク向け難解プログラミング言語である。実用言語ではない。

HQ9+は4つの命令だけで構成されており、それらは'H'、'Q'、'9'、'+'という単一の文字で示される。HQ9+はチューリング完全ではなく、プログラミング言語としては不完全であるが、プログラミングの例題としてよく取り上げられるいくつかの問題に対しては極めて効率的である。

仕様

HQ9+のプログラムは、例えば次のようになる。

HHQ+HQ++

このプログラムは"Hello, world! Hello, world! HHQ+HQ++ Hello, world! HHQ+HQ++"と表示し、アキュムレータを三回インクリメントする。

解説

HQ9+の命令体系は、プログラム初心者や新しいプログラミング言語を学習するプログラマによく利用される例題そのものである。例えば「文字列"Hello, world!"を出力する」という例題は極めて一般的なものであるが、この種の処理を行うことが非常に難しいプログラミング言語も存在する。しかし、HQ9+にとっては極めて容易な問題であり、ただ単に"H"と命令するだけである(というよりも、問題の回答自体が言語仕様に入っている)。また、「自分自身のソースプログラムを出力する」という例題は多くのプログラミング言語にとって最も難しい課題の一つであるが、これもHQ9+にとっては取るに足らない問題である(これも問題を解いているわけではなく、言語仕様に回答が含まれているだけであるが)。

HQ9+のインタプリタを作成することは極めて簡単であるため、多数のHQ9+の処理系が存在する。たとえば、あるインタプリタはPythonによるものであり、作成時間は約5分、サイズはわずか18行である。またある、C言語で記述されたコンパイラはHQ9+のプログラムをCのコードに変換するもので、サイズは約40行である。そしてこのインタプリタはJavaScriptで記述されており、ステップ実行ができる[1]

HQ9+には入力機能がないため、HQ9+のインタプリタやコンパイラをHQ9+自身で記述することは不可能である。

また、HQ9++と呼ばれる言語も存在する。これはデイビッド・モルガン=マール英語版によって作成されたオブジェクト指向言語で、HQ9+とは下位互換性をもつ。HQ9++には'++'という新しい命令が追加されている。この命令はアキュムレータを2回インクリメントし、さらにオブジェクトのインスタンスを生成する。情報隠蔽英語版の原理に従い、このオブジェクトへのアクセスはできない様になっている。

さらにFizzBuzzを追加したHQ9F+なるものも存在する。

脚注

関連項目

外部リンク



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「HQ9」の関連用語

HQ9のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



HQ9のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
航空軍事用語辞典++航空軍事用語辞典++
この記事はMASDF 航空軍事用語辞典++の記事を転載しております。
MASDFでは航空及び軍事についての様々なコンテンツをご覧頂けます。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのHQ-9 (ミサイル) (改訂履歴)、HQ9+ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS