2010年代~2020年代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 05:01 UTC 版)
「Graphics Processing Unit」の記事における「2010年代~2020年代」の解説
主なCPUメーカーは、従来のCPU機能だけにとどまらず、1つのCPUチップ内に複数のCPUコア(マルチコア)を搭載すると同時に、画像出力専用回路としてGPUコアも統合した製品を提供するようになった。例えば、米AMDでは「AMD Fusion」構想において1つのダイ上に2つ以上のCPUとGPUを統合し、米インテル社でもCore i5、Core i7、Core i3でのSandy Bridge世代から、同様の製品を提供している。なお、従来型のUMA、つまり単にCPUとGPUのチップを統合して物理メモリを共有するだけでは、CPUとGPUのメモリ空間が統一されることにはつながらない。HSAにおけるhUMAなどのように、CPUとGPUのメモリ空間を統一するためにメモリ一貫性を確保する仕組みが用意されることで初めて、CPU-GPU間のメモリ転送作業が不要となる。また、CPUとGPUの外部メモリが共用されるため、CPUチップの外部メモリバスにはCPUのアクセス帯域に加えてGPUのアクセス帯域も加わる。このため、仮にCPUチップに極めて高い性能のGPUを統合しても、統合チップのメモリアクセス帯域も相応に増強されないと、それがボトルネックとなって性能向上は望めない。 GPU用のメモリ規格として長らくDDR系およびGDDR系が採用されてきたが、2015年6月に発売されたAMD Radeon R9 Fury Xでは、新しい規格系統のHigh Bandwidth Memory (HBM) が世界で初めて採用された 。しかし、高性能だが高価格なHBMの採用はコンシューマー用途では進まず、GDDR5の後継規格であるGDDR5XやGDDR6が採用されるようになっている。 2010年代後半にGPGPUという手法が広く普及したことで、HPC分野でもGPUを多用するようになった。特に深層学習(ディープラーニング)ベースのAI用途にGPUの需要が高まっている。VRAMに関しては費用対効果の面から、HPC用途ではたとえ高コストでも広帯域・大容量のHBM、ゲームなどのコンシューマー用途ではたとえ低帯域でも低コストのGDDRという棲み分けが起きている。 一方グラフィックスAPIに関しては、Mantleを皮切りとして、Metal、DirectX 12およびVulkanのように、ハードウェアにより近い制御を可能とするローレベル (low-level) APIが出現することとなった。ローレベルAPIはいずれもハードウェア抽象化レイヤーを薄くすることによるオーバーヘッドの低減や描画効率の向上を目的としており、またマルチコアCPUの活用を前提とした描画あるいは演算コマンドリストの非同期実行といった機能を備えている。また、GPUでリアルタイムレイトレーシングを実現する動きも加速しつつある。2009年にNVIDIA OptiX(英語版)が、2011年にイマジネーションテクノロジーズ(英語版)のOpenRL(英語版)が、そして2018年にマイクロソフトのDirectX Raytracing(英語版) (DXR) とAppleのMetal Ray Tracingが発表された。NVIDIA GeForce RTXシリーズはDXRのハードウェアアクセラレーションに対応する最初のGPUである。 2020年にはインテルが同社としては1998年に発売した「Intel 740」以来、22年ぶりの単体GPUである「iris Xe Max」を発表し、更に2022年にインテルはPC向けで同社初の本格的な単体GPUである「Intel Arc」を発表。NVIDIAとAMDの2社がほぼ寡占しているPC向けの単体GPU市場にインテルが本格参戦する状況になった。
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